第81話《癒光》
午前の訓練場。
草の上に、淡い光の粒が散っていた。
ナユとリカリーネは、今日も魔力制御の稽古を続けていた。
「もっと!もっと魔力を!」
リカリーネが放った《フレアアロー》が標的に命中し、爆ぜた。
その破片が跳ねて、彼女の指先をかすめる。
「……っつ!」
「リカちゃん!?」
指先が赤く腫れ、微かに煙が上がる。
バルドランがすぐに駆け寄った。
「慌てるな。浅い火傷じゃ」
そう言いながらも、ナユの目がじっとリカの手を見つめていた。
「痛いの、代わってあげたいのです……」
その呟きに、バルドランは静かに目を細めた。
「癒しの魔法は“他者の魔力を自分に通す行為”じゃ……心を穏やかにしなければ、かえって痛みを増すぞ?」
「やってみるのです!」
ナユはリカの手をそっと取った。
小さな掌が重なった瞬間――ミラの声が響く。
『魔力流動、解析開始。対象:リカリーネ。出力比率、二八パーセント推奨』
「……了解なのです!」
ナユは深く息を吸い、胸の前で両手を合わせる。
光の粒が静かに集まり、温かい波となって広がっていく。
「光よ――包み、癒せ……《レイ・ヒール》!」
白い光が指先を包み込み、火傷の痕を柔らかく撫でる。
リカが小さく息を漏らした。
「……あったかい……」
ナユの額に汗がにじむ。
だがその光は、確かに“癒し”の色をしていた。
やがて傷が消え、肌が元の色を取り戻す。
「すごい……痛くない……」
「や、やったのです!?本当に出来たのです!?」
ナユが驚きの声を上げた瞬間、ミラの声が低く響いた。
『解析結果――成功。……今の、温かいです』
いつも機械的な声に、かすかな感情のような震えが混じっていた。
ナユは静かに微笑む。
(ありがとうなのです、ミラ)
「リカちゃん!もう痛くない!?」
「ええ……ありがと。あんた、本当に……すごいわね」
バルドランが杖を肩に担ぎ、短く頷いた。
「癒しは力ではなく、心の在り方じゃ。その“優しさ”を忘れるでないぞ、ナユ」
「はいなのです!」
◆
「今日の記録:新しい魔法成功!癒しの光。優しさが魔力になるって分かったのです。……そして、ミラが“温かい”って言ったのです。ちょっと嬉しいのです!日報完了」




