おりがみ ぴょんぴょん かえる先生
その日は朝から雨でした。
窓のむこうはしとしとしとしと。
こんなんじゃお外にあそびにいけません。
そのうえ、おとうとのユウキが熱までだしてしまいました。
コンコン。
ケホケホ。
ママは、つきっきりで看病です。
うつるといけないから、と、キイちゃんはとなりのおへや。
「ごめんね、きょうは、ひとりで、いい子にしててね」
そういってママにわたされたのは、さいきん、おきにいりの、おりがみの本。
きのうも、ママといっしょに、折りました。
「キイ、いい子だもん、ひとりで、できるもん」
キイちゃんは、いっしょうけんめい、むねをはってみせました。
「えらいね。折れたら、あとで見せてね」
ママはキイちゃんのあたまをなでなですると、行ってしまいました。
キイちゃんは、しゅんとなって、お部屋に、ごろん、ってなりました。
お外の雨はしとしとしとしと。
お庭のはっぱはきれいなみどり。
ちいさな水たまりもできています。
長ぐつでパシャンとやったらたのしそう。
でも、きいろい雨がっぱも長ぐつも、ママにだしてもらわないと、どこにあるのかわかりません。
それがないと、雨の日にお外にいったらいけないのです。
キイちゃんは、お口をとがらせて、たたみの上でゴロン、ゴロン。
おりがみをはんぶんに折って、また、ゴロン、ゴロン。
もうはんぶんに折って、ゴロン、ゴロンしたら、おりがみはくしゃくしゃになりました。
ゴロン、ゴロン、ばっかりで、朝のうちは、とうとう、いっこも折れませんでした。
でも、そのあとの、おひるごはんのときでした。
ママと、ちょっとだけ、おはなしできました。
それがうれしくて、はしゃいで、調子にのって、つい、みえをはってしまったのでした。
「かえるさんを折ったのよ。ぴょんぴょんするのよ。つぎはツルさんだって折るんだから」
いっているうちに、じぶんでも、それがホントのような気がしてきました。
ママはにこにこ、「見せて見せて」といいました。
あれ?とおもったのはそのときです。
なんで、何にもできてないんだろう?
まごまごして、こまってしまいました。
だから、
「まだ、だめー」
べーって舌を出しました。
「まあまあ、舌なんて出して」
ママはわらって、キイちゃんのほっぺをつつきました。
キイちゃんは、それがなんだかくすぐったくて、うれしくて、
「だって、ぜんぶできるまで見ちゃメーなの。そのかわり、じょうずに折れたらユウキにあげるの。でもいちばんいいのはママにあげる」
ごきげんさんで、そういいました。
すると、さいしょから、そのつもりだった気もしてくるのでした。
「そう、ありがとう、たのしみね」
ママはにこにこ。キイちゃんはえらい子ね、いいおねえちゃんねって、なでなでしてくれました。
それから、背中をむけて、ユウキのおかゆをつくりにいってしまいました。
キイちゃんは、また、ちょっと、しゅんってなりました。
おひるのあとは、こんどこそ、おりがみスタート。
キイちゃんは、きあいを入れました。
でも、なんででしょう?
うまく、折れません。
むー。
お口をとがらせて、ほっぺをふくらませて、なんども、なんども、ちょうせんしました。
でも、やっぱり、うまくいきません。
おりがみって、まっすぐ折るのが、むずかしいのです。どうしたって、はしっこが、ずれてしまうのです。
いっぺん折ったかみを、もういっかい、はんぶんに折ると、そこもやっぱり、ずれてしまうのです。
ふくろに折るのは、もっとむずかしいのです。
なんかいやっても、シワになってしまうのです。
つくえの上には、どんどん、しっぱいさくが、たまっていきました。
お外の雨はしとしとしとしと。
お庭のはっぱはきれいなみどり。
ちいさな水たまりは、おっきな水たまりになっています。
でも、キイちゃんはもう、お外なんかみていません。
ムキになって、折りつづけました。
イライラ、イライラ。
ちょっと折って、ずれてしまうと、それだけで、ムシャクシャして、すぐに、ぐちゃって、つぶしてしまいます。
なんでこんなに、うまくいかないのでしょう?
