第14話 知らないことは聞きましょう
クスッ
笑った気配に頭を上げると、緑のエルフが可笑しそうにクスクス笑っていた。
「クルビス、大丈夫ですよ。彼女は感謝を表してくれているだけです。威嚇ではありません。」
えっ?威嚇!?
何が威嚇!?
「…あの、威嚇とは何のことでしょうか?」
驚きながらも、質問する。
わからないなら聞くしかない。
「こちらの彼の種族では、先程のような頭を突き出す行為は威嚇を表してしまい、戦闘態勢に入ることを意味します。」
私の隣に座っている彼を手振りで指しながら説明してくれる。
ええっ?戦闘態勢って…。うわ。やばい。これ。
「すみませんっ。そんなつもりはありませんでした。…私の国では、感謝や謝罪するときに頭を下げるんです。」
驚いて、慌ててリザードマンの方を向いて謝る。
…頭を下げそうになったけど、気力でブレーキ!同じ失敗は2度しません。
「…大丈夫だ。こちらこそ、取り乱してすまなかった。さあ、お茶を飲むといい。まだ回復はしていないだろう?」
目を細めて、バリトンボイスで優しくお茶を勧めてくれた。最後の質問は、目の前の緑のエルフに向けたものだ。
…目を細める感じがちょっと怖かったけど、それは顔に出さないよう頑張った。
「ええ。最悪の状態を脱しただけです。…さあ、お茶をどうぞ。
片手が塞がっていて不便でしょうが、我慢してくださいね。今、手の平を通して魔素をあなたに補給しているんです。」
緑のエルフが頷きながら、変わらない穏やかさで今の状況を説明してくれる。
補給ってお茶じゃないの?聞いてみようか。
「手の平から…ですか?…先程のお話だと、体内に取り込まなければ魔素は得られないと思ったんですが…。」
だからお茶飲んだ後、言葉がわかったんだよね?
先程までの情報を頭の中で整理しながら質問して、勧められたお茶を飲む。
ん〜美味しい〜。
緑のエルフは私の様子を見ながら、嬉しそうに頷きながら答えてくれた。
「ええ。基本的には食物や水からしか魔素は得られません。
ただ、それは効率の問題でして、呼吸や皮膚からも魔素は得られるんです。あまりに僅かなため、体内で得るのとは雲泥の差ですが…。
しかし、彼の種族は少々特殊でして、身体のある特定の部分から魔素を放出して、それを他のものに移せるんですよ。」
「魔素を放出…ですか。それで手の平を?」
「ええ。放出といっても極僅かですが、呼吸で得られる魔素よりは断然多いですから、今のあなたには助けとなるでしょう。」
知らない間に助けられてた。
紳士なエスコートはそのせいだったんだ。
感謝の眼差しで隣の彼を見上げると、フイっと私と反対側に顔を背けられてしまった。…何故に?
訳がわからず緑のエルフの方をみると、私とリザードマンを面白そうに見ていた。
いやいや、説明してくんなきゃわかんないんですけど。助けて下さいよ〜。