第127話 思いがけない情報 (クルビス視点)
「偶然…でしょうか?」
「ヤな感じだな。あそこには親戚もいるんだぜ。」
「西に連絡を取ったほうがいいだろうか?」
リード、シード、俺の順に言葉が漏れる。
もし、ヒーリと同じ術を受けた住民が他にもいたら…ゆゆしき事態だ。だが、西は…。
「西ならルイ君がいるよ~。彼に頼んでみたら?確か北の方に住んでたよね~?
あ、ルシン、彼の右手握ってくれる?うん。ありがと。」
長の言葉にリードがハッとして、俺に向き直る。
長は一方的に告げた後、またヒーリの治療に戻ったようだ。
「クルビス。西に我が一族がいます。名はルイ。西の北に工房を持っています。技術者ですが、治癒術の腕も確かで、広範囲の探査が得意です。とりあえず、彼に確認してもらうのはどうでしょう?
…今から西に話を通していたのでは、間に合わない可能性もあります。」
「西か…。やりにくいな。」
言い辛そうにリードが言うのに、俺もシードも同意する。確かに、今の北と西はあまり仲が良くないからな。
西の守備隊の隊長たちに事の次第を報告して調査するにしても、その間に手遅れになる者が出てくるだろう。正式に手続きを取ってる間に数日かかる可能性もある。
「なあ、ルイって、魔技師のルイか?」
「知ってるんですか?シード。」
「ああ。腕がいいってんで有名らしいな。技術者としてだけじゃなく、術士としても滅法腕がたつってな。ちょっと変わってるらしいが、仲間思いで、子供好きらしい。」
「ええ。まあ…少々変わっていますが、腕は確かです。
今回は子供が被害にあっていますから、事情を話せば協力してくれるでしょう。」
「そうしようぜ隊長。西に話を通していたら、いつになるかわかんねぇしな。
ばれたら、善意の住民の協力ってことで。」
それしかないか…。
これ以上被害を広げられんしな。
「わかった。そうしよう。リード。頼めるだろうか。」
「お任せください。急ぎ、連絡を取って見ます。」
俺の頼みにリードが力強く頷いてくれる。
そのルイが引き受けてくれるよう祈るしかない。
「あの、リードさん。お急ぎの所、すみません。そのルイさん?にヒーリ君が被害にあったって伝えてもらえますか?知り合いみたいなんです。」
連絡用の術式を展開しようとしていたリードに、ハルカが意外な情報を持ちかける。
知り合いだったのか。同じ地域の工房にいたならあり得ることだが…。出来過ぎてないか?
「知り合い?彼がそう言ったのですか?」
「えっと。ルシン君が、ヒーリ君から聞いたみたいなんです。」
その言葉にルシンを見る。
ルシンはこちらを気にもせず、ヒーリの手を握っている。
…あれは、魔素を共鳴させようとしているのか?ルシンの魔素が不思議な広がり方をしている。
まるで、ヒーリを包み込むような…。あれは、ルシンの治療の時も見たな。同じことをしているのか。
「あの。お願いできますか?」
「っ。ええ。必ず伝えましょう。お任せください。」
長の治療に見入っていたリードがハルカの声で我に返る。
いつもの微笑みでハルカに答えた後、連絡用の術式を再度展開させ始めた。




