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トカゲと散歩  作者: *ファタル*
本編4森の中へ
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第126話 ヒーリの様子 (クルビス視点)

「俺もですか?」



 思わず素で聞いてしまった。

 だが、意外だったのは事実だ。連れていくのは、ルシンとハルカだけだろうと思っていたから。



「うん。もしかしたらルシンと同じ治療が有効かもだしね~。

 あ、ルー君も来てよ?立ち合いがいるし。シー君も出来たら来てくれる?たぶん、その子の話にもヘビの一族が関係しそうなんだよね~。」



「…うちの一族がですか?」



「なんとなくだけどね~。君がいてくれたほうがいい気がするんだ。」



「了解しました。」



 長の言葉を聞いて、シードが胸に手を当てて礼を取る。

 シードは長の役割を知ってるからな。長の「なんとなく」はかなりの確率で当たる。聞いておくに越したことはない。



 結局、その場にいた全員でヒーリのいる部屋に向かった。

 ヒーリは治療のために調書とは別の部屋に移っていた。今は寝台に寝かされている。



「やあ。こんにちは。僕は深緑の森の一族の長。今から、君を治療するからね。」



「っ。」



 長がヒーリに声をかけると、、ヒーリが起き上がろうとする。だが、力が入らないのか、寝台の上で少し身じろぎしただけだった。

 長がそんなヒーリの手を取りなだめる。



「大丈夫だよ。君には味方がたくさんいるしね。助かる。」



「~~っ。」



 ヒーリの目に涙が浮かぶ。安堵したのだろう。

 こんな状態になるまで気付かなかったとは…。調書を取った隊士は何をしていたのか。



「幻視の術がかかってますね。軽いものですが、そうとわかって見ないと、彼の様子が正確に認識出来ないようになってます。」



 長と共にヒーリの様子を見に行っていたリードがこちらに戻って報告する。

 認識の誤魔化しだと?そんな術があるのか。思わず、シードと顔を見合わせる。



「それで、あの坊やの様子に誰も気付かなかったっていうのか?」



「ええ。やっかいな術です。喧嘩していたなら、彼が動けるという前提で見ているでしょう?その前提のままで話していると、彼の様子がおかしくなっても、自分で口をつぐんでるようにしか見えないんです。」



「それで、この有り様か…。」



 シードの質問にリードが答え、それに俺のため息が重なる。

 やっかいな術があったものだ。話だけ聞いたならまさかと思うが、事実、ヒーリは術にかかり事態の悪化を招いた。



「ヒーリは今どこに住んでいるんだったか…。」



「…確か、西の中央に近い工房にいたはずです。西の中でも北側だったと思います。」



「おい、西の北側って、うちの一族の工房や店が立ち並ぶところじゃねえか。」



「ルシンもそのあたりに住んでるはずだ。偶然ならいいがな。」



「「「っ。」」」



 祖父さんの言葉に俺たちは息を飲んだ。

 …偶然、だろうか?

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