第4話:謎の伝言
●主人公:アーヤ・アーデン
彼女はアルディナ王国の王都アルディナで、神殿の職務にあたる神官。以前は巫女だったが、その力を見込まれ神職試験を経て神官となった。
夫と子供二人を家族とし、仕事と家庭を両立するキャリアウーマン。清楚で真面目だが、心に秘めた好奇心と、誰にも言えない夢がある33歳である。
太陽の神子として覚醒し、世界を作り変えるために、神が作り出した六魔王を導く宿命を持つ。
●グレイ・リヴァント
神殿騎士団の副長を務める高身長のイケメン38歳。
筋肉質で短く整えられた黒髪は、鋭い青い目の視線を際立たせる。
戦闘では冷静沈着で真面目な性格からは想像できない強さと熱さを発揮する。神殿では最も頼れる存在。
アルディナの伝説の剣士の末裔。
●ミラ・フィローネ
アーヤが目をかけている後輩巫女。快活で素直な性格であり、神殿内の人間関係にも明るい。アーヤを姉のように慕う。巫女としての霊的な力や知識は持っているが、まだ未熟で成長過程。ショートの鮮やか赤い髪がカワイイ22歳。
風の一族との関係がありそう。
●エリス
王都の西に位置する街マクホカタの山の麓リアケーアにすむネコの獣族。白毛に赤茶の耳、しっぽの先も赤茶色。
明るい性格でいつもおちゃらけているが、特別な獣族にのみ与えられる能力〈未来視〉を持つ。青氷色の左目と金色の右目、能力の違うオッドアイが獣族の未来を見る。好物はフィッシュバーガー。
朝の光がステンドグラスを通して大理石の床に差し込む。
王城からもどったグレイとミラは、柔らかな光の中、神殿の静かな回廊を歩いていた。
「副長……やっぱり床、少し揺れてますよね?」
ミラが小声でつぶやく。
巻物を握りしめる手に力が入っている。
「あぁ…微振動だが確かに揺れているな。…はやく原因をつかまないと…」
「地下で何が起こってるのか…ですか?」
ミラは首を傾げる。
「王城でも微細な揺れが報告されていたってことは、ここだけじゃないかもしれない。広範囲の可能性が高いな…」
グレイは指先で大理石の床に触れ、かすかな震えを確かめる。
微かに伝わる振動が、地下や遠くのどこかで何かが動いていると感じさせていた。
グレイの視線は祭壇の奥や柱の影に移る。
光と影の合間に、何か異質な気配を感じ取っていた。
足音は軽く響き、普段は落ち着く神殿の空気が、今日はどこかざわついているように感じられる。
「……なんだか……怖いです。私、こういうの苦手です」
思わず顔をしかめるミラに、グレイは軽く息をつく。
「怖がる必要はない。落ち着いて観察すれば、必ず手がかりは見つかる」
グレイのその冷静な判断と微笑みが、ミラを安心させる。
「でも、地下からの力って……まさか怪物とかじゃないですよね?」
不安そうに小声で尋ねるミラ。
「可能性はないともいえんな。怪物じゃないことを祈ろう……」
グレイは慎重に言葉を選び、微振動を感じながら回廊を進む。
「まさか……封印が……とかじゃないですよね?」
ミラは顔を上げ、真剣な目でグレイを見る。
「いや、封印とは違う。記録を見る限り、封印が破れた時の感覚はもっと鋭く、重く、危険が直接こちらに迫ってくる感覚だ」
グレイは足元の微振動を確かめながら言う。
「ふぅ、よかった。封印はもうゴメンです。」
ミラはほっと息をつき、少し肩の力を抜いた。
「でも、この微かな力の動き……これだけ続くのは珍しい」
グレイは祭壇の周囲を歩きながら視線を巡らせる。祈りを捧げる参拝者たちの平穏な表情が、余計に異変の影を際立たせる。
「副長、こういうときって、どう動くのが一番安全なんですかね?」
ミラが小さく尋ねる。
「そうだな……まずは観察。そして手がかりを得ること。あとは何が起こってもいいように準備を怠らないこと……かな」
グレイは視線を柱の影に走らせながら答える。
「……うぅ、緊張します」
ミラは巻物を抱きしめる。
二人は回廊を進むうち、神殿奥の資料室に到着する。
部屋の空気は少し重く、石造りの床が微かにきしむ。
「入るぞ……」
グレイは木製の扉に手をかけ、ゆっくりと開く。軋む音とともにゆっくりと扉が開くと、埃っぽい空気と、古い香料の匂いが混ざる空間が広がった。
棚には古文書や年季の入った箱が並ぶ。
「わ……すごい量の資料ですね」
ミラは目を丸くしながら見渡す。
「王城の資料もすごかったが、やはりここには敵わん」
グレイは慎重に棚を調べていき、3つほと進んだ先の足元にあるひとつの木箱が目についた。
「ん?……これは……」
その木箱は、年季を感じさせないほどの状態で重厚感があり、その隙間からは小さく紫色の光がもれていた。
グレイはゆっくりとその箱の蓋を開けた。
古びた箱には鍵もかかっておらず、簡単に開けることができた。
「な、なんだこれは!」
グレイが開けた箱を覗き込むと、そこにはキレイな光沢のある鉱石が入っていた。
その鉱石は、まるで意思を持っているかのように眩いばかりの光を放っていた。
「副長!」
「離れろ!危険だ!」
グレイとミラは、咄嗟に後ろに下がり警戒を強めた。
「あの石……生きてるんですか!?」
「ま、まさか……そんなはずは……」
「あ、あぁぁ……いやいやいや、これは絶対やばいやつですよ!」
と、その時、石から放たれる光がユラユラと揺れ動き、その中に人のような形が浮かび上がる。
何か焦点の合わない映像を見ているようだか、その中で男が何やら喋りだした。
「で、でたーーーーーーっ!」
ミラが必要以上に驚く。
「だ、誰だ!」
グレイが姿勢を低くし、身構えて叫ぶ。
(……大…地を…封…印すべき……とき…が…く……る……)
「……大地の封印だと?」
(…テ……ラ…ノ…ク……ス…へ行……け……)
「……テラノクス?…」
その瞬間、男は光とともに消えた。
「お、おい!ちょっと…待て!」
「いま、封印って言いました?……封印!また封印じゃないですか!」
ミラは月の魔王のとき以来、封印と言う言葉に敏感だった。
「ひぃぃぃ……もう封印は勘弁してほしいですぅ……」
「…テラノクス…?…きいたことあるような……ないような…」
グレイは、箱に入った石をそっと取り出した。
少し温かい感じが残る。
ミラは、その石があった箱の底に一枚の紙があるのを見つけた。
「これ!何かしら?」
古くなった紙は二つ折りになり、劣化が進み周囲が変色していたが、開くと中には何やら地図のようなものが描いてあった。
「どこかの地図?」
「どれ、見せてみろ」
「古代語で書いてあるな……読めん……」
「古代語なら……アーヤ様に頼めば読んでもらえますよ!」
「そうだな。一旦部屋に戻ってアーヤを呼ぶか」
二人は、箱の中にあった石と地図を持って資料室を後にした。
微振動は依然として二人の足元で感じられる。
神殿の外、王都の街並みはいつも通りの朝を迎えていたが、地下や遠くのどこかで、確かに何かが動き始めていた。
「アルディナの魔力 第二章 岩窟の契約」お読みいただきありがとうございます。
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Z.P.ILY




