第109話 長が来た理由 (クルビス視点)
「はいは~い。とりあえず、共鳴始めようか?」
長の言葉にハッとする。目の前には、不思議そうな顔をしたハルカがいた。
どうやら考え込んでいたようだ。
「そうだな。俺も見ておきたいし。」
「わあ。ぼく共鳴って初めて見ますっ。」
祖父さんとルシンが後押ししてきた。
…もう少し、時期を見てから言うか。ハルカはまだ来たばかりだ。
「…ハルカ。手を貸してくれるか?」
「っ。はいっ。どうぞっ。」
俺が差し出した両手に小さなかわいい手が乗る。
緊張しているのが手の先から伝わるが、そんな彼女もかわいいと思いながら手を握った。
これまでもそうだったように、ハルカと触れていると共鳴が起こりやすい。今もハルカが手を乗せただけで、俺の魔素が膨れ上がった。ハルカに魔素を使う意識があるというのも大きいだろう。
これは、俺が気を付けないとマズいかもな。
「お~。すごいすごいっ。」
「こりゃ、また……早えぇな。」
「わ~。すご~い。」
長、祖父さん、ルシンの順で感想が口に出る。
ハルカとは相性が良すぎるからな。3つが言いたいこともわからなくはない。
「いや~。成る程ねぇ。これは類を見ないね。」
「…お前確認に来たんだろう?知ってるんじゃないのか?」
「途中からね。実は、丁度その時、開発中の魔道具の調整で籠っててさ~。…朝のことで遅れてたんだよねぇ。ジジイどもに外に連れ出されるまで知らなかったんだよ。
だから、知ってるのは膨れ上がった後だけ。どうやってあんな状態になったかは知らないんだよね~。」
「メルバ。お前そのために言ったのか?」
「ノンノンノン。違う違う。ちゃんと治療に使うためだって。ちょっと、僕の魔素とは相性イマイチみたいだからさ。
でも、ハルカちゃんは離れてても話が出来たっていうし、名前聞いたって言うから。それなら、クルビスくんに調整してもらった方がいいかなって。…僕がやるわけにはいかないでしょ~?」
「そりゃそうだな。そういうことか。」
…長と祖父さんが小声で言いたいことを言っている。
ルシンにも聞こえないほどの音量だが、共鳴で身体能力の上がっている俺にはすぐ横で話されているようだ。
「まだ、何にも言ってないんでしょ~?」
「…ハルカに聞いたのか?」
「彼女が保護されたいきさつだけね。後はディー君に聞いたのと合わせれば、どんなだったかだいたい予想出来るよ。
ま、気持ちはわかるけどね~。」
「ん~。まあ、あいつらには無理かもな。」
「そう思ったみたいだね。『彼女が本当に知りたがっていることを教えてあげて下さい。』ってお願いされちゃった。…こればっかりはねぇ。ディー君も知らないから…。」
魔素を高かめながら聞こえてきた言葉に、リードが長に連絡を取った本当の目的を知る。
…確かに任せるには最適な選抜だ。異世界に来た経験のある空間に関する専門家など他にいないだろう。




