第117話 感覚の違い (クルビス視点)
「成る程な。世界がこちらの言い分を聞いてくれるなど前代未聞だが、ルシンの場合、生まれ持ってそういう役割なら、世界と繋がりが深いのかもしれん。」
祖父さんがルシンの話を聞いてしみじみと言う。
世界との繋がりが…。そうか。確かに有り得る話だ。
「そうだね~。僕よりルシンの方が世界に近いかも?」
長もうんうんと頷いて納得している。
ルシンは世界との繋がりが深いと聞いて困惑ぎみだ。
そうだろうな。今のルシンの話だと、自分に大事な役割があることは知ってても、それが世界にとってどういうもなのかまではわかっていなかったようだしな。
「10歳…。」
ぽつりとハルカがつぶやく。
さっきのルシンの話か?
「あ、えっと、こちらの10歳ってすごく小さいのかなって思いまして。私の故郷と同じくらいでも、10歳は子供過ぎるので、世界もせっかちだなって思ったんです。」
俺が気付いたのを見て、つぶやいた理由を話してくれる。
ああ。ハルカの故郷とこちらでは寿命にかなりの隔たりがあるんだったな。…あまり思い出したくないことだったが。
だが、確かに。知らせるにしても、現在役割を果たしている長は健在なのだし、もう少し後でもいいように思ったな。
ハルカの意見に頷いて、同意を返す。
「こちらの10歳と言えば物心ついた頃だな。確かにせっかちだ。ハルカの故郷でも10歳はまだ子供なんだな?」
「物心…小さいですね…。ええ。10歳と言えば、まだまだ子供です。身体が大人…こだちの大きさに変わっていく前ですから。」
「それなら、こちらの50歳くらいだな。今のルシンくらいだ。それでも早過ぎるとは俺も思う。」
ルシンはとても賢い子だが、世界から役割を与えられるには早すぎる。
ハルカの言う通り、ハルカの故郷の基準でも10歳は子供過ぎるだろう。
たまたま、ルシンと長が共にいたから世界が情報を伝えたんだろうが…。
こちらのことももう少し気にかけて欲しいものだ。
「…もしかして、寿命がかなり違うのかな~?」
長がハルカに聞いてくる。
祖父さんとルシンも興味深そうに聞いていた。
「はい。こだちは20歳で、平均寿命は80歳くらいです。」
「80…。」
「20歳で個立ち…。」
祖父さんとルシンが茫然とつぶやく。
俺もかなり驚いた。長はいつもの笑顔とは違い、真面目な顔でハルカを見ている。
「そっか。ヒト族だもんね。でも、平均寿命か~。…もしかして、ハルカちゃんって「ニホンジン」?」




