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トカゲと散歩  作者: *ファタル*
本編4森の中へ
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第119話 街へ (クルビス視点)

「あーちゃんの。妹さんがふたりいるって…。」



「あ、たぶん。私と妹のことだと思います。小さいときから一緒に暮らしてたので、兄妹みたいなものなんです。」



「…呼び方は?」



「?ああ、私が「はる」で、妹が「たまき」ですけど…。」



「あーちゃんの妹さんだ…。」



 幾つかの質問の後、長がポツリとつぶやく。

 確信が持てたようだ。まさか、ハルカの兄君が長と知り合いとは…。世の中、何が起こるかわからないものだ。



「あれから2000年も経ったのに…。時間の流れが違うんだね。」



「にせんねん…。」



「あーちゃんは元気?彼、いっつも元気だったから、その印象しかないんだけど。」



「ええ。いつも仕事で飛び回っています。」



「仕事?あーちゃん何やってるの!?」



「あー。盛り上がってるとこ悪いんだが、その続きはルシェモモでも良くないか?」



 話の弾む2つに祖父さんが声をかける。

 確かに、そろそろ移動しないと森の中で日が暮れてしまう。ハルカも長も夜目があまり利かないだろう。



「あ、ご~めん。ごめん。そうだね。この話は街でも出来るし、もう日も暮れちゃうね~。」



「よし。じゃあ、移動すっか。クルビス、俺も1度北に行く。ルシンのこともあるしな。」



 祖父さんに言われて頷く。

 ルシンの話を聞いた後では、このまま別れるわけにはいかないだろう。『世界の意志』絡みとなると、各一族の長に通達しなくてはいけないからな。



「ああ。そうだね~。」



「他に知らせる前にお前と詰めなきゃならん。…北なら安全だしな。」



「そうだね~。ディー君いるし~。キィ君は中央らしいから、あの辺で変なことにはならないだろうしね。」



「おう。出るとき会った。中央周辺はまかせといたから、大丈夫だろ。メラも今は落ち着いただろうしな。」



「うんうん。じゃあ、街に行こうか。」



 母さんも仕事がひと段落しただろうな。母とキィがいれば、大抵のことは大丈夫だ。

 父もこの非常時だから、母のそばにいるだろうしな。



 立ち上がるハルカに手を貸し、そのまま抱き上げる。

 ハルカは移動と聞いた時からわかっていたらしく、今回はおとなしく俺に抱えられている。



「あ~。僕は一足先に北に行って、ディー君に事情説明しておくよ~。

 僕1つならすぐだし。ルー君と僕が一緒にいたら、何事だってなるでしょ~?」



「そうだな。」



「お願いします。」



 もっともな話に祖父さんと頷いて、先触れを任せることにする。

 一族の長が顔を合わせるのは、中央以外では祭りか祝い事の時くらいだからな。



 非常時でも集まるだろうが、それが中央でなく北でとなると…。住民が大騒ぎするのが目に見えるようだ。

 祖父さんだけなら、集落を見に行った帰りだと言っても通じるだろう。



「んじゃ、先に行くね~。」



 いつの間に描いたのか、長の周りに転移の術式が展開していた。

 やはり『特級』の術士は違うな。


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