表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の手違いで死んだ社畜おっさん、まずは自由を願い、次に明日を願う!TS転生し美少女に!最強チート《願い》は一日一回だけど万能です!異世界スローライフで世界も人も未来も救ってみせます!  作者: 兎深みどり
第一章《TS転生しちゃいました!》

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/431

第52話《鐘塔》

 荷車が止まったのは、夜の森を抜けた後だった。

 しんと静まり返った空気。

 ふいに遠くで――ゴォン……と鐘の音が鳴る。


 低く、重たく、胸に響く音。

 ナユは目を閉じたまま、その方向を感じ取る。

 音の反射。

 風の向き。

 石の匂い。

 ――ここは、建物の近くだ。


 麻袋の口が開けられ、冷たい空気が流れ込んだ。

 まぶたのすき間から、ほんの少し外が見える。

 見上げると、崩れかけた塔が一本。

 その上に、古い鐘がぶら下がっていた。


 


「運び込め。傷つけるな、あの方が見ておられる」


 男の声がした。

 声は低く、どこか急いでいる。

 ナユは息を殺しながら、その声の主の足音を数えた。

 三人。

 重さのある歩き方。

 武器を持っている。


 袋を持つ手が乱暴に動く。

 ナユの体が石の床に置かれる。

 硬くて冷たい感触が伝わる。

 そのまま、袋の口が少し開いた。


 そこから見えたもの――

 塔の壁に刻まれた金色の糸の紋章。

 王城の紋とは違う。

 けれど、形はどこか似ていた。


 


「この子が本当に“奇跡の子”なのか?」


「知らん。ただ、あの人が確かめたいそうだ」


「王城にも知らせが行く。時間をかけるな」


 


 彼らの声が遠ざかる。

 鐘の音がまた、静かに響く。

 ゴォン……ゴォン……。

 まるで、塔そのものが息をしているみたいだった。


 ナユは小さく目を細める。

 袋のすき間から見えた天井には、細い光の筋が走っていた。

 金糸の紋が、鐘の音に合わせてかすかに光っている。


 ――これはただの紋じゃない。

 何か、魔法的な“仕掛け”だ。


 そう感じながらも、ナユは動かない。

 ここで下手に動けば、全てが終わる。

 今は観察。覚える事が大事。


 


 その時、風が吹いた。

 塔の上の鐘が小さく揺れ、

 カラン……と優しい音を立てた。


 ほんの一瞬、袋の中が明るくなった。

 ナユの胸元で、小さな光の粒がひとつ――ふっと灯る。


 それはまだ誰にも気づかれていない。

 けれど、その光こそが、救いの“はじまり”になるのだった。


 


「今日の記録:夜。塔の中に連れてこられた。鐘の音が響くたび、壁の金糸の紋が光る。まだ動けないけれど、少しずつ分かってきた……日報完了。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