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第188話《委任》

今年最後の投稿です!

明日も投稿します!良かったら読んでね!

フォロー等今後も応援よろしくお願いします!

 王国中から集まったギルド代表、職人達、冒険者達が次々と配置につき、深淵アビスの外縁は、もはやひとつの巨大な“工事都市”となっていた。


 荷馬車の音、槌の音、魔道具の起動音、人々の声。

 一日前まで森だった場所が、まるで新しい王都の縮図のように賑わっている。


(……すごいのです。これほどまでに変化するとは……最高なのです!!)


 誇らしさと、少しの不安が胸をくすぐる。


「子爵殿!」


 アンダルシアン公爵が大きく手を振って歩み寄ってきた。


「街の基礎区画については、こちらで図面をまとめた。冒険者ギルド、商人ギルド、職人ギルド……全員が今すぐ作業に入れる」


「ありがとうございますなのです!」


 ナユが頭を下げると、公爵は穏やかに頷いた。


「だが──子爵殿。ここでひとつ確認したいことがある」


「確認……なのです?」


 すぐ横にアーシェ侯爵も立ち、静かな声で続けた。


「今回の街づくりは、国を揺るがす規模の大事業だ。そして……子爵殿は、まだ“学生”であろう?」


(……忘れてたのです)


 ナユは本当に“つい”忘れていた。

 街づくりが楽しすぎて、胸が躍りすぎて。


 アンダルシアン公爵は優しく笑った。


「子爵殿。学業は何より大切だ。未来を作る者が、学ぶことを疎かにしてはならぬ」


「……はいなのです」


「街は作れる。金も、人も、技術も集まった。だが──“指揮”をすべて子爵殿が担う必要はない」


 アーシェ侯爵も頷く。


「子爵殿が成人となる十二歳までの間は、我々公爵家・侯爵家が中心となり、運営の舵を取ろう。子爵殿の“方針”に沿って、街を形にしていく」


「……わたしは……休みの日だけ、来るのです?」


「それでよい」


 アンダルシアン公爵は深くうなずいた。


「週に一度、あるいは二度。子爵殿が来られる日に“進行会議”を開こう。その時に意見を述べ、街の方向性だけ示してくだされば十分だ」


「……ぅ……」


 胸の奥がちくり、とした。


(……わたし……全部やりたいのです……)


 でも──それは“わがまま”だ。


 街には、多くの命が関わる。

 その道を誤れば、誰かが困る。


 ゆっくりと息を吸い、ナユは顔を上げた。


「……分かったのです。わたしは……みんなの為にも……学校に行って、学んで……もっと“良い街の主”になれるよう、頑張るのです」


 アンダルシアン公爵がほほえむ。


「それでこそ、アニシアの親友だ」


 アーシェ侯爵も笑った。


「マリエルも、きっと喜ぶだろう」


 その時。


「子爵様ーッ!」


 元気な声が響く。


 バルゴが豪快に手を振りながら近づいてきた。

 その後ろには、職人ギルドの面々、商人ギルド、教会、冒険者達がずらり。


「街の総指揮を全部子爵様がやる必要はねぇ!俺達は俺達で、好きに暴れてりゃいい!任せとけ!」


 商人ギルドマスターが腹を揺らして笑う。


「資材の在庫はすべて把握済みだ!子爵様が来られなくても、街づくりは進むぞ!」


 職人代表のグランが腕を組む。


「子爵様の図面だけあればいい。あとは俺らが黙って形にする」


 教会の司祭が優しく告げる。


「街を支えるのは、人々の祈りと努力。子爵様は“未来を学ぶ”ことに専念してください」


 みんなが……笑っていた。


(……あぁ……わたし……一人じゃなかったのです)


 胸がじんわり熱くなり、ナユは小さく、でも力強く頷いた。


「……みんな、お願いするのです!」


「「「任せろ!!!」」」


 深淵アビス周辺に、大きな声が響き渡った。


 ◆


 そして、もう一つ。

 ナユには“自分でやりたいこと”がある。


「あ!でも!……わたしのお家は……自分で作りたいのです!」


 その言葉に、グランの目が輝いた。


「ならば子爵様……俺達と一緒に“最高の家”を作ろう。深淵アビスの上に建つ塔──そのてっぺんに住む家だ。世界に一つだけのな。それはきっと深淵アビスと街を照らす太陽になるかもな!」


「楽しみなのです!」


(……街はみんなに任せる。でも……“家”はわたしも作りたいのです)


 街づくりの大工事と、ナユの“塔の家”の建設が、同時に始まっていく。


 ◆


「今日の記録:街づくりは……公爵さん達が指揮してくれる事になったのです。わたしは学校に行って、週に一度、進み具合を見に来るのです。でも……お家は自分で作るのです。とっても楽しみなのです……日報完了。」

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