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トカゲと散歩  作者: *ファタル*
本編4森の中へ
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第112話 ルシンの話 (クルビス視点)

「ここに来たのは、お前のカンか?」



「はい。このまま街にいちゃだめだと思って、嫌な方向から真っ直ぐ反対に逃げてきたんです。でも、羽があんまり上手く動かなくて、すぐにバテちゃって、森に入ったら低めに飛んだんです。そしたら…。」



「出られなくなった?」



 祖父さんがルシンの言葉を拾う。

 祖父さんはカンと言ってたな。もしかして…。



「っはい。上がろうとしたら結界にぶつかって。それで、森の中を進むためにトカゲ型になろうと思って、ポムの実を食べたんです。…一杯なってたから、1枝くらいいいかなって。…ごめんなさい。」



 だんだんルシンの声が小さくなっていく。

 ポムの木が保護されていることは知らないようだが、勝手に採って悪いことをしたとは思ってるんだな。



 賢い子だ。自分に起きたことを俺たちにちゃんと説明出来てるし、やったことの善悪をきちんと理解している。

 気になるのは、ルシンの言った「逃げてきた」だ。何から逃げなくてはいけなかったのか。



 ルシンの年では、まだ森に入る訓練は受けていない。だから、こんなことになったわけだが…。

 知らない場所に逃げ込まなくてはいけないほど、何を恐れていたのか。



「よく判断した。偉いぞ。ただ、ポムの木を傷つけたのは問題だ。ポムの木は、小枝1本でも勝手に折ることは出来ない。」



「えっ。」



 祖父さんがルシンの頭をなでながら、言うべきことを言う。ドラゴンの一族の長の顔だ。

 考えて行動したことは評価出来る。街中で本体のままいたら、大騒ぎになっていただろう。だが、子供でも許されないことがある。そのことは知っておくべきだ。



「ルシェリードさまっ。ぼく、どうなるんでしょうか?」



「まだ、決められぬ。今の話だと、お前が本体に戻るはめになった原因があるようだ。少なくともそれを調べてからだな。ただ、自分のしたことは覚えておくように。」



「…はい。」



「説教はここまでだ。…ポムの実を食べたのは良い判断だったな。だから、身体がもったんだろう。見つかって良かった。」



 祖父さんの魔素がルシンを包む。祖父さんがルシンの頭をなでながら「実は美味かったか?」と聞く。

 ルシンはホッとした顔で「はい。おいしかったです。あんなに甘いなんて思いませんでした。」と祖父さんに笑顔で答えていた。



 ルシンは祖父さんに任せておけば大丈夫そうだな。

 2つの様子に安堵しつつも気になることが頭に浮かんだ。



『ここに来たのは、お前のカンか?』



 もしかすると、ルシンは「先読み」の能力者かもしれない。

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