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鉛筆と鉛筆削り






あれから1週間くらいたったかな。




「今日の講義はここまで」






今日はこれで講義もないな。

バイトも休みだし、帰ってゆっくりするか。






ガチャ。






「お、おかえりなさい」


「あ、ただいま」




そっか、今日は優ちゃんは午前授業だったな。

スペアキーを渡していて正解だったな。



「あ、あの」


「ん、どした」


「きょ、教科書とかいろんなもの持ってきてけど、い、いいかな?」


「いいよいいよ」


「あ、ありがとう」



なんか、まだお互い打ち解けてないんだよな。

もう少し僕にコミュ力があればな。






ぼーっ。


こんなにのんびりできる時間はなかなかないな。


「ふぁーあ」



いい気分。






ん?


後ろを振り返ると、服を引っ張る優ちゃんがいた。



「どうしたの?」


「鉛筆が…」


「鉛筆?」



そう言って優ちゃんは筆箱から上下とも削ってある短い鉛筆を取り出した。



もう少しで先端ともう1つの先端がくっつきそうだ。



「じゃ、買いにいこっか」


「うん。でも、お金は…」



そうだな、優ちゃんの通帳には学校分のお金しかないんだな。



「いいよ、買ってあげるから。それと…」



財布を取り出し、野口を優ちゃんに渡す。



「これ、お小遣いだから、優ちゃんの好きなように使って」


「えっ、い、いいの?」


「いいよ」


「あ、ありがとう」



そう言って、笑顔を見せてくれた。








2人で近くの文房具屋まで歩いてく。



「他にいるものとかある?」


「あっ、いや、だいじょうぶ。お小遣いあるから」



そう言うと、半ズボンの右ポケットをひらひらさせた。



優ちゃんの服を買ってあげないと、この半ズボンともう1つしかないもんな。

今度、いまむらに行って買うか。







2人で歩き始めて10分、文房具屋に着いた。




カランカラン。


誰もいないのか。



優ちゃんは鉛筆のあるコーナまで1直線に歩いて行った。

目が輝いてるな。


文房具が好きなのか?



優ちゃんを見ていると、奥の方から店員さんが出てきた。


「いらっしゃいませ、こんにちは」


「こんにちは」


「あの、優ちゃんのお兄さんですか?」


「あっ、はい。そうですけど」


…なんで名前知ってんだろう?



「そうですか。優ちゃん、いつも学校の帰りが早い時に寄ってくれるんですよ」


「そうなんですか。ご迷惑かけます」


「いえいえ、お話するとこちらが癒されます。にしても、優ちゃん文房具好きなんですね」


「みたいですね。最近知ったんですよ」



というか、今日なんだけど…。




「あっ、そうだ」

店員さんが何かを思い出したような顔をして、こっちに近づいて耳元でこそこそ話し始めた。


「最近、あのウサギのキャラクターの鉛筆削りがかわいいかわいいって言ってたんですよ」



とにっこりしながら教えてくれた。


そっか…。

知らなかったな。



「優ちゃん」


「なに?」


「そういえば、鉛筆削り壊れかけてたよな」


「そう、だったかな…」


「僕が見たときは壊れてたよ。だから、新しいの買おっか」


「えっ」


「好きなやつ選んで」


「わかった!」



元気な声で返事をした後は。まっすぐにウサギのキャラクターがのっている鉛筆削りの前に立った。


店員さんの言うとおりだったな。





「和人、これこれー!」



!?



そういえば、苗字でプラスさん付けだと変だから名前で呼んでくれってお願いしたんだっけな…。



あれ、店員さんの目が変わった気がする。

まずい、フォローしなければ…!





「なんで呼び捨てなんだよ」


店員さんだけに聞こえるような声で呟いてみた。

違うんだよ、店員さん。

ロリコン的なあれじゃないから。






「これこれー!」


「かわいいね」


「うん!」


テンションあがってるな。



「じゃ、レジに持っていこうか」






ピッ。



「こんにちは、優ちゃん」


「あっ、みずきさん!こんにちは」


「よかったね。お兄さんに買ってもらえてね」


「うん、よかった」


「はい、お兄さん、お釣り」


「ありがとうございます」


「はい、優ちゃんにはレジ袋」


「ありがとう」



満足そうな顔してるなー。



「優ちゃんがいつも来てくれるから少しまけといたからね」


「本当ですか、ありがとうございます」


「ごひいきにしてくださいね」


「考えときます」


「えー。じゃ、優ちゃんに頼むことにしますー」


「ごひいきにって?」


「えーっと、そうだなー」


「また来てねってことだよ」


「そうなんだー。みずきさん、また来るね!」



そう言って、手をぶんぶん振った。

僕も店員さんに手を振って文房具屋から出た。







家までの帰り道、優ちゃんはにこにこしながら歩いてる。


「優ちゃん」


「なにー?」


「優ちゃんのこと優って呼んでもいい?」


「いいよー」


「それと、外では僕を優ちゃんのお兄さんってことでいいかな?」


「なんでー?」




そりゃ。

ロリコンくそ野郎に見えるから。


なんて、言えないしな。




「んー。家族だからかな」


「うん、わかった!」



かわいい笑顔を見せて、優はそう言った。










優とは、少し近づけただろうか。

でも、前よりは笑顔を見る機会が多くなったな。


現実は厳しい。

優はこの歳できっと気付いてしまったのだろう。



でも、思ってるより現実は温かいってことを優には知ってってほしい。

もっと、みずきさんを含める他の心温かい人と会ってほしい。






優は鉛筆みたいだな。

削らないと中が何色かなんてわからない。


黒じゃなく、赤色かも知れないし、水色かもしれない。

まだ、僕は優が何色かまだ知らない。


これから少しずつでも削ってくしかないんだな、きっと。





優が手をもじもじしてる。



「手、繋ぐ?」


なんとなく、言ってみた。

恥ずかしいな、僕は。



「うん」




優の持っていたレジ袋を持って、もう片方の手で優の手を握った。



今日は夕日がきれいだな、家に居たらきっと見れなかった。









読んでいただきありがとうございます。


ゆっくりですが連載していきます。

なんというか、自分で書いた後読むと恥ずかしいですね。


はい、恥ずいです。

次回も興味があれば読んでいただけるととてもうれしいです。

ではでは ノシ

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