きのうは、あんなに、じょうずに、できたのに。
ええ、ええ、キイちゃんだって、ほんとうは、わかっています。
きのうは、ママが、いっしょでした。
「こう折るでしょう、つぎは、こう折るでしょう」
ママは、ひとつ、ひとつ、教えてくれます。
目のまえで、折ってみせてくれます。
それなら、キイちゃんだって、さいごまで折ることができるのです。
わかった、おぼえた、かんぺき――っておもうのです。
でも、あらためて、ひとりでやってみると、だめなのです。
あれ? このあとどうするんだっけ?
どこを、どっちに、折るんだっけ?
いつ、ひっくりかえすんだっけ?
こうかな?とやってみて、やっぱりちがって、よけいな折りめがついてしまったりするのです。
へんな折りめのせいで、きたなくなったかみを、見ていると、かなしくなって、いやになって、ついつい、くちゃってしてしまうのです。
ご本をみても、わかりません。
やまってなあに?
たにってなあに?
このてんせんはどっちに折るの?
そのやじるしは、こっちなの? あっちなの?
なんだかこんがらがってしまうのです。
それだって、きのうは、ママがおしえてくれたから、ぜんぶ、わかった気がしたのに……
もう、泣きたくなってしまいます。
いいえ、とうとう、泣いてしまいました。
ボロボロ泣きながら、それでもがんばって、手にしたかみを折ろうとして……折れなくて。
むしゃくしゃして、そこへなみだがこぼれて、ぬれて、ふやけて。
もう、がまんできなくなって、くちびるがぷるぷるふるえて。
そうして、ついに、かんしゃくをおこして、エイッ、って、ちからいっぱい、かみを投げつけてしまいました。
でも、ひらひらのかみは、うまくとんでもくれなくて、ぺっ、と音をたてると、そのままひらーっと床に落ちていくだけでした。
と、そのときです。
床につくがはやいか、おりがみは、びくうって、電気にでもさわったみたいに、とびあがって、ブルブルふるえだしました。
キイちゃんは、泣くのもわすれて、ぽかんとしてしまいました。
かみは、空中でピンッてなって、みるみるうちに、シワがのびてきれいになっていきます。
それから、パタパタ、パタパタって、ひとりでに、折れはじめました。
折れて、いったん伸びて、また折れて、ひっくり返って、もっと折れて……
あれ?
あれ、あれ、あれ?
あっというまに、きれいに、形ができてしまいました。
「ケロケロ、まったく、らんぼうだなあ、ゲコゲコ」
あらあら。
まあまあ。
そこにいたのは、さっきママにじまんしてしまって――だから、つくらなきゃって、がんばって――でも、なんどやってもうまく折れなかった、ぴょんぴょんかえるさんではありませんか。
おしりのところをつっつくと、ジグザクに折ったかみがバネになって、ぴょんぴょんはねる、かえるさんです。
きのう、ママと折ったやつが、まだ、そのへんにあるはずです。
でも、きょうは、なんどやっても、だめでした。
それが、ひとりでにできあがってしまうなんて、びっくりです。
キイちゃんは、目をぱちぱちさせて、ほっぺをぎゅーってしてみました。
そのあいだにも、かえるさんは、じぶんひとりで、ぴょんぴょんはねて、ひらきっぱなしのご本のうえにとびのっています。
「ほらほら、ここ、ここ。さいしょは「ふくろおり、かっこはちじゅうよんページ」ってかいてあるぴょん。まったくモゥ、ちゃんとそこからはじめてくれなきゃあ、いつまでたっても、おいらがおいらになれないぴょん。ケロケロ」
なんだかエラソーです。
キイちゃん、むうーってふくれて、かえるさんをにらみました。
