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トカゲと散歩  作者: *ファタル*
本編4森の中へ
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第89話 ヒナ (クルビス視点)

 祖父さんが降りてきたということは、例のドラゴンは集落にはたどり着いていないようだ。

 悪い方向に予想が当たっていく。舌打ちしたい気分で祖父の飛ぶ様子を見続けた。



 どうも森の奥を目指しているようだ。あそこは結界の切れ目のあたりだな。

 確か少し開けた場所があったから、そこに降りるつもりだろう。



 調査と捜索を同時に進めるつもりだったが、祖父さんが捜索に乗り出すなら調査を先行してから合流するか。

 ハルカがいるから無理は出来ないしな。日暮れ前には1度戻ろう。



 その時に街の状態が落ち着いていれば、捜索の数を増す。

 動けなくなっている場合、時間が経てば経つほど危険な状態になっていくしな。



 そうと決まれば、先に進むか。

 俺はもう1度周囲を見回し、他に処置が必要な枝が無いことを確認した。



 足場にしていた枝から一気に下に降りると、ハルカがこちらに駆け寄ってきた。



「クルビスさんっ。あの、この子がっ。」



 差し出された両手を見ると、ぐったりと横たわっている黄色い生き物が乗っていた。

 小さい体には不釣り合いなほど大きいかぎ爪を持っている。



 ハルカの話していたセパのヒナか。

 本当に小さいな。生まれてすぐくらいじゃないか?



 力なくぐったりと目を閉じている。

 おそらく、例のドラゴンの魔素に充てられたんだろう。



 ここまで小さくては逃げることも出来なかっただろうしな。

 それにしても、野生のセパか…。珍しいな。



 親はどうしたんだ?

 セパは個立ちの時期が早いが、このヒナは幼すぎる。必ず近くに親がいるはずだ。



 周囲の気配と音に感覚を研ぎ澄ませるが、それらしい音は聞こえなかった。


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