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第76話《整理》

 夜。

 屋敷の灯が落ち、寝静まった部屋の中。

 ナユは布団の中で、そっと目を開けた。


「……そろそろ、“願い”をきちんと整理する時なのです」


 頭の中で《メモ》を開く。

 いくつものフォルダが並び、その中に“願い管理フォルダ”が光る。



 一つ目:《メモ》


 最初に願いで得たスキル。

 サラリーマン時代の“報連相魂”が疼いて得たスキル。

 脳内ノートで、フォルダ分けもタグ管理も自由自在。


「忘れない仕組みがあれば、ミスは減るのです」


 家庭、村、自分。

 フォルダを分けて、毎日日報を更新。

 いまではもう、《メモ》を開かずに眠る日はない。



 二つ目:《時計》


 これは“時間を守る為”の願い。

 サラリーマン時代に一秒単位で動いていた習慣の名残。


 視界の右上に、現在時刻が浮かぶ。

 23:50:00。

 ぴたりと正確に表示されていた。


「アラームもあるし、これで寝坊も忘れも無し、なのです」



 三つ目:《鑑定》


 健康管理と、美少女として究極的な成長の為に得たスキル。

 食べ物等は、栄養や美容効果が見える。


 おかげでナユの食卓は、今や栄養満点。

 母が作る料理に「塩分注意」「ビタミン良好」の表示が出るたび、心の中で「完璧なのです」と頷いていた。


「美少女への第一歩は、体の中から整えるのです!」



 四つ目:《蓄願》


 “願い”を貯めておけるようにと願ったスキル。

 これで、最大三つまで“ストック”可能になった。

 大きな願いを使う時の為に、じっくり貯めておく。


「焦らず、計画的に使うのです。サラリーマンの心得、PDCAサイクルなのです」


 

 ここからはこの三年で取得したスキルなのです。


 五つ目:《アイテムボックス》New!


 空間に小さな“亀裂”を開き、手を入れると――

 欲しい物がノータイムで出てくる。

 中は、なんと東京ドーム百個分。


 時間も止まる為、食材も腐らない。

 しかも最近気づいたのは――

 中を“覗ける”ようになった事。


 棚のように並ぶ食材、薬草、そして――


 光を反射する小瓶が整然と並んでいる。


 

 六つ目:《エリクサー》New!


 毎日、一日の願いでコツコツ作ってきた。

 どんな傷も病も魔力欠乏も、一瞬で癒す神薬。

 現在の在庫、約千本。


「ふふっ、完璧な備蓄なのです……!」


 一つ一つがお屋敷を一つ買えるほどの価値だと鑑定で調べた。

 それを無邪気な笑みでアイテムボックスに並べている。



 静かな夜気が流れる。

 ナユは小さく息を吐いた。


「……でも、そろそろ“願い”を次の段階に使いたいのです」


 目指すのは、深淵アビス

 赤ちゃんの頃に決めた、人生最大の目標。


 これまでの“願い”は、全てその為の土台。

 準備は整いつつある。


「次は、“未来を見る力”が欲しいのです。アビスを踏破する為に、もっと広い視野を」


 《時計》の数字がぴたりと動いた。

 0:00:00――願いリセット完了。


「さて……次の願い、どう使おうかな?」


 琥珀色の瞳が夜明けの前を見つめる。

 静かに、《メモ》の新しいページを開いた。




「今日の記録:これまでの願いを整理。メモ・時計・鑑定・蓄願・アイテムボックス・エリクサー。どれもアビス攻略のための基礎。次の願いは“未来を視る力”……考えるのです!日報完了。」

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