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トカゲと散歩  作者: *ファタル*
本編4森の中へ
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第103話 追跡開始 (クルビス視点)

「『魔法』ですか?いいえ。私の故郷に『魔法』はありませんでした。」



 ハルカが首をゆるく横に振って答える。

『まほう』?何だそれは?



「そうか。無いのか…。

 ああ。クルビス。『魔法』ってのは異世界の術式のことだ。

 メルバたちが使えたんでな。てっきりハルカも使えるんだと思ってた。」



 異世界の術式…。深緑の森の一族が使えたのか。リードが術士が多いのは一族の特徴だと言ってたな。おそらく、その異世界の術式と何か関係があるんだろう。



「ま、無いってんならわかんねえよな。じゃあ、クルビス。お前がやってくれ。俺はこういうのは苦手だからな。」



「あ、じゃあ、クルビスさんが糸を持たれますか?」



 ハルカが糸を俺に差し出してくるのを見て、どうするか一瞬考えた後、そのままハルカに持っててもらうことにする。

 ハルカを抱き上げる必要があるから、手に余計なものは持てない。



「いや。それはハルカが持っててくれるか?移動にはハルカを抱き上げないといけないから、手は空けておきたい。」



「でも、枝はどうします?」



「糸だけ持ってりゃいいだろう。クルビス。取れそうか?」



 俺の返事に、ハルカが俺の手にあるポムの木の枝を見る。話を聞いていた祖父さんが、枝を見て俺に糸を外せるかどうか聞いてきた。

 観察してみると糸は枝の引きちぎられた部分に引っかかっていた。枝の裂けた部分に食い込んでいたが、糸を力いっぱい引っ張ると木が裂けて問題なく取れた。



「…すごい力ですね。」



 ハルカが俺の手元を見ながらポツリとつぶやいた。

 そうだろうか?確かに力いっぱい引っ張ったが、俺はシーリード族の中では普通だ。力自慢でもない。



「男だからな。ハルカよりは力がある。」



 俺がそう答えると、ハルカは眉根を寄せて、「そういうのじゃないんだけど…。」とぶつぶつとつぶやいていた。

 何か間違った答え方をしただろうか。



「よし。じゃあ、魔素を通してくれ。」



 疑問はあったが、祖父さんの言葉に持っていた枝を捨てて、枝から引き抜いた糸に魔素を通した。

 魔素を通すと、極細の糸が森の中で浮かび上がる。この先に例のドラゴンがいてくれればいいが。



「この先にいてくれよ…。」



 祖父さんも同じことを考えたのか、祈るようにつぶやく。

 ハルカも糸を握りしめて森の奥を見ていた。

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