表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/142

第77話《布石》

 朝の光が机の上のノートを照らしていた。

 ナユはいつものように《メモ》を開き、昨日の内容を確認していた。


「メモ、時計、鑑定、蓄願、アイテムボックス、エリクサー……全部、今のわたしを作ってきた力なのです」


 言葉の端に少し誇らしさが混じる。

 けれど、その目はどこか遠くを見ていた。


「でも、どこまで行っても“準備”ばかりなのです」


 ナユの頭に浮かぶのは、あの日聞いた“深淵アビス”という名。

 勇者達でも踏破出来なかった、人智を超えた迷宮。

 そこに挑む為には、ただの知恵や技では足りない。


「次に欲しいのは、“先を読む力”なのです」


 ナユは布団の上で小さく正座し、《メモ》に新しいページを作る。

 タイトルを打ち込む。


《第七の願い候補:未来を見る力(仮)》


「未来を見る……でも、ただ未来を知るだけじゃダメなのです。行動に結びつけられないと、意味がないのです」


 ナユの中のサラリーマン魂が顔を出す。

 “情報だけではなく、分析・予測・行動”まで落とし込む――それが報連相の極意。


「未来を“管理”するスキル……たとえば、予兆とか、流れを読むような……」


 頭の中にいくつもの案が浮かび、次々と《メモ》に書き込まれていく。


・《予兆視》……未来の小さな出来事を感覚的に察知

・《未来記録》……自分の選択による分岐をノートで可視化

・《流観》……魔力や人の動きの流れを“見える化”


「うーん、どれもそれっぽいのです……でも、“未来”って本当に見えるものなのかな?」


 眉を寄せて考え込む。

 その時、窓の外から鳥の声が響いた。


 ナユはふと空を見上げ、微笑む。


「……未来は、作るもの、なのです」


 その一言と共に、決意が固まった。


「よし、願いの名前は《未来設計》なのです!」


 自分で決めたその言葉が胸にしっくり来た。

 未来を“設計”する――それは、彼女の前世の仕事そのもの。


 心の中で、静かに願いを紡ぐ。


「神様、次の《願い》は――“未来設計”が欲しいのです」


 瞬間、頭の奥に微かな光が生まれた。

 新しいページがひらかれる。


【新スキル獲得:《未来設計》】

 《メモ》《時計》《鑑定》《蓄願》と自動連動。

 行動計画を“可視化”し、実行ごとに進捗を記録。

 行動結果を予測する補助シミュレーション付き。


「これが……“未来を見る”じゃなく、“未来を作る”力なのです」


 ナユは小さく息を吐き、笑みを浮かべた。


「これで、わたしのスローライフも、アビス攻略も、両方完璧なのです」


 窓の外で朝日が昇る。

 その光が、彼女の琥珀の瞳に映り込んだ。


「今日の記録:《未来設計》獲得。過去の願いを生かして未来を作るスキル。準備の段階は終わり。これからは“行動”の時なのです。……日報完了」


『……』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