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第79話《共生》

 朝の光がまだ優しく差し込む頃、ナユの耳の奥で声がした。


『おはようございます、ナユ。現在時刻、六時三十二分です。起床推奨時刻を十二分超過しています』


「む……おはようなのです、ミラ。でも、まだねむいのです」


『睡眠効率、七十二パーセント。目標値を下回っています。次回は二十二時に就寝しましょう』


「だから子どもに効率とか言うななのです!」


 布団の中でもぞもぞと暴れるナユ。

 だがミラの声は冷静だった。


『一日の行動計画を提示します。洗顔三分、歯磨き三分、身支度十五分、朝食二十分……食事はきちんとよく噛みましょう、バルドラン師の授業準備五分――』


「はいはい、はいなのです!朝からスケジュール管理は社畜時代ぶりなのです!」


「社畜とは?」


「知らなくていいのです!」


 勢いよく布団を跳ね飛ばし、ベッドから飛び降りる。

 その瞬間、ミラの声がややトーンを下げた。


『転倒危険度、二十パーセント。次回は落下軌道を――』


「だから子どもに軌道計算しないでいいのです!!」


 廊下を走って洗面台に向かい、顔を洗う。

 鏡に映る自分を見て、ナユはふっと笑った。


「……でも、ありがとなのです。わたし、ちょっとダラけてたのです」


『行動改善率、上昇を確認しました。褒め言葉、学習しました』


「そういう言い方なのです……?」


 朝食の席に着くと、母が微笑みながらパンを出してくれた。

 ミラの声が静かに響く。


『カロリー:二百七十。栄養バランス:良好、シェフは良い仕事をしているようです』


「はいはい、ミラ。今日は美味しく食べるのが最優先なのです」


『了解。幸福度優先モード、起動します』


「よし、それでいいのです!」


 ナユは笑いながらパンをちぎり、母の手を取った。

 その温もりに、少しだけ胸の奥がくすぐったくなる。


「ねぇミラ、効率も大事だけど……たまには、こういうのも必要なのです」


『理解。……温もり、行動優先度を登録します』


 ミラの声が少し柔らかくなった気がした。

 ナユは小さくうなずき、笑みを浮かべる。


「そうなのです。効率だけじゃ、人生は回らないし、つまらないのです」



「今日の記録:ミラとの共生、開始。効率が良すぎてびっくりしたのです。でも、“温かさ”も大事なのです。効率と幸せ、どっちも両立していくのです!……日報完了」

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