Leaf2 太陽がいっぱい
太陽の大切さ、気づいていましたか?
「美味いか?」
・・・・10回目。
「美味そうだよな〜!」
・・・・5回目。
「あ〜俺の事は気にしなくていいぞ!全然腹なんか減ってないから!!」
そう言って、直後にお腹がなること・・・・3回目。
彼は私を連れ去り、真っ赤な車(お前車の名前ぐらい見ただけで分かれよ。赤の車つったらアルファロメオ以外有り得ないだろ?と彼に誇らしげに言われた)にポンッと人を放り投げフルスピードで逃げ出した。あまりにあっという間の出来事だったので、私は自分が何処まで連れて行かれたのかすらも分からなかった。そんな呆然としている私に、彼は何事も無かったかの様に
「やっぱりまずは腹ごしらえだよな?」
と笑い掛け、きょろきょろしながら手頃なファミレスを探し始めた。お願いだから前を向いて運転して下さい・・・・
そうしてひげもじゃの男と、礼服を着た女の子という奇妙な組み合わせの二人組が、このレストランに来店したのだ。最初に彼は私に
「何が食べたい?何でも好きな物奢ってやるぞ?」
と聞いてきた。私はたいして食欲がなかったので
「あっ、じゃあコーヒーを・・・・」
と言ったのに
「何だ?その年でコーヒーか?んな大人ぶるなって!何でも頼んでいいって言ったんだから、何でも頼めよ!」
お姉ちゃ〜ん注文よろしく〜と堂々と大声で叫んで、お客の目をすべてこちらに向けてから彼はケーキ・パフェ・パイ・アイスクリーム・・・などなど私が頼んでもいない品を次々に注文した。こんなたくさん注文しといて払うお金が、このみすぼらしい格好の何処にあるのだろう?と私を初め、このレストランにいるお客や店員さんの全員が思ったことだろう。あと結局彼はコーヒーを頼んではくれずに、りんごジュースを頼んでいた。
私が疑いの表情でジトッと彼を見ていると
「なんだ?金ならあるから心配すんなって!」
と少し誇らしげに言われ、
「ホラッ!」
とテーブルには札束が放り出された。福澤諭吉が一枚、二枚、三枚・・・もう数えられないくらい大量にあった。私は目を見開き、驚いた。こんなもの見たのは初めてだったし、こんな人がこんな大金を持っているという事にも驚きだったからだ。・・・何故だか納得がいかない感が残る・・・そしてこの後、注文された品全てが私の為の物だという事に・・・この時はまだ気がついていなかった。
だがこんなにもお腹を空かし今にも涎を垂らしそうになっている人を目の前にして、食事が出来るほど私は神経図太くない。
「あの〜・・・これどうぞ」
私は近くにあったイチゴのパフェを彼に差し出した。
「いや・・・だから俺はいらねぇって・・・グキュルルルルルル」
「・・・・・お腹、鳴ってますけど・・・?」
あっ、顔が少し赤くなっている。ちょっとしてやったり。
「・・・コホン・・・じゃあ・・お言葉に甘えて・・・頂くとするかな」
そう言うやいなやにゅっと手が伸びてきて、一息にぺろりと食べられてしまった。そしてそれを皮切りに、次々に彼はテーブルに並ぶ品々をあっという間に食べ尽くした。
「あ〜腹いっぱい」
一緒にげっぷもしていた。本当にこの人が大人だとはとてもじゃないが思えない・・・地が髭面な上に、サングラス、外では帽子まで被っていたのだから正確な年齢は元々分かっていなかったが・・・まぁ、私が食事をしている最中にず〜っと笑いながら見ている時の顔は、悪戯好きの悪ガキの様でもあった・・・・けど、どっちかっていうと・・・温かみを帯びた柔らかい眼差しで・・・まるで・・・
「よし!腹ごしらえも済んだけど・・・ってさっきからココに皺寄ってるぞ?」
そう眉間を指で擦りながら言われた。
「えっ!?」
「な〜んかさっきからずっと考え込んでるようだけど?」
私はあまりの呆れと、怒りで一瞬我を忘れ・・・
「それはあなたのせいでしょ!?」
と気づけば自分でも不思議なくらい大声で、しかも立ち上がりながらそう叫んでいた。客も店員もみんな、私のことを目をまん丸くして見ていた。かぁっと顔が一気に赤くなっていった。わ、私としたことが・・・こんなことぐらいで取り乱すなんて・・・
「ガァッはっはっはっはっはっ!!!」
目の前では大笑いされるし・・・もう・・穴があったらどこまでも潜り続けたい。
「や〜っぱりお前は夏流の子だー。慌てると自分を見失うトコとかそっくり」
「・・夏流って・・まさか・・お父さん・・?」
「あーやっぱ知らなかった!?俺、君のオジサンなの。夏流の弟」
そんなビックリどっきり発言急に言われても・・・お父さんだってそんな事一言も言ってなかったし。
「・・・じゃあ・・・何で・・ちゃんとお葬式に出てくれなかったの?」
自分の兄が死んだって言うのに、どうしてそんな平気な顔して・・・
「あぁ・・それはホントにすまなかったと思ってる」
珍しく声のトーンが下がった。
「あいつが・・・夏流が死んだって新聞で見たんだけど、仕事が中々終わんなくってよ・・・ホント悪かった。お前だけに辛い思いさせちまって」
この人は信じれる。根拠も何も無いけど、私は直感的にそう思った。見た目も大金を持ってる辺りも怪しいけど・・・この人は強い何かを持っている。私が持っていない何かを。
「まぁ、この俺が傍にいればもう辛い思いなんてさせねぇから!安心しな!」
さっきとは打って変わって明るい声と笑顔。私には到底真似できない。
「俺達は今から『家族』だ!!」
そう言って呆気にとられている私に、手を差し出した。
「・・・かぞ、く?」
「あぁ!これからは一緒に住んで、一緒に食べて、一緒に暮らすんだ。辛い事も、哀しい事も、もちろん楽しい事もぜ〜んぶ分かり合える『家族』になるんだ」
思わず涙が零れて来た。一瞬にして失ったものを・・・もう手に入れられないと思っていた大切なものが、また与えられるなんて。私は感謝の気持ちを込めて、差し伸べられた手を強く掴み、握手をした。
「だ、大丈夫か?」
私が急に泣き出してびっくりしたらしい。
「えぇ。ありがとうございます」
「んな堅苦しい事言うなって!もう俺達は家族なんだから」
しかも照れてる。すぐに顔と態度に出てしまうみたいだ。この人だってお父さんとそっくりじゃない。
私達はお会計を済ませてレストランの、快晴の空が広がる外に出た。外がこんなに晴れていたなんて、今まで全然気がつかなかった。私の心が曇っていたからかな?でももう大丈夫!太陽が現れたから。
「そういえば・・・私はあなたの事をなんと呼べばいいんですか?」
この人が私の父親だとは・・・正直あまり思いたくない。
「あ〜・・そうだな・・・キャプテンって呼べ!キャプテンがいい!!」
・・・・はい!?
主要キャラが全員出るまで結構かかりますね、この話(笑)しかも主人公の人格が未だにきちんと定まっていないという・・・
でも皆様に楽しんで読んで頂ければ幸いです。