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第185話《始動》

 会議室に並べられた百本のエリクサーが、光を反射して金の海のように輝いていた。

 ざわめきも怒号も、すでに消え去っている。


 ──圧倒的な静寂。


 その静寂を破ったのは、重厚な椅子が軋む低い音だった。


「……やはり。子爵殿は“本物”だな」


 ゆっくり立ち上がったのはアンダルシアン公爵。

 アニシアの父であり、王国最大級の領地を治める名門の長だ。


 ナユは気づいたようにぱっと振り向く。


「アニシアのお父さん!」


 アンダルシアン公爵は微笑み、深く頭を下げた。


「娘アニシアより……“友達の力になってほしい”という願いを受けている。ゆえに、この都市計画──全面的に協力しよう」


 会議室が揺れた。


「あ、アンダルシアン公爵様自ら……?」

「こんな大事業に……本気で……!」


 アンダルシアン公爵は毅然と告げる。


「子爵殿ほどの才気と胆力を持つ者はそう多くない。六歳という年齢に惑わされてはならん。アニシアが惚れ込むのも……よく分かる」


「ほ、惚れ込む……?」


 ナユが首を傾ける横で、参列者の数人が咳払いして話を逸らした。


 続いて、落ち着いた声が響く。


「我も、この事業に賛成だ」


 手を挙げたのはアーシェ侯爵。

 マリエルの父であり、以前からナユ個人とも面識がある人物だ。


「マリエルがいつも言っていた。“ナユさんは、とても善く、強く、優しいお方です”とな」


「マリエルさん……!」


「王国の未来の為にも、この計画……乗らぬ理由はない。我が領からも職人・建材・資金全て、必要な限り提供しよう」


 会議室がざわつき、やがて──


 ドン、と王が椅子の肘掛けを叩いた。


「アンダルシアン公爵とアーシェ侯爵が動くのならば……もはや議論の余地はないな!」


 王は大きく頷き、全員を見渡す。


「これより──子爵ナユ=ハルメリアの“巨大都市建設計画”を、正式国家事業として認定する!!」


 会議室が爆発したように沸いた。


「ま、まさか本当に……!」

「国家を超える規模では……!?」

「しかしエリクサー百本なら……何でも出来る……!」


 その渦の中心で、セバスチャンは静かに胸へ手を置く。


(……ナユ様。ついに……ここまで)


 その隣でナユは、いつもの調子で言った。


「では……さっそく始めるのです!」


「今からですか!?」


 書記官、ギルドマスターたちが総崩れになる。


 ナユは迷いなく言い切った。


「みんながあそこで待っているのです。わたし達も……動くのですよ!」


 アンダルシアン公爵が豪快に笑う。


「よかろう!ではまず、冒険者ギルド・商人ギルド・職人ギルド全ての協力隊を編成する!人員は王都と周辺領地より募るとしよう!」


 アーシェ侯爵も続く。


「建築材料と魔道具の供給経路は、すべて当家が整えよう。それと……ナユ殿の提案した“移動用小型鉄道”の研究班も立ち上げよう」


 冒険者ギルドマスターが立ち上がる。


「魔物討伐、調査隊……全て我々が担う!あのアビスの周囲だ、実力派を揃えよう!」


 そして──商人ギルドマスターが手を挙げる。


「では……資金面は我々で全額引き受けよう!子爵様のエリクサーがあれば、十分すぎるほどだがな!」


「わ、わたし……そんなに出してないのですけど……」


「百本は“そんなに”どころではない!!」


 会議室が再び揺れた。


 そしてその日の決定。


◆ ナユ主導の巨大都市計画(正式名称は後日決定)を国家事業として制作開始

◆ 各ギルドより大型協力隊が編成

◆ 王都と周辺領地から建築人員の派遣

◆ ナユの街は「南方新都計画」として国中へ布告


 会議が終わり、重鎮達が退出していく中──

 ナユはそっと深呼吸した。


(……これで、街づくりは“本当に”始まるのです)


 その横で、セバスチャンが静かに微笑む。


「ナユ様。これより、あの街は……世界を変えるのでしょうか?」


「世界が変わるかは……分からないのです。でも……」


 ナユは胸を張った。


「みんなが笑って暮らせる街にするのです!」


「今日の記録:アリシアのお父さんとマリエルさんのお父さんが協力してくれる事になったのです。会議で色んなギルドが参加して、街づくりが正式に国の事業になったのです。エリクサーは……やっぱり強いのです……まだ千本以上ありますが言わない方が良いようなのです。……日報完了。」

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