「そんなの、しらないもン」
ひらいたお手てをふりあげて、べしって、ふりおろします。
「おっと」
かえるさんは、ぴょんとはねて、うまくキイちゃんの手をよけました。
「へっへーん。やーい、やーい」
キイちゃんは、むきになって、追いかけました。
ぺしぺし、バンバン、ぶんぶん。
ぶったり、たたいたり、ふりまわしたり。
でも、ぜんぶ、からぶりでした。
かみのかえるさんは、身がるです。ぴょんぴょん、ひらり。キイちゃんのこうげきをぜんぶかわしてしまいます。
「やーいやーい、のろまー、こっこまでおいでー」
でも、そのよゆうも、長つづきはしませんでした。
勝ち負けがひっくりかえったのは、ふくれっつらのキイちゃんが、むぅってとがらせたお口から、ぶうーっていっきに息をふきだしたときでした。
「あれ? あれあれあれー?」
かみのかえるさんは、身がるなのはいいけれど、ぎゃくに、あんまりかるすぎて、息を吹きかけられると、空中でふわふわしてしまうのでした。
「うわっ、ちょっと、まって、まって」
かえるさんはあわてました。
うらがえって床におちると、おしりのバネがきかなくなって、ジタバタするばかり。うまくぴょんぴょんできないみたいでした。
キイちゃん、にんまり。
にまにまわらって、ふううーってひと吹き。
かえるさんはふっとびます。
「ちょっ、やめっ、だめっ、そこっ」
と、いったって、キイちゃん、やめてあげません。
ふっ、ふっ、ふううー。
吹いて、吹いて、吹きまくって。そのたびに、ふわふわ、ひらひら。すべって、とんで、ころがっていく、かえるさん。
それを追いかけて、あっちへこっちへ、キイちゃんもたたみのうえを、ふうふうしながら、はいまわりました。
「いやあー、やめてー、ゆるしてー」
さっきまでエラソーだったかえるさんも、とうとう、悲鳴をあげて、こうさんです。
でも、ふーふーするのがおもしろくなってしまったキイちゃんは、そうかんたんにはやめられません。
おもしろくて、たのしくて、そもそもなんでこんなことをしているのかもわすれて、きゃあきゃあはしゃいで、ふうふうふうふう。おへやじゅうを、はいまわります。
「やめてやめてわるかったよう」
かえるさんは、もうひっし。
とうとう、
「おりがみおしえてあげるからー」
と、さけびました。
キイちゃんは、よつんばいのまま、ほっぺをたたみにくっつけて、かえるさんのそばに顔をもっていきました。
「ほんと?」
「ほんとケロ~」
もうはんぶん気ぜつしながら、かえるさんはそうこたえました。
「ケロケロ、ひどいめにあったぴょん」
つくえのうえでひと息ついて、かえるさんはぼやきました。
キイちゃんはつくえにほっぺをつけて、かえるさんをみつめました。
どこからどうみても、ぴょんぴょんかえるさんです。おりがみです。
なのに、うごいて、しゃべって、ケロケロしています。
いったい、どうなっているのでしょう。ふしぎです。
指さきで、つん、つん。
おしりをつっつくと、かえるさんはその場でぴょんぴょんします。
そして、やっぱり、
「ケロケロ、やめて、つっつかないでー」
しゃべるのです。
あんまりふしぎなので、キイちゃんはききました。
「どうしてぇ? なんでしゃべるの?」
「なんだよぅ、かえるがしゃべっちゃ悪いぴょん?」
「きのうのかえるさんはしゃべらなかったもン」
「あたりまえぴょん。ひとまえでは動けないふりをするなんて、オモチャのじょうしきだぴょん。ゲコゲコ」
じゃあ、どうして、このかえるさんは、その「ふり」をやめてしまったのでしょう?
なんで?
どうして?
