第101話 捜索範囲 (クルビス視点)
俺が調査終了を告げると、ハルカは頷いて微笑んだ。笑っていられるのか。この状況で。
もしかすると、彼女は帰れないと思っているのかもしれないな。
「それじゃ、もう少し奥にいくか。この辺りにはいないみたいだしな。」
「そうですね。この辺りにはいないでしょう。」
祖父さんの言葉に同意して、さらに奥を目指す。
魔素に乱れが見られ無いということは、弱ったものがいないということだ。
また、何事もなく元気なら、ここまで透視の精度を上げた状態では、魔素の大きさでおおよその位置くらいは感じ取れる。その辺は子供といえど、ドラゴンの一族だな。
つまり、どちらにも引っかからないということは、この辺りにはいないということになる。
ポムの実のある場所の様子から考えると、周囲に魔素をまき散らしていたようだから、後で一枝分の実をすべて食べたとしても、完全には魔素は戻ってないんじゃないだろうか。
気を抜かずに進まなくては。
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「ここで1度休憩をとろう。ハルカも疲れただろう?」
「いいえっ。私は運んでもらってるだけですから。全然平気です。」
少し開けた場所に出ると、祖父さんが休憩を申し出る。しかし、祖父さんの提案にハルカは首を横に激しく降った。
平気と言っても、もう1刻以上も抱えたままだ。同じ体勢は身体に負担がかかる。
降ろしてしまうか。
「クルビスさんっ。」
「まだ、捜索に時間はかかる。同じ体勢が長く続くと負担になるしな。身体をほぐす時間ぐらいはとれるさ。」
ハルカを強制的に地面に立たせてやると、非難の籠った声で名を呼ばれた。
慌てて理由を説明する。その様子を祖父さんが面白そうに眺めている。
…リードが同じような顔をしてたな。祖父さんも面白がってるんだろう。
お祖母さまや母に言うんだろうな。後が面倒そうだ。
「まあまあ。捜索に魔素を練り上げたままでは、クルビスも持たない。少し休憩しよう。」
祖父さんのとりなしでハルカもおとなしくその辺に座る。俺も祖父さんもその傍に座れり込んだ。
ここは木が無くて、上空からはぽっかり空いて見える場所だ。祖父さんはここに降り立ったはずだ。
「ここに降りて奥にいったんだがな。獣の気配どころか鳥の鳴き声一つせん。だから、奥にいるもんだと思ってたんだが…。」
「おそらくそうでしょう。ポムの小道でも、魔素が濃く残り過ぎて周囲に獣がまったくいない状態でした。
もしかすると…。」
俺は立ち上がると、周囲を見回して目的のものを見つけてひろってくる。
「ありました。ポムの枝です。ここでポムの実を食べてトカゲ型になったんでしょう。」
俺がポムの枝を見せると、祖父さんの顔が険しいものになる。
俺の予想が当たってたってことだからな。これで罰は免れなくなった。
「こりゃ…ずいぶん食ったんだな?10…5か。これなら、トカゲ型になっても動けただろ。」
「ええ。この先かなり奥まで探す必要がありそうです。」




