第13話 エルフの妙薬
「言葉には力があり、僅かながらも魔素を含みます。それを理解するには、言葉に含まれる魔素を感じ取らなくてはいけません。」
言葉にまであるんですか。
しゃべるだけでカロリー消費されているんですね。
「しかし、あなたを先程拝見した時は、全く魔素を感じませんでした。この世界で魔素を含まない言葉は意味をなしませんので、魔素を取り込んでいただく必要があると判断しました。」
成る程、魔素を取り込んで、魔素を感じ取れるようになったから、言葉が通じるようになったんですね。
あれ?…てことは…。
「しばらくしたら、また言葉が通じなくなるのでしょうか?」
「いいえ。このお茶は魔素を体内に留まらせるための薬湯です。命の水を使いましたので、ひと口でも充分に効果があります。もう大丈夫ですよ。」
相変わらず穏やかに微笑みながら、こちらを気遣う口調で返事を返してくれる。
…もう大丈夫って?
何か話が…医者と患者みたいな…。
「…大丈夫、というのはどういうことでしょうか?言葉が通じるようになったのはありがたいのですが…。」
私が戸惑いながら聞くと、緑のエルフは何かに気付いたように話し始めた。
「…先程、魔素は生きているだけで消費されると申し上げましたね?
魔素が枯渇した状態が続くと、その個体が世界に存在し続けることは出来なくなります。つまり、存在の消失ですね。」
…何か怖い話になってきた。嫌な予感がする。
「言葉が通じなくなる程に魔素が枯渇した状態は、限りなくゼロに近い危険な状態です。あなたは、存在の消失、その一歩手前だったんですよ。」
やっぱりーっっ。患者だったーっっ。
しかも危篤状態っっ。
(存在の消失はちょっとわかんないけど、ようは死にかけてたってことよね?)
自分の状況を把握したらと冷や汗がドッとでる。
…うわー。ヤバかった…。
そこ迄考えて、全身にあった疲労感が軽くなっているのを感じる。多少だるい気がするけど、半日歩けばこんなもんだろう。
先程までのもう一歩も歩けないような感じは無くなっていた。
助かった、という実感が急速に湧いてきて、全身から力が抜ける。
ハッ。ってことは、目の前のエルフは命の恩人っ。
「…助けていただき、ありがとうございました。知らぬ間に大変お世話になったようで、何とお礼を申し上げればよいか…。」
慌てて頭を下げると、隣から緊張感が漂ってくる。
…そういや、隣にずっといたんだっけ。リザードマンの彼。しかも手をつないだまんま。
…いい加減離してくれます?