第2話《誕生》
まぶしい光の後、気がつくと狭くてあたたかい場所にいた。
そして耳をつんざくような泣き声。
……自分の声だ。
「おぎゃー!?」
叫んでから気づく。
手が小さい。
足も短い。
視界もぼやけている。
「え、赤ちゃん!?俺、赤ちゃんになってるのか!?」
※当面は赤ちゃんなので「」内のセリフは全て赤ちゃん言葉です。
神様の声が頭の中に響いた。
『その通り。希望どおり、美少女として生まれ直したぞ』
「赤ん坊スタートかよ!普通は十六歳から冒険が始まるんじゃないの!?」
『細かい事は気にするな。美少女である事には変わりない』
「いやいやいや!社畜が赤ちゃんからやり直しって、効率悪すぎだろ!」
けれど、腕に抱きかかえられる温もりで、少し落ち着いた。
母親だろうか。やさしい手に包まれて、心があたたかくなる。
「……まあ、まずは状況整理だな。
①生まれ変わった。
②赤ちゃん。
③性別は……多分女の子。美少女らしい。
④親が健在。
……今の所、報告終わり!」
「この子の名前……どうする?」
父親らしき人が、弱々しい声で母親に尋ねる。
母親は少し考えてから、優しく微笑んだ。
「……“ナユ”。新しい世界で、自由に明日を生きてほしいから」
父親はその名を繰り返す。
「ナユ……いい名前だ」
その声を聞きながら、ナユは小さな手を伸ばした。
「(……なるほど。これから俺は“ナユ”として生きるのか。社畜上がりの美少女ナユ、誕生っと!)」
そう心の中でつぶやいた時、外の世界では嵐が吹き荒れていた。
勇者と魔王の戦争の爪痕はまだ残り、荒れ果てた世界の現実はすぐそこに迫っていた。




