第131話 治療の後 (クルビス・遥加視点)
最初はクルビスさん視点、途中で遥加さん視点に戻ります。
今までとギャップが激しいかもしれませんが、そういう作品ですので、あらかじめご了承ください。
「お疲れ様~。君はこの後、北の守備隊の医務局でしばらく様子を見るからね~。そこにいる子と一緒だよ。」
「よろしく。…ぼくワース。ドラゴンの一族だよ。」
「俺はヒーリ。トカゲの一族で、今、魔技師の修行中だ。」
ルシンとヒーリがお互いに自己紹介する。
年も近いし、話し相手がいれば気もまぎれるだろう。
2つとも話してることは本当のようだった。
なら、子供を狙う、それもたちの悪い術式を使うやつがいるということだ。
…忙しくなりそうだな。
シードが記録球を持って部屋を出ていく。
記録球の貸し出しの手続きに行ったんだろう。
それが終われば本部に戻れるだろう。
ハルカと気晴らしを兼ねた調査のはずが…とんでもないことになったものだ。
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…よかった。ヒーリ君元気そう。
悲鳴みたいな泣き声が聞こえてきた時にはどうしようと思ったけど、皆さんがいて良かった。
なんだか深刻そうな話をしてたけど、私聞いててよかったのかな。
そりゃ、声は聞こえたけど。
クルビスさんがいてくれたから、治療のお手伝いも出来たけど。
(なんか、ルシン君の話やヒーリ君の話って、ものすごい陰謀って感じがヒシヒシとするんだけど…。部外者がいていいのかなぁ。)
安心すると、自分の立場の心もとなさに不安になる。
クルビスさんとフェラリーデさんのおかげで自由に話して動けるけど、好意で保護してもらってるだけなんだよね。
メルバさんが言ってたもんなあ。
「あの子たちにずいぶん気に入られたね~。」って。
メルバさんがそう言うってことは、今までの私の処遇ってお二方の好意だったってことだよね?
ホント、お世話になりっぱなし。返せることってあるのかな。
(調査の協力っていっても、ポムの木とひよこもどきについてくらいで、結局、私が最初にいた場所は変化なかったしなぁ。)
ポムの実の場所や切り株についてはクルビスさんもルシェリードさんも驚いてたから、異常があったと言えるみたいだけど…。
最初いた場所は本当に何も変化なかったから。
だから、ルシェリードさんのお話を聞いた時、すごく納得しちゃったんだよね。
泡と泡のように接触したその瞬間に、その地点にいた私が足を踏み出した。
で、異世界にトリップ。…今朝の状況から考えて、十分あり得る。
(帰れない…のかな。うすうすそう思ってたけど。)
なんせ、私の来た時の状況が状況だったから、浅いラノベ知識で、世界にとってイレギュラーなトリップな可能性高いって思ってたしね。
イレギュラーってことは、帰れる可能性は限りなく低いってことだし。
先行きの暗い想像に落ち込みそうになってると、腰のあたりに何かが当たった。
ギョッとして見ると、腰に着けたポーチが揺れていた。
…ヒヨコもどきよね?
さっき起きたと思ったら、詰め所に入るなり縮こまっちゃって、しょうがないからまたポーチに入れたんだよね。
あんまりポーチが揺れるから開けてみると、ヒヨコもどきが飛び出してきた。
思わず両手で受け止める。
「ピギッ。」
「えっ。何それ?」
「お姉さん。それなんて生き物ですか?」
ヒヨコもどきですが。
あ、そういえば本当は別の名前で呼ばれてるんだっけ。




