第12話:目覚めの兆し
●主人公:アーヤ・アーデン
彼女はアルディナ王国の王都アルディナで、神殿の職務にあたる神官。以前は巫女だったが、その力を見込まれ神職試験を経て神官となった。
夫と子供二人を家族とし、仕事と家庭を両立するキャリアウーマン。清楚で真面目だが、心に秘めた好奇心と、誰にも言えない夢がある33歳である。
太陽の神子として覚醒し、世界を作り変えるために、神が作り出した六魔王を導く宿命を持つ。
●グレイ・リヴァント
神殿騎士団の副長を務める高身長のイケメン38歳。
筋肉質で短く整えられた黒髪は、鋭い青い目の視線を際立たせる。
戦闘では冷静沈着で真面目な性格からは想像できない強さと熱さを発揮する。神殿では最も頼れる存在。
アルディナの伝説の剣士の末裔。
●ミラ・フィローネ
アーヤが目をかけている後輩巫女。快活で素直な性格であり、神殿内の人間関係にも明るい。アーヤを姉のように慕う。巫女としての霊的な力や知識は持っているが、まだ未熟で成長過程。ショートの鮮やか赤い髪がカワイイ22歳。
風の一族との関係がありそう。
●エリス
王都の西に位置する街マクホカタの山の麓リアケーアにすむネコの獣族。白毛に赤茶の耳、しっぽの先も赤茶色。
明るい性格でいつもおちゃらけているが、特別な獣族にのみ与えられる能力〈未来視〉を持つ。青氷色の左目と金色の右目、能力の違うオッドアイが獣族の未来を見る。好物はフィッシュバーガー。
光はゆらめき、文字や図形が宙に漂うように動いた。
円卓の上で輝く古書の一冊が、まるで意思を持ったかのように光を強める。
「アーヤ、しっかり掴んでいろ」
グレイの声にアーヤは我に返った。
「は、はい!」
手を伸ばすと、ページの光が指先を暖かく包み込み、振動が全身に伝わる。
「くっ!抑えが……効か…ない…!」
その瞬間、書物から断片的な映像が浮かび上がった。
暗い洞窟、岩陰に潜む巨大な影、そして地面から光が立ち上る光景。
まるで地底世界そのものが呼吸しているかのようだった。
「……こ、これが、目覚めの兆し……」
アーヤの声は、震え混じりだった。
しかし瞳は確かに光を求めていた。
「兆しだけではありません。契約が、今、少しずつ動き始めています」
イアンは静かに告げ、淡い灰色の瞳でアーヤを見つめた。
その視線は、未来を透かすように深く鋭かった。
「この塔に眠る知識は、目覚めの本質を伝えています。触れる者には力を、そして試練をもたらす……」
「し、試練……!」
その言葉と共に、広間全体の魔導ランプが一斉に光を強めた。
床や壁を伝う振動も、先ほどより大きく、低く響く。
空気がざわめき、髪を揺らす微風が生まれた。
「地脈の……活性化が止まらない」
グレイは足元を安定させるかのように低く構える。
武器に手をかけるわけでもなく、ただ身構えるだけで、彼の気配は警戒を周囲に伝えていた。
「ちょ、ちょっと!立ってられない……」
ミラが揺れに対応できないでふらつく。
目の前の光景は、昼間の学術都市の静けさからは想像もつかない。
だが、アーヤはどこか心の奥底で、恐怖よりも好奇心が勝っている自分に気付く。
「……怖いわ、でも……」
アーヤは深く息を吸い込んだ。
胸の奥で、何かがざわめく。
まるで自分の血脈や意識の奥底に眠る力が目覚めを待っているかのように。
「今こそ、契約と地脈の真実を見極めるときです」
イアンは手をかざすと、円卓の書物が一斉に光を増し、文字や紋章が宙に浮かび上がった。
その光景は、広間の天井にまで届き、星空のように散りばめられる。
「これは……まさか……」
アーヤの声が震える。
断片的に浮かぶ映像は、地底での影の存在を示していた。
黒く巨大な輪郭、そして光に向かう何者かの手。
「契約は……生きている……」
アーヤは思わず口をついた。
書物の光と振動が、自分の感覚と一体化するように伝わってくる。
「落ち着いてください。これは試練の一部です」
イアンの声が柔らかく響く。
しかし、そこに恐怖を和らげるだけの余裕はなかった。
振動は次第に強まり、床が微かに軋む音すら聞こえる。
「見て……この反応、単なる兆しを超えているわ」
「くそっ!いったい何が……!」
グレイは円卓を囲む書物を睨みつけた。
影の中に潜む危険が、今、少しずつ輪郭を現し始めている。
「……やるしかないのね」
アーヤの目に覚悟が宿る。
胸の奥のざわめきが、一瞬、力の奔流に変わったように感じた。
契約と地脈が共鳴し、彼女自身を目覚めへと誘うように。
「今夜は長い夜になりそうだ……覚悟してください……」
イアンの言葉は静かだったが、広間の光と振動、書物の反応がすべてを物語っていた。
地底の目覚めは、もう間近なのだ。
アーヤはもう一度深呼吸し、視線を前に固定した。
ミラも震えながらも隣に立ち、グレイは静かに剣を握る。
夜は深まる。
塔の奥で、知識と力、そして目覚めの兆しが彼らを包み込む。
静かでありながらも確実に迫る異変。
彼らの試練の夜は、これから本格的に幕を開けるのだった。
「アルディナの魔力 第二章 岩窟の契約」お読みいただきありがとうございます。
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Z.P.ILY




