第108話 長の治療 (クルビス視点)
「ホッとしました。」
「?」
「皆さんがご無事で戻られて。ルシン君の声で元気そうだとは思ってたんですが、実際見てみないとわかりませんし。」
ああ。そういうことか。
ハルカはルシンの声を聞いていたんだったな。だが、元気そうだと思っても、聞くのと見るのではかなり違うものだ。待っている間、ずいぶん心配させたんだろうな。
「そうだな。それに、長殿が来ておられて助かった。彼は治療術の特級術士だ。まかせておけば問題ない。」
「そうでもないよ~。」
「っ。」
突然の会話への参加に驚きつつも、長の方を向くと手招きをされた。
首を傾げながら行こうとすると、「ハルカちゃんもだよ~。」と付け加えられた。
思わずハルカと顔を見合わせる。
ハルカも?どういうことだろう。まだ治療は終わっていないようだが…。
「出来るだけ近づいてほしいんだ。で、さっきの共鳴やってもらえない?」
「あ、はい。」
「ハルカ?」
「説明してもらいました。治療に有効なんですよね?クルビスさんとだと、起こりやすいって。」
説明…したんですかっ。出会ってすぐでは、性急すぎるかと思って言わなかったというのに…。
思わず長の方を見るが、長はにこやかに共鳴を待っているようだった。ルシンは驚いた顔をして俺とハルカを見比べてるし、祖父さんはにやにやして俺たちを見ている。
「たまたまでも、出来るもの同士がそろったんならやりましょう。有効な治療は早ければ早いほどいいですし。」
…ハルカ?何かおかしいな。
長を見ると、ハルカの言葉に強く頷いてるだけで特に何か言うそぶりはみられない。
「メルバ。お前、ハルカにどんな説明したんだ?」
「うん?波長の合うもの同士が魔素をお互いに響かせて、周囲に良い影響を与えるんだよ~。その魔素は治療にすっごく効くんだ~って説明した。」
「…間違っちゃいねえがよ。」
間違ってはいない。だが、肝心の部分が抜けてる。
ルシンだって知ってるというのに。ハルカの言葉を聞いて、さっきから首を傾げている。
ハルカを見ると、使命感に燃えた目で俺を見つめていた。
…言うべきだろうか。共鳴はお互いを深く理解し合う者同士で起こる…つまり、共鳴出来るということは、番同士とみなされるのだと。




