第6話《病魔》
村に笑顔が戻ったのも束の間だった。
子ども達の中から、咳き込み、熱にうなされる者が出始めた。
やせ細った体は、少しの病にも耐えられない。
「神の子よ……どうか、助けてください」
人々は赤ん坊のナユに祈りを捧げた。
両親は困惑しながらも、必死にナユを守ろうとした。
布団の中でナユは小さく息を吐く。
「……来たか、病魔。食べ物だけじゃ足りない。次は医療の整備が必要だ」
思考は完全にサラリーマン。
課題リストを頭に並べ、優先順位を考える。
「よし。今日の願いはこれだ」
ナユは心の中で強く願う。
――病に苦しむ人達を助けたい。
その瞬間、ナユから光が溢れたかと思ったら、村全体に広がり、淡い光が人々を包んだ。
熱にうなされていた子ども達の顔色が戻り、咳が止まる。
大人達の疲れきった体も少しずつ楽になっていった。
「……治った……!」
「神の子だ!本物だ!」
村人達は歓声をあげ、涙を流した。
両親はただ黙ってナユを抱きしめる。
ナユは胸の中で小さくメモを取る。
「今日の記録:病気を治癒。願いは一日に一回。よし……日報完了」
病を退けた村に、再び安堵が広がった。
けれどナユは知っていた。
次に来るのは――飢餓でも病でもない、もっと人の心を揺さぶる“外からの脅威”。




