第86話 変化した場所 (クルビス視点)
「こんな…酷い…。」
それきりハルカは言うべき言葉を無くしたようだった。
その様子から彼女が見た光景とはかなり違うのだと察しがついた。
何があったというんだ。
今の透視の術の感度ではわからないな。
透視の術を調整して、もう少し微量の変化もわかるようにする。
その上で見回してみると、実をつけた分、ポムの木自体の魔素の量は通常よりすこし少ないくらいだった。
枝に意識を向けると、ポムの実の辺りに魔素がたまっているのがわかる。
すごいな。これだけの実に取り囲まれるなんてそうそうないことだ。
10や20ではきかない。
ざっと見ても…100はあるな。
…報告しても信じてもらえそうにない数だ。
俺だって話を聞いただけなら、そんなばかなと思うだろう。
この異常な数のポムの実は何で出来たんだろうな。
ポムの木を見ても実で魔素の調整をした後にしか見えないしな…。
これ以上は俺では無理だな。
深緑の森の一族の専門家に任せた方がいいだろう。
それより、問題なのは…。
あの折れた枝だ。
無残に引き裂かれた跡が生々しい。
風でこうなったのではないな。
もう少し、集中してみるか。
俺はポムの枝を見ながら、魔素を体内で練り上げて目に集中させた。
枝の折れた部分を詳しく見ると、ポムの木とは違う魔素の跡が見られた。
あれが原因か。あの感じだと何かが枝を引きちぎっていったようだな。
色は、紫に薄青…それに、『銀』だった。




