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第191話《召喚》

 朝の陽が差し込む教室は、久しぶりにざわめいていた。

 机に座ったナユは小さく伸びをして、眠たげにまばたきをした。


(……今日から授業が本格的に始まるのです)


 そんな静かな気合いを入れていると、廊下の扉が音もなく開いた。


 黒衣の教師が入ってきた。

 足音は吸い込まれるように静かで、空気が一瞬ひやりとする。


 魔法科の新任教師――

 オルフェン・クロウ=ヴァルド。


 教室のざわめきがすっと消える。


「座っていろ。挨拶は不要だ」


 低く柔らかな声。

 けれど、どこか鋭さが混じる。


(……偏屈そうなのです)


 黒衣の裾が揺れ、教壇に立つと、オルフェンは淡々と話し始めた。


「私は今日から魔法科だけでなく、他科の基礎魔法も担当する。前任が学園を去った為だ。理由は……知っている者も多いだろう」


 空気がわずかに重くなる。

 親善試合で暴走し、禁呪を使おうとした魔法科教師――親善試合に来た皆が知っている。


 オルフェンは続けた。


「無駄話は嫌いだ。本題に入る。今日の講義は“召喚魔術”の概論だ。実技は後日行う」


 チョークが黒板を叩く。


「召喚とは、本来この世界に存在する生物を術者のもとへ呼び出し、一時的に契約を結ぶ技術だ」


 黒板には、精霊・魔獣・魔法生物などの簡易図が描かれていく。


「しかし――」


 チョークが止まった。


「世界の“外”から呼び出す術が存在する。古来より禁術とされてきた類いだ」


 教室が静かになる。


「異界召喚は、常識を超える魔力を必要とする。術式が不完全なら、術者の命を奪い、周囲を巻き込む。また、世界そのものに“穴”を穿つ危険がある」


(……こ、怖いのです)


 ナユは背筋をこわばらせた。

 けれど心のどこかで、小さく思う。


(ラノベの勇者召喚もの……だいたい大量の生贄とか、世界に負荷がかかるとか書いてあるのです。やっぱり……あれは、ヤバいのですね)


 オルフェンは黒板の前で腕を組む。


「異界召喚を行う国や組織は、今の世界にほとんど存在しないと思われる。通常は禁術として封じられているからな。理由は簡単だ。成功しても、失われるものの方が大きい」


 チョークを置いた。


「――以上が、召喚魔術の基礎の基礎だ。次回は“召喚陣”の扱いに入る。魔力量を誤れば危険だ。自覚しておけ」


(……楽しみなのです!!!召喚!!!バハムートとか呼べるかな!?)


 淡々とした説明だったが、その内容は重かったが、ナユは内心テンションが凄く上がっていた。


 オルフェンは教室を見回す。


「質問は受け付けない。各自、今日の内容を記録しておけ」


 そう言って、黒衣の背中は静かに教室を出ていった。


 残された空気はひんやりしていて、誰もすぐには動けなかった。


(……オルフェン先生、恐いけど……教え方は分かりやすいのです)


 ナユは胸の前で小さく拳を握った。


(次の授業……頑張るのです)


「今日の記録:新しい魔法科のオルフェン先生の授業が始まったのです。召喚魔術はとても危険で、特に異界からの召喚は絶対にやってはいけないものらしいのです。バハムート呼びたいのです!次の授業は召喚陣の実技みたいなのです!楽しみなのです!日報完了。」

バハムートはFF基準です!

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