表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
197/221

第193話《邂逅》

 校庭の中央に立つ“それ”は、ゆっくりと首を巡らせた。

 周囲の景色を確かめるように、魔力の流れをなぞるように。

 最後に、その視線がナユへと向けられる。


「……なるほど。まさか、こちらからではなく――お前の方から干渉してくるとはな、光の子よ」


 その一言で、空気の密度が変わった。

 魔力が重く沈み、地面がきしむような音を立てる。


 オルフェンが一歩、前へ出た。


「全員、下がれ。こいつは召喚獣じゃない!そして、強さも異次元レベルだ。お前は何者だ?」


 “それ”は、ゆっくりと視線だけをオルフェンへ向ける。


「我を“お前”と呼ぶか。人の身で、随分と軽い舌を持つ」


 次の瞬間。

 闇が、刃となって空を切り裂いた。


 オルフェンは反射的に結界を展開する。

 だが、闇の刃は結界ごと貫き、衝撃がそのまま吹き飛ばした。


 地を削り、石を砕き、オルフェンの身体は数十メートル先まで転がった。


 誰も、声を出せなかった。


 “それ”は、ゆっくりと腕を下ろす。


「安心しろ。殺さないでやった。此度はイレギュラー故な」


 その言葉が落ちた瞬間。

 静まり返った校庭の中で、ナユだけが一歩、前へ出た。


「あなた、かなり強いですね?」


「そうかも知れんな、最低でもお前が戦ったサバリネやザヴェルよりは強いな」


「あの二人の名前を知ってるという事は……」


 ナユの足元から、魔力が静かに溢れ出す。

 だが、それは暴力的なものではなかった。

 澄み切った光のように、柔らかく、けれど異様な密度を持って広がっていく。


「勝負するのです。わたしが勝ったら――契約するのです!」


 一瞬、空気が凍りついた。


「……契約?まさか我と召喚獣契約するつもりか!?」


「負けたら、諦めるのです」


 “それ”は、短く笑った。


「人の身で、我と契約を望むか」


「はいなのです。本気なのです」


 その瞬間。

 闇が、世界を塗り潰すように溢れ出した。


 地面が軋み、空が沈む。

 黒い魔力の奔流が、正面からナユへと叩きつけられる。


 だが――


 ナユは、退かなかった。

 防御も張らない。

 ただ、真正面から魔力を解放した。


「《レイバースト》!!!」


 白い光と深淵の闇が、正面から激突する。

 衝撃波が地面を抉り、校庭の外壁に亀裂が走る。


 ナユの口元が、わずかに緩んだ。


「……楽しいのです」


 嬉しそうに、はっきりと。


「やっぱり、強い方が召喚獣にするにはちょうどいいのです」


 光が、さらに濃くなる。

 魔力の密度が跳ね上がり、闇の奔流を真正面から押し返した。


 “それ”の瞳が、初めて大きく見開かれる。


「……押し返す、だと?」


 闇が裂かれ、光が踏み込む。

 ナユの一歩ごとに、地面が砕けていく。


 完全に――

 拮抗していた。


 いや、わずかに。

 本当にわずかに。


 ナユが、前に出ていた。


 “それ”は、喉の奥で低く笑う。


「なるほど……確かに、お前は“光の子”だ」


 次の瞬間。


「だが、ここまでだ……暗黒魔槍ダークネス・ランス!!!」


 闇が、更に圧縮され、形を変えた。


 槍。

 無数の黒槍が、空間ごと射出される。


身体強化魔法ブースト六重!!」


 ナユは、跳んだ。

 回避ではない。

 迎撃だった。


 掌に、光が集まる。


「《レイブレード》」


 一振り。

 一閃。


 白光が走り、黒槍は全て、寸分違わず両断された。


 破裂する闇。

 弾ける衝撃波。


 その中心で、ナユは――


 笑っていた。


「もっと来るのです。まだ本気じゃないの、分かるのです」


 “それ”の口元が、僅かに歪む。


「……良い」


 闇が、再びうねり始める。

 今度は先ほどとは比べものにならない密度で。


「ならば――“本気”で応じよう」


 その瞬間。

 校庭全体が、完全に戦場へと変わった。


 一人の“光の子”と。

 一人の“世界の深淵”。


 契約を賭けた戦いが、ついに――

 本格的に、幕を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