第27話《出立》
朝焼けが村を赤く染めていた。
広場には使者の馬車が待機し、鎧の兵がきびきびと動いている。
村人達は家の前に集まり、息を呑んで見送る準備をしていた。
「村を代表して王都へ行くのは……村長である儂とナユ達家族だ」
村長が改めて口にする。
長い白髭を整え、古い礼服を身に纏った姿は、普段よりもずっと威厳を帯びて見えた。
母はナユをしっかりと抱きしめ、父は腰の剣に手を添えて立つ。
村長の隣に並ぶその姿は、覚悟を決めた家族の背中だった。
――いやぁ、いよいよ王都編の幕開けか。内心わくわくが止まらないけど、俺は赤ん坊。
「あー」としか言えないのが残念すぎる。
観光したいなぁ!!
村人達の間から、次々と声が飛ぶ。
「気をつけて行ってきてください!」
「ナユちゃんに、神様のご加護がありますように!」
「村長、どうかお元気で!」
その声に母は涙をこらえ、父は力強く頷いた。
村長は杖をつきながらも背筋を伸ばし、皆に深く頭を下げる。
やがて、使者が手を掲げた。
「出立の時だ。王都へ向かう」
馬のいななき、車輪の軋む音。
村の土を蹴り、旅路が始まる。
ナユは馬車の窓から見える村を振り返った。
畑、家々、見慣れた風景。
それらが少しずつ遠ざかっていく。
――必ず戻ってくるさ。
もっと強くなって、もっと美少女になって。
そして、皆の未来を守る為に。
「今日の記録:王都へ向け出立。村長と両親と共に、使者の馬車に乗る。村が遠ざかり……いよいよ次の舞台が始まる……日報完了。」
「この子どうしたのかしら?遠い目してるわ、大丈夫よ王都での事が終わったらすぐに帰れるわ!」
ただの小旅行でした。




