第115話 長の役割 (クルビス視点)
「あ~。そうだね~。ルー君とクルビス君は知っててもらった方がいいよね~。あ、もちろんハルカちゃんもね。うん。ルシンは座ってていいよ。」
ルシンは頷いて元の場所に戻った。
俺たちも長の言葉に頷いて続きを待つことにする。
「日暮れまで時間も無いし、簡単に説明するね~。
僕たちエルフがここに来たのは、表向き、ある日突然の原因不明の異世界トリップってことになってるけど、ホントは違うんだよね~。」
思ってもいなかった話に驚きを隠せない。
リードからは、自分たち一族はある日いきなりこの世界に来たとしか聞いていない。
「あ、ディー君たち若い世代は知らないんだよ~。僕たちの世代でも、知ってるのはその場にいた何名かと長老クラスまで。重すぎてね~。軽々しく口に出せる内容じゃなかったから。」
リードは知らないのか。
長老クラスまでしか知らない…それでは知っているはずもないな。
「だから、これは他言無用でお願いするね~。ここにいる皆なら大丈夫そうだけどさ。
実はね~。世界の意志っていうものに、ここの管理者になってくれって言われたんだよ。僕がさ。」
世界の意志…。聞かされている。世界が過不足なく存続しようとする力だと。
自由意思を持つのではなく、世界の摂理、世界そのものだという見解もあるとか。
ほとんどの住民は知らないが、各種族・一族の長とその次代は知らされている。
俺も小さいときから教え込まれてきた。
世界が存続しようとする力に逆らって生き延びることは不可能だと。
たとえ、それがどんなに理不尽であろうとも、受け入れなくてはいけないと。
それが、長を呼んだ…。世界を超えさせてまで。
管理者とは一体…。
長は言われたと言ったが、実際に言われたのではなくそのような情報が頭に入って来たんだろう。
祖父さんも「大崩壊」の際、各種族の存続を求める情報が頭に流れ込んできたそうだ。それに従って、祖父さんはルシェモモをつくり、シーリード族をつくり、各種族が手を取れるように調停をしたと聞いている。
「管理者っていってもね~。ぼくがそう思っただけで、実際はそんな言葉では言われてないんだ。要は、世界が上手く存続するために正しい情報を伝えるっていうのが僕の役目。
手始めにって、減り続けてる出生の数を増やすことになって、魔素の相性調べたりとか、異種族間でも子が出来るように術式を整えたりとかしたよ~。」
そうだ。長がいなければ、現状の数まで増えることはなかった。
大崩壊以後、減り続ける命と魔素によって世界のバランスが崩れかけていたのを止めたのはこの男だ。
魔素がこれだけ活用されるようになったのも、深緑の森の一族がいたから可能になったからだ。
それが世界の意志だったとしたら、祖父さんが深緑の森の一族を保護したのも…。
祖父さんを見ると、俺の考えがわかったのか深く頷いた。世界の意志だったのか…。
では、ルシンが長の言う管理者の次代だと…?




