第128話 共鳴再び (クルビス視点)
「ん~。そろそろいいかな~。ハルカちゃん。クルビス君連れて来てくれる?」
長の呼びかけにハルカが頷き、俺の腕を軽く引く。
特に逆らわずについて行くと、長が手招きをする。
「こっち来てくれる~?ハルカちゃんはこっち、クルビス君はそこで…。そうそう。」
ヒーリの左側から頭の方にハルカ、足の方に俺が立つ。
反対側には寝床と壁の間に器用に入り込んだルシンがいる。ヒーリの右手を握っている。
「ちょっと厄介な術がかかっててね~。出来ればここで完全に取り除きたいんだ~。
さっきみたいに、共鳴お願い出来るかな~?」
その言葉にハルカが俺の手をつかむ。
…嫌がられてはいないよな?向こうから手を繋いできたくらいだし…。
「クルビスさん。お願いします。」
「ああ。」
その言葉を合図にハルカに魔素で干渉し、それが跳ね返って来て、また干渉し…。魔素がお互いに反応して膨れ上がっていく。
先程と同じく、ハルカが意識しているせいか魔素の増幅が早い。これ以上加速しないように気を付けながら、徐々にお互いの魔素が混じり合い、膨れ上がらせていく。
…ここまで素直に共鳴が出来るということは、避けられている訳ではないな。
魔素を通して伝わってくる感情は心配…ヒーリのことか。それに、緊張?何に緊張して…。
ギュッ
そこまで考えたところで、ハルカが俺の手を握ってきた。
どうしたんだ?
「大丈夫なんです。特に何かあるわけじゃなくて。ホントに大丈夫なんです。」
ハルカの言葉と共に優しい穏やかな魔素がこちらに来る。
…俺の気のせいだったんだろうか。そうであって欲しいと思う。
大事なんだ。もう彼女なしなんて耐えられないだろう。
先程、祖父さんに止められて、会ったばかりなんだと改めて気付かされた。
ドラゴンの血のせいだろうか。ハルカから離れたくない思いが刻一刻と膨れ上がっていく。
だが、気を付けなければ。ハルカはドラゴンの男の性質など知らないだろう。抱え込もうとすれば、逃げられかねない。
怖がらせてはだめだ。いくら魔素の相性が良くても、お互いの理解がなくては共にはいられない。
たとえ、それがわずかな時だとしても…お互いが納得して一緒にいることが大事なんだ。
ふと、ハルカを見ると、何故か小刻みに震えて俺をにらんでいた。
何かあったのか?




