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アルディナの魔力  作者: Z.P.ILY
第二章 岩窟の契約

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第3話:王城の記録

●主人公:アーヤ・アーデン

 彼女はアルディナ王国の王都アルディナで、神殿の職務にあたる神官。以前は巫女だったが、その力を見込まれ神職試験を経て神官となった。

 夫と子供二人を家族とし、仕事と家庭を両立するキャリアウーマン。清楚で真面目だが、心に秘めた好奇心と、誰にも言えない夢がある33歳である。

 太陽の神子として覚醒し、世界を作り変えるために、神が作り出した六魔王を導く宿命を持つ。


●グレイ・リヴァント

 神殿騎士団の副長を務める高身長のイケメン38歳。

 筋肉質で短く整えられた黒髪は、鋭い青い目の視線を際立たせる。

 戦闘では冷静沈着で真面目な性格からは想像できない強さと熱さを発揮する。神殿では最も頼れる存在。

 アルディナの伝説の剣士の末裔。


●ミラ・フィローネ

 アーヤが目をかけている後輩巫女。快活で素直な性格であり、神殿内の人間関係にも明るい。アーヤを姉のように慕う。巫女としての霊的な力や知識は持っているが、まだ未熟で成長過程。ショートの鮮やか赤い髪がカワイイ22歳。

 風の一族との関係がありそう。


●エリス

 王都の西に位置する街マクホカタの山の麓リアケーアにすむネコの獣族。白毛に赤茶の耳、しっぽの先も赤茶色。

 明るい性格でいつもおちゃらけているが、特別な獣族にのみ与えられる能力〈未来視〉を持つ。青氷色の左目と金色の右目、能力の違うオッドアイが獣族の未来を見る。好物はフィッシュバーガー。



