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トカゲと散歩  作者: *ファタル*
本編1気がつけば異世界
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第9話 お気遣いの紳士

 コツコツコツコツ



 石畳にヒールが小気味よく音をたてる。

 反動が足に跳ね返ってかなりキツイけど、文句も言えない。



 言えない理由は、私のななめ前を行く黒の紳士です。



 何故また紳士呼びなのかって?

 答えは簡単。歩くスピードを合わせてもらってるから。



 このリザードマンの身長はおよそ2m。腰の位置が私のより高いから、身長に見合って足は長いってことだよね。この体格ならもっと歩幅は大きいはずなのに、ヒールの私が普通について行けてる。



 (くぅ〜。お気遣いの紳士めっ!)



 カッコよすぎる。

 体格良くて強そうで優しいとか。高スペックだ。



 最初は周りに気を取られてて、全然わからなかった。足に跳ね返ってくる反動がキツイと感じ始めて、ようやく自分が普通に歩いてるって気付いたくらい。



 (このさりげなさがたまりません。こんな扱い受けたことないし。)



 さらには、手を取られてるんだけど、彼の手の平に私の手を置いている感じで、(つか)まれて連行されてる感じじゃないんだよね。

 どちらかと言うと、エスコートされてる感じだ。



 (人生初のエスコートっ。)



 自覚したとたん、足が軽くなったように感じた。

 なんてお手軽なんだ私。



 うきうきと黒い紳士について行きながらも、周りを見ることは怠らない。

 何せここは異世界。少しでも情報が欲しい。







 *********************



 車が通れるくらいの広さの通りが真っ直ぐ続いている。

 2車線分くらいはあるなあ。



 ここも広場と同じく、ピンクの石が敷き詰められていて、きちんと整備されているのがわかる。



 (確か、こうやって綺麗に石を敷き詰めるのって難しいんだよね。しかも綺麗にしてるから、街の機能もしっかりしてそう。)



 自分の知識と比較しつつ、通りの様子を観察する。



 道の左右には、白くて丸い建物が並んでいて、軒先にこれまた白い屋根が突き出ている。その下には台が据えられ、何か草のような物が並べられている。

 どうやらお店みたいだ。



 他にも、お肉や果物らしきものを売っている店や、カフェや食事処なのか、大きな軒先の店ではテーブルとイスが置かれていて、そこでお茶してるリザードマンがいた。



 それにしても、変わった建物だ。

 まるでボウルを伏せたみたいなドーム状の建物。


 

 色は白いけど、どっちかと言えばアイボリーみたいな柔らかい白だ。

 表面もツヤツヤしてて、卵の殻みたいにも見える。



 お饅頭が並んでるみたいでかわいい。

 …なんかお腹空いてきたなあ。



 気になるのは、開いているお店がポツポツとしかなくて、何とも不自然に見えるってこと。



 (結構大きい通りだと思うんだけどなぁ。お店これだけ?)



 そんなことをつらつらと考えながらも、道行くリザードマンたちを眺める。

 意外だったのは、通りにいるのがリザードマンだけじゃなかったってこと。



 最初に目についたのはエルフ。見間違いでなければ、たぶんあれはエルフだ。

 尖った耳が長い髪の間から見えてる。



 エルフかぁ。ますますラノベっぽいなぁ。

 ファンタジーの中でも特にメジャーな種族で、薬や魔法に強いとされている。ここではどうなんだろう。



 エルフとリザードマンが談笑している。2人とも私の手を引いている黒いリザードマンと同じ服装だった。

 やっぱり制服なんだ。あれ。



 もちろん、武装してない人?もいる。

 ノースリーブなのは共通しているけど、色は鮮やかなものが多い。綺麗な染めの生地で、複雑な文様や花柄が目をひく。



 鮮やかな青い服に目をひかれてお店を見ると、店の店主は獣人みたいだった。赤い髪に三角の耳が付いていてピコピコ動いてる。顔は人間と同じで、イケメン。ワイルド系ですね。



 まぁ、他にもいろいろ気になるけど、今はここ迄かな?

 目的地に着いたようです。

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