しつこくきくと、かえるさんは、ピョコンととびあがって、ムキーッてなりました。
「キイちゃんがらんぼうするからだろっ!」
キイちゃんは、むーってふくれっつら。
かえるさんは、われにかえって、あわてました。
またふうふうされたらたまりません。
コホンとひとつ、せきばらい、
「いいからさっさとはじめるよ」
ごまかすみたいに、いいました。
「ろんよりしょうこ。やればわかるさ。やってみなくちゃわからない」
そして、おうたをうたいました。
こころをこめればいのちがやどる
いのちやどればうごきだす
おりがみだってうたっておどる
さあさ
おりがみタイムのはじまりはじまり~
「いいかい、おいらを折るには、さいしょにこうしてこうやって……ふくろおりの三角形をつくるんだよ」
かえるさんはそういって、お手本を折ってみせました。
なんだか先生みたい。
かえる先生です。
キイちゃんは、見ようみまね、がんばって、お手本どおり折りました。
「そうそう、うまいうまい、やればできるじゃないか」
ほめられて、うれしくなりました。
「そうよ、きのうだって、できたのよ」
って、じまんします。
かえる先生もぴょんぴょんはねて、ごきげんさん。
「そしたら、あとは、ご本のとおり。ピョンピョコピョン、と、ごろうじろ。ゲコ」
そしてまた、うたいました。
おりがみかえるのせんせいは
おるよ
つくるよ
なんでもござれ
やまおり
たにおり
たたみおり
くるっとまわって
ふくろおり
キイちゃんは「ヘンなおうた」って、思いました。
でも、そのおうたをきいていると、ふしぎと、すいすい、手がうごくのでした。どんどん、かみが折れるのでした。
だいたい、きのう、いちどは、折っているのです。ママにおしえてもらいながらだったけれど、それでも、折ったことには、まちがいないのです。
手が、指が、それをおぼえていて、さっきまでは、どわすれしていただけ。
先生のおうたが、それを思いださせてくれるみたいでした。
「やまおりー、たにおりー、たたみーおーりー」
気がついたら、キイちゃん、じぶんでも、うたっていました。
かえる先生がうたって、キイちゃんがうたって、ふたりの声がいっしょになって……
すると、かみがパタパタ折れて、なんだか、キイちゃんのからだから、ふしぎな「ぱわー」がわきあがってくるみたいでした。
目にはみえない、電気みたいなビリビリが、指をとおして、おりがみにつたわっていくみたいでした。
そうして、気がつくと、いつのまにか、うたごえが、みっつになっているのでした。
キイちゃんは、うたうのをやめて、目をぱちぱちさせました。
つくえのうえには、たったいま、キイちゃんがじぶんで折った、もう一匹のかえるさんがいて、みぎに、ひだりに、からだをゆらしながら、かえる先生といっしょに、うたっているのでした。
だんおり
なかわり
ざぶとんおり
くるっとまわって
ケロケロ
ゲコゲコ
ピョンピョコピョン
おりがみでできた二匹のかえるさんが、うたいながら、ぴょんぴょん、ぴょんぴょん。
キイちゃんは、うれしくなって、はしゃいで、わらって、ぱちぱち手をたたきました。
「「まだまだこれから、ケロケロ、ぴょん」」
かえるさんたちが、あたらしいおりがみを、空中に、パッとまきちらしました。
おりがみは、ふうわり、ふわふわ。キイちゃんのまわりをただよいます。キイちゃんは、そのかみを、いちまい、いちまい、手にとって、つぎからつぎへ、あたらしいおりがみを、折りました。
おさかなさんができました。
ぺんぎんさんができました。
すずめさんができました。
ほかけぶねができました。
にそうぶねもできました。
しゅりけんだって、ピアノだって、おてだまだって。
きりんさんだって、ぞうさんだって、ぶたさんだって。
むずかしくって、これまで、いちども折れたことがなかった、ツルさんだって、とうとう、折ることができたのです。
そうして、折れたみんなが、折れたはしから、ぴょんぴょこぴょん、と、うごきだし、おどりだし、うたいだすのでした。