 ーー王都アルディナ 王城


 日差しが高く昇る中、神殿を後にしたグレイとミラは、石畳の広がる王都の通りを歩いていた。

 通りの喧騒はいつも通りだが、二人の心中は平穏ではなかった。


 「やはり、あの微振動は単なる地盤の揺れではないようだな」


 グレイは眉をひそめ、歩調を早める。


 「そうですね……何かが、地中深くで動いている……そんな感じがします…」


 ミラも不安げに空を見上げた。


 昼の光の下でも、微かにざわつく風が二人の背後をかすめる。


 二人の目的地は王城。

 城の中に駐屯する王都警護隊である。


 神殿に届いた情報では、最近、城の古文書庫で「異常な地底現象」に関する古い記録が見つかっているという。


 王都警護隊の隊長は、グレイの旧知であり、事情を説明すれば手がかりを提示してくれるはずだった。


 城門をくぐると、警備兵たちが整列し、昼の巡回に備えている。


 「副長殿、参りましたか」


 「うむ、隊長はいるか?」


 「はい、奥の控え室にてお待ちです」


 グレイはミラに軽くうなずき、階段を上って控え室へと向かった。



 控え室には、熟練の騎士の風格を漂わせる男が座っていた。王都警護隊の隊長、ルディアスである。


 「グレイ、久しぶりだな。顔色が冴えぬようだが、何かあったのか?」


 「隊長、先日の件、何か情報をお持ちでしたらと思って参りました。また神殿でも異変の兆しを感じておりまして……」


 「グレイ、堅苦しいな。そんなに賢まるなよ。くすぐったいわ」


 「そ、そうか……」


 「クスッ!」


 ミラがたまらず吹き出す。


 「はっはっは、ほんと、お前は昔から真面目だからな」


 ルディアスはグレイの性格を知り尽くしているようだ。

 おもむろに机の上の巻物をつかむと、雑な仕草でグレイに差し出す。


 「ほらよ!最近、城の地下倉庫で異常な振動が記録されている。お前の言う『微細な揺れ』と同じ性質かもしれない」


 グレイは巻物を広げ、注意深く文字を追う。

 そこには、数十年前に記録された地底の空洞と、不可解な地鳴りの事例が細かく記されていた。


 「これによると、王都の地下には古代の遺跡がいくつも存在するらしい。近年の発掘で、微弱ながら異常なエネルギーの痕跡が検出されている」


 ミラはその情報に息を飲む。


 「地下の遺跡……それが今回の振動の原因かもしれないんですね」


 ルディアスは少し表情を曇らせ、グレイを真剣な目で見据えた。


 「お前が心配していた通り、単なる地震ではない。これは、かつて封印された力の名残……あるいは、封印を破ろうとする何者かの手によるものかもしれん」


 グレイの手が巻物の上で止まる。

 古文書の文字は、冷たく光るように感じられた。


 「ルディアス……もし本当に封印の力が動き出しているとすれば、我々は早急に原因を突き止める必要がある」


 ルディアスは深く息をつき、グレイから巻物を受け取り、丸め直した。


 「お前たちの神殿での観測は正しいようだな。オレも独自に調査を進める。必要な手は尽くすつもりだ」


 ミラは少し顔を上げ、問いかける。


 「では、地下倉庫や資料室に直接入れるのですか?」


 「うむ、君たちは神殿の者として優先的に調査可能だ。私の命令で制限は解除しておこう」



 王城の奥、地下への階段を降りると、ひんやりとした空気が二人を包む。

 微かに湿った土の匂いと、古い石の匂いが混ざり合い、まるで別世界に足を踏み入れたようだった。


 「……やはり、ここでも地面が微かに震えている」

 

 グレイは手を伸ばし、石の壁に指先を押し当てる。

 小さな振動が指先から伝わり、地下にらら眠る力の存在を感じさせた。


 ミラも壁に手を触れ、耳を澄ませる。


 「たしかに震えてますね……まるで、地下の深い場所から何かで叩いてるような……」


 二人は互いに目を合わせ、言葉少なに進む。

 地下倉庫の奥、資料室へと続く扉の前で立ち止まる。


 「ここに何か手がかりになるようなものが……」


 グレイが扉に手をかけると、かすかな軋みを伴って開いた。

 中には埃をかぶった武器や鎧、錆びた金属の箱や書物が並んでいた。


 「……この中に、今回の振動の原因が書かれているかもしれません」


 ミラは古びた本を一冊見つけた。


 「前にアーヤ様と神殿の書庫に入ったときも、古い本に封印のことが書いてありました」


 「そうだったな。まずは文献……からか」


 埃とカビの匂いを吸い込みながら、グレイは慎重に書物を開く。


 (ーー大地紀源録ーー)


 その頁には、過去のアルディナ王国誕生の歴史、そしてかつてその大地に封印された魔王領エージェラの力の記録が記されていた。


 「……やはり、封印の力なのか……」


 「……封印……そんな……この前閉じ込めたばかりなのに……」


 ミラは度重なる異変に不安が募る。


 グレイの声が低く響く。


 「この異変、やはりただ事ではなさそうだな……」


 微かな振動は、王城の石の床を通じて二人に伝わる。

 まるで地下深くで、眠れる力が目を覚まし始めているかのようだった。


 「これを借りていく……神殿に戻ってもっと情報を集める必要があるな。すぐに戻るぞ!」


 グレイは古文書とひとつの箱を抱え、地下倉庫の闇を後にした。

 ミラも一緒に、城の階段を上り、昼光の差す地上へ戻る。


 その時、二人の背後で微かに、地底から伝わる振動が強くなる。


 (……これは、ただの前触れかもしれない)


 グレイはそう感じながら、王都の日常がたんたんと続く街を見下ろした。


 地下深くに潜む大地の魔王。

 その世界を揺るがす序章が静かに、確実に動き出しているのだった。

「アルディナの魔力 第一章 紅月の封印」お読みいただきありがとうございます。

 今後の展開や、執筆における参考とさせていただきますので、是非、評価をお願いいたします。

 誤字や脱字がありましたら、遠慮なくフォームよりご報告ください。

 また、本作品へのご意見やご要望につきましては、メッセージ等で随時受け付けております。皆様からの忌憚のないご意見等をお待ちしております。

                   Z.P.ILY

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