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神様の手違いで死んだ社畜おっさん、まずは自由を願い、次に明日を願う!TS転生し美少女に!最強チート《願い》は一日一回だけど万能です!異世界スローライフで世界も人も未来も救ってみせます!  作者: 兎深みどり
第一章《TS転生しちゃいました!》

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第60話《帰還》

 夜と朝のあいだを、やわらかな橙が満たしていく。

 塔の影は薄れ、王都に小鳥の声が戻ってきた。

 冷たい空気に、パン屋の甘い匂いが混じる。


 石畳を滑る車輪の音が、門前で止まった。

 御者席のセバスチャンが手綱を引く。

 車内では、布にくるまれた小さな鼓動が、確かに生きていた。

 その隣で、ミナが両手をぎゅっと合わせ、祈るように目を閉じている。


「……涙は、仕舞っておきなさい」


 低い声は、叱るのでも慰めるのでもなく、ただまっすぐだった。


 門が開く。

 風が一歩、屋敷に入る。

 母が駆け出し、父がつまずきそうになりながら追う。


「ナユ……!」


 呼ぶ声が震えた。


 腕に戻る重さは、たったひとりの重さだった。

 母の指先が、迷子だった温もりに触れる。

 頬に当てる。

 吸い込む。

 胸の奥で、固くなっていた何かが、ぽろぽろと崩れていった。


「もう大丈夫。もう離さないからね」


 父は膝をついた。

 額を地に近づけ、言葉を探すように唇を震わせる。


「ありがとう……本当に……ありがとう」


 セバスチャンは深く一礼し、ただ一言だけ置いた。


「お嬢様、おかえりなさいませ」


 その横で、ミナが立ち尽くす。

 小さな肩が、朝の光の中でこわばっていた。

 母が気づき、そっと抱きしめる。


「あなたも、よく頑張ったね。もう大丈夫」


 短い言葉が、長い夜をほどいた。

 ミナの喉から、ひゅっと小さな音が漏れる。

 こらえていた涙が、ようやく道を見つけた。



 寝室に陽が差す。

 白い天蓋が、湖面のようにゆらいだ。

 柔らかな寝具に沈みながら、ナユはゆっくり瞬きをする。

 見慣れた梁、父の足音、母の手の温かさ。

 ぜんぶが戻ってきた。


 母の指が、髪を梳く。

 父の掌が、小さな手を包む。

 鼓動が三つ、同じ速さになる。


 ――守れた。

 ――帰れた。


 胸の奥で、小さな灯がふっと明るくなる。

 それは約束の灯。

 世界と明日を結ぶ、細い糸の結び目。


「今日の記録:帰還。母の手、父の手、あたたかい。ミナの涙は透明。風が“おかえり”って言った気がする。ここが、家。……日報完了。」



 玄関先。

 セバスチャンは一人、空を仰いで目を細めた。

 夜の冷たさはもうなく、朝だけが残っている。

 彼は深く息を吸い込み、静かに背筋を正した。

 扉の向こうには、守るべき日常がある。

 それで十分だった。


 そして屋敷の影で、ミナが小さく頭を下げる。

 まだ罪は消えない。

 それでも、やり直す場所は与えられた。

 彼女の胸にも、ほんの少しの朝が灯る。



 その後、王様がお忍びで会いに来てくださったり、その時願いで、腰痛と疲労を治してあげました。


 嬉しかったのはアニシアが来てくれた事で、凄くウルウルとした瞳で心配してくれた。

 でも俺が笑顔を見せたら、アニシアも笑顔になって、ホッとした。


 話せるようになったらアニシアとは良い友達になれそうだ。

 まぁ、相手は公爵令嬢だから、そう簡単には会えないけどね。


 それにしても、転生してから色々あった。

 それはとても目まぐるしくて、サラリーマンだった時とはまた違った大変さで。


 でも、楽しいな!

 俺はこの世界が大好きです。

 神様、願いをありがとうございます!

第一章、終。


そして、物語は第二章へ……。

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