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神様の手違いで死んだ社畜おっさん、まずは自由を願い、次に明日を願う!TS転生し美少女に!最強チート《願い》は一日一回だけど万能です!異世界スローライフで世界も人も未来も救ってみせます!  作者: 兎深みどり
第六章《迷宮都市ナユタ編》

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第305話《夜集》

 王都の夜は、静かだった。

 高い城壁の内側に広がる石畳の街は灯りに満ち、宮城の塔には穏やかな風が流れている。

 だがその静けさを破るように、城門を叩く早馬の音が夜気を裂いた。


 伝令は馬から転げるように降り、封書を抱えたまま衛兵へ叫ぶ。


「迷宮都市ナユタより緊急報告!!至急、王へ届けよ!!」


 封蝋には、辺境伯の街紋が深く刻まれていた。

 衛兵の表情が変わり、そのまま内廷へと駆け込む。

 夜半にもかかわらず、会議室の灯が次々とともされた。



 長机の周囲に、公爵アンダルシアン、侯爵アーシェ、軍務卿、魔術院長、そして王立学園都市レリティアの学園長が並ぶ。

 王は封書を読み終え、静かに地図の上へ置いた。


「魔の森にて巨大な魔物が出現。探索班消息途絶。街級災害の恐れ……」


 重い沈黙が落ちる。


 王が顔を上げる。


「辺境伯……ナユは」


 軍務卿が答えた。


「一か月前、白竜ヴァイスと共に極星の旅団救援へ出発しております。人の足で一年の距離。竜での移動なら、現在は既に現地付近に到達している可能性があります。正確な位置は不明です」


 王は頷いた。


「近場にS級以上の冒険者は」


「S級『銀翼』アシュリーは王都滞在中ですが護衛任務で離脱不可。SS級『雷神』シグは西方都市、馬で一週間。他の上位者は所在確認中です」


「確認を続けろ。動ける者は全て動かす」


 王は地図の魔の森を指で押さえる。


「王国として動く。正規軍は第一陣を明朝出発できるよう準備。騎士団は即応部隊を編成。ギルドへ通達、周辺都市のA級とB級上位の招集を容認する。情報は必ず回せ。独断で突っ込むな」


 公爵アンダルシアンが低く言う。


「辺境伯殿の街は報連相が徹底されています。現地統制は維持されているでしょう」


 侯爵アーシェも頷く。


「主導権を乱せば逆に混乱を招きます」


 王は静かに同意した。


「王国は支援する。ただし遅れるな。間に合わぬ支援は支援ではない」


 軍務卿が続ける。


「飛竜騎士団は待機中です」


 王は即断した。


「出せ。二隊に分けろ。第一隊は迷宮都市ナユタへ急行し支援と状況確認。第二隊は辺境伯の進路を追跡し現地に向かえ。接触次第、報告を回せ」


「はっ」


 軍務卿が深く頭を下げる。


 王は最後に言った。


「迷宮都市ナユタは王国の要所だ。守りぬくぞ!」


 全員が一斉に頷いた。



 評議が終わり、人々が散っていく。

 王城の回廊は再び静けさを取り戻しつつあった。


 その奥、窓辺に一人の少女が立っている。


 アニシア・ユラ・アンダルシアン。

 アニスは遠い夜空を見つめていた。


 王都からは見えないはずの方角。

 それでも胸の奥がざわつく。


 魔の森で異変。

 迷宮都市ナユタが緊急態勢。


 そして――ナユは遠方。


 指先をそっと握る。


「……ナユ」


 小さく呟く。


「無事でいて」


 夜風が黒髪を揺らす。

 あの少女が簡単に倒れないことは知っている。

 それでも願わずにはいられなかった。


 遠く。

 見えない地平の向こうへ、もう一度だけ目を向ける。



 王都の夜は静かだった。


 だがその静けさの下で、王国はすでに動き始めていた。

 正規軍は準備に入り、騎士団は装備を整え、倉庫は開かれ、伝令が走る。


 そして飛竜騎士団が夜空へ飛び立つ。

 一隊は迷宮都市ナユタへ。

 一隊は遥か遠方、ナユの元へ。


 王国の歯車は、もう止まらない。

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