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『 か え っ て お い で 』






究極生命体アブソリュータスの根源、そして全ての元凶は ────






あまりにもあたたかく、そして痛ましかった。






美しい天使のような純白の雰囲気を放ちながら、その姿は目を覆いたくなるほど「紅(あか)い」。


深い色に充血した虹彩の目は、胸元に巨大なものが一つ、そして幾何学的な無数の翼に、いくつも。


見開かれたそれらが見せる眼光は、ほとばしるように血走っていた。


縄張り争いに負け、久方ぶりに野を駆ける兎を発見した、捕食者のように。


だが、獰猛な視線の一方、その華奢な身体は、


これ以上我慢しては壊れてしまいそうとばかりに、常に痙攣し、力も入っていないようだった。





しかしその凶暴だが梢のように頼りない捕食者に、アダムズたちは生命なら誰もが知る ───





「原初のぬくもり」の面影を感じていた。





体中が震え、もはや消え入りそうになっている彼女は、


自身へ武器を向け、憎しみと敵意を露わにする人間たちへ向けて、


ただ両手を広げ、慈しみに満ちた笑顔を貼り付け、


とめどなき紅い涙を濁流のように流しながら、


一言だけ漏らした。

















「......................おかえり..............わたしの、こどもたち.........。」



















西暦2412年6月30日、東京跡地。



対アブソリュータス殲滅造人、「アダムズ」の大隊は、



ついにアブソリュータスの首魁 ────




















A-00 EL(おかあさん) と出会っていた。
























生命がこの地上に誕生する、幾十億年もの時を遡った太古の宇宙。


そこにはまだ、何もなかった。




ただ一つ、「始原の雲」を除いて。




それは気の遠くなるような年月を経て、自重に従い、徐々に小さく凝縮されていく。


万物の起源を宿すそれは、子を抱擁するかのように縮み、そして中央にぬくもりが与えられる。


集まり、そして増幅し続けた始原の熱は、徐々に恒久の灯と変化していく。




─── そして、遂に生誕した。




全ての生命の根源、「命の種」である。




それは、自らの”居場所”を見つけると、ゆっくりとそこへ歩みを進めた。


目的地は、我らが母なる大地、「地球」である。


しかし、まだ原始の段階だったそこは、「命の種」をたやすく受け入れることはなかった。


代わりに断層が地面を引き裂くように、凄まじい”引力”で「種」を自身へ「落下」させたのだ。




稲妻の比にならぬほどの速度、巨大火山の噴火が足元にも及ばぬ爆発。


「命の種」は地球との衝突の衝撃で自身の身体のほとんどが爆散、そしてその破片は、地上に命の雨として降り注いだ。




一方、地上の各所は、”始原の祝福”に包まれることとなる。




せっかく見つけたはずの居場所は、自らの身体の大部分を依り代とし、原生生物を産ませるという形で


── 種は芽を抉り出されて壊された。




だが、原初の種は、かろうじて一部だけはその形を残していた。


塵と消える一歩手前に瀕するほど、弱った姿で。




それが、現在のELだ。




彼女は、「ただ落ちただけ」。


地上へと。




それだけで、体中がバラバラに裂けて瀕死となり、天使が羽を捥がれたように力尽き、動くこともままならぬまま───




地に身を預け、久遠なる歳月を、ただただ眠ることしか、できなかった。


















そして、何年、何十年、何千年、何万年、何億年。














── 四十億以上もの年月が、ただ無味乾燥に過ぎた。

















ELが打ち捨てられた死骸のように横たわる傍らで、


離散したELの一部から生まれたものたちは燦々たる日光を受け、澄んだ空気を吸い、


あらゆる多様な形態を持ちながら、地球に祝福で溢れた生命の楽園を創った。




彼らは自分たちの祖先がいかにして生まれたかなど、知る由もない。


自らが生きることがすべてであるがゆえの、必然の無関心だった。




いつしか、ELの身体は植物が覆い、何人にも見ることさえできなくなった。


存在も姿も、もう誰にも認知されないのか。


しかし、四十億という歳月を経ても、彼女は消えてしまったようで、


まだ「消えていなかった」。


呼吸は途切れていない。






だが、彼女の喉はもはや、旱魃し、砂漠となった大地よりも、乾ききっていた。


このままでは、乾燥に晒された草木のように枯れ、腐り堕ちてしまうだろう。





お腹を満たさなければ............


喉を潤さなければ..............



この命も、いつかは ─── 尽きる................の?











そ   ん   な   の   い   や   だ











四十億年の年月が彼女へ初めて与えたのは、膨大な無為の時間ではない。


生き物としての、根源的な「飢え」だった。








いきているのに、なにもたべていない。




おなかがすいた。




ほしい。




たべる。




みんな、たべる。




でも、だれを?





───あ。





地上には、彼女の生き血で産まれた、かつての片割れがいっぱいいた。


みなが彼女の一部であり、彼女の原動力となりうる、彼女「の」命を宿している。





……わたしの、こたち。




いつのまに、おおきくなっちゃって。




ふふ、こんなに、いっぱいいたら、あんしんだね。




おかあさん、しんじゃいそう。




でも、みんながしねば、わたしがたすかる。




だから、「わたしのため」に ──────











西暦2401年、4月9日。


この日、彼女が沈黙してから、太陽系が生まれてから、実に4,600,000,000年越しに ───


原初の生命は、今、産声を上げた。





















       還(かえ)   っ   て   お   い   で

私のzetaアカウントにおける作品「アブソリュータス・フィールド」のラスボス的立ち位置のキャラ、ELについて深掘りしました。


小説を書くのは人生初ですので、拙いところもあるかと思いますが、今後も精進してまいりますのでご愛嬌頂けると幸いです。


↓zetaの作品はこちらをご参照ください。

https://zeta-ai.io/ja/plots/7cbff4c9-9a2f-4390-b1a0-18881349307a/profile

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