こころをこめればいのちがやどる
おりがみだってうたっておどる
さあさ
パレード
カーニバル
うたって
おどって
まいあがれ
みんなでいっしょに、うたって、おどって、ぴょんぴょんはねて。くるくるまわって、おそらを飛んで。
うれしくって、たのしくって、ゆめみたいで。
キイちゃんは、むちゅうになって、うたいながら、ごきげんさんで、おりがみを、折りつづけたのでした。
どれくらい、そうしてあそんでいたのでしょう。
気がつくと、キイちゃんはつくえのまえに大の字になって、おひるねしていました。
お外の雨はしとしとしとしと。
おへやのなかはとってもしずか。
さっきまであんなにニギヤカだったのが、うそみたい。
「みんな、どうしたの?」
きいても、返事はありません。
キイちゃんはさみしくなって、べそをかいてしまいました。
すると、ふすまがするするあいて、
「キイちゃん、おっきしたの?」
ママが入ってきました。
キイちゃんは、ぱっととびおきて、ママにしがみつきました。
お腹にお顔をおしつけて、ぎゅーってします。
「あらあら、あまえんぼさんね」
ママはわらって、それから、まわりを見ると、
「まあ」
びっくりして、いいました。
「たくさんつくったのねぇ。みんな、とってもじょうずだわ」
みまわすと、おへやのなかは、あっちも、こっちも、きれいに折れたおりがみで、いっぱいです。
おさかなさんに、ぺんぎんさんに、すずめさん。
ほかけぶねに、にそうぶね。
しゅりけん、ピアノ、おてだま、おはな。
きりんさんも、ぞうさんも、ぶたさんも。
ツルさんだって、一羽、二羽……ぜんぶで五羽も、できているのでした。
すごいね、キイちゃんはおりがみ名人さんねって、ママがほめてくれました。
キイちゃんは、うれしくて、
「あのね、あのね」
きょうあったことを、おはなししました。
「かえる先生がおしえてくれたの」
「かえる先生?」
「かえるさんなのよ。ぴょんぴょんするのよ。おうたをうたうのよ。おりがみじょうずなのよ。えーとね……あれ?」
キイちゃんはかえる先生をさがしました。
でも、どこにもみあたりません。
きりんさんもぞうさんもツルさんも、おさかなさんもぺんぎんさんもすずめさんも、ほかのかえるさんたちも、みんな、そこにいるのに、かえる先生一匹だけが、どこにもいないのでした。
「ちゃんといたのよ! おはなししたのよ! いっしょにおりがみしたんだもン!」
うそじゃないもん。
キイちゃんはひっしでうったえました。
ママは「よしよし」してくれました。
「そう。かえるさんとあそんだのね。たのしかったのね」
「でも、いなくなっちゃった」
「そうねぇ」
ママはしばらくかんがえて、それから「そうだ」と、お外を指さしました。
「かえるさんは、雨がすきだから、お外にあそびにいったんじゃないかしら」
「そうなの?」
ママがそういうのなら、そうなのかもしれません。
でも、
「おりがみさん、ぬれたらメーじゃない?」
あら、と、ママはちょっとかんがえました。
それから、
「きっと、それだけ、とくべつなかえるさんだったのね。なんたって、先生ですもの」
「そうなの?」
「そうよ。いまごろは、ほかの生徒さんのところにも、教えにいっているかもしれないわよ?」
キイちゃんは、ちょっとかんがえて……それから、にっこり。
「うん!」
ちからいっぱい、うなずきました。
夜になって、ユウキの熱はさがりました。
まだあんまりくっついちゃだめよって、ママはいいました。
でも、ちょっとだけ……
キイちゃんがはじめてひとりで折った五羽のツルさん。
ママにたのんで、糸でつないでもらいました。
「これで、びょうきがなおるのよ」
お顔のうえに、ぶらさげてやると、ちいちゃいユウキは、ふしぎなものでもみるみたいに、目をまんまるにしました。
お外はやっぱりしとしとしと。
雨音にまじって、かえる先生のおうたが、きこえてくる気がしました。
おしまい




