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アルディナの魔力  作者: Z.P.ILY
第一章 紅月の封印

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第48話:一閃の光

 瘴気の嵐が巻き起こる戦場で、魔王カザズレイキは攻撃を強めていた。


 「ふぁっはっはっはっ……見るがよい!魔王の力を!」


 漆黒の翼を広げ、碧く光る眼が三人を射抜く。


 その息遣いとともに口から瘴気が漏れ、足が地面を叩きつけるたびに瓦礫が飛び散る。


 グレイ、アーヤ、ツバキの三人は、全力で防御しながらも押され続けていた。


 「や、ヤバい……ぞ!」


 「このままじゃヤられる!」


 グレイとアーヤの声が震える。


 瘴気が魔力をかき消すように渦巻き、呪文を何度も唱えようとする指先が震える。 


 「くっ……これが魔王の力……!」


 ツバキも剣を握りしめ、肩で息を吐きながら、カザズレイキの動きを見極めようと目を凝らす。


 その時、戦場の片隅から新たな気配が差し込む。銀色に輝く一閃の光がそのスピード感を増している。


 「カイ……!」


 ツバキの声が響く。


 小柄ながらも確かな能力を持つ少年…カイ。

 エリスの護衛から離れ、カザズレイキの前に立ちはだかる。


 「ボクも戦う!!」


 カイが発するその言葉に、三人の闘気が甦る。


 「よしっ……もう一度……」


 「カイ!あなたって子は……」

 

 「わたしも、まだできるわ!」


 アーヤの胸に小さな光が灯る。絶望の中で、まだ希望は消えていないと感じた。


 カイを加えた四人は、グレイのもとへ集結する。


 「カイ、お前はまだ体力がある。オレたちがお前を援護するから、魔王の急所を狙え!」


 「ハイ!わかりました!」


 「アーヤ!ツバキ!カイを全力で援護するぞ!」


 「ハイ!」


 二人が同時に応える。


 「オレは右手に回る、二人は左から頼む!」


 グレイはそう言った途端、カザズレイキの右手に大きく回り込む。


 「わたしたちも!」


 ツバキが一瞬でカザズレイキの左側に移動し、アーヤがその後を続く。

 

 「ふっ……小魚が一匹増えようと同じこと……この手で吹き飛ばしてくれるわ!」


 魔王カザズレイキはその兆しを許さない。

 翼を羽ばたかせ、瘴気の渦で三人とカイを脅かす。


 「準備はいいか!」


 グレイの号令ととともに、アーヤの呪文がツバキの剣に力を加える。


 グレイは黄色のカプセルを割り、聖剣を金色の光に変える。


 「今だ!瘴気が消える!」

 

 エリスが絶妙なタイミングを見つける。

 

 「ここだぁーー!!」  


 グレイは金色に染まった剣を上段に構え、ガザズレイキ目掛けて渾身の一撃を放った。

 

 ツバキもグレイの合図とともに力を振り絞り、超速で切り込む。


 二人の同時攻撃がカザズレイキを捕らえたかと思った瞬間、魔王の闘気が爆発した。


 「う、うわぁぁぁぁーーー!」


 グレイとツバキは押し返され、大きく吹き飛ばされた。


 「ふぁっはっはっ……こんなものかぁ!」


 魔王は高く笑う。

 その声に含まれる余裕と冷酷さが、戦場の空気をさらに重くする。


 その時、カザスレイキの足元に銀色の光が輝く。


 カイが瘴気の爆発のあと、エリスの指示で魔王の隙を盗み、そのすぐそばまで潜り込んでいた。


 その天才的な戦闘センスは、他の誰にも真似できない、想像を超える動きだった。


 「ここだっ!!!」


 カイは手にした剣を魔王の下手から、思いきり突き上げた。


 「ぐぁぁぁぁーーーーっ!」


 紅い月光が反射して不気味に光る漆黒の鎧は粉々に砕け散り、カザズレイキが呻き声を上げる。


 「まだだぁ!!」

 

 グレイの冷静な判断が、次の行動を起こす。

 

 最後のカプセルを割り、呪文を唱える。


 「混沌の闇よ、我が聖剣に力を宿せ…」


 グレイの聖剣が鮮やかな赤に染まる。


 「頼む……貫いてくれ……」

 

 グレイは祈るような気持ちで、大きな一撃を振るう。

 聖剣はまるで生きているかのように唸りを上げ、大きな赤い龍が飛び出す。


 「行っけぇーーーーーー!!」


 「おっ……おのれぇぇぇぇーー!」


 カザズレイキはグレイの攻撃をまともにくらった。

 そしてたまらず膝をつく。

 瘴気が弱くなり、翼も小さくなっている。


 「アーヤ!!!」


 エリスが叫んだ。


 「準備できてるわ!行くわよ!」


 エリスは読んでいた。

 カザズレイキのしつこさを。

 そして、アーヤに伝えていた。


 アーヤの首元のベンダントが強く光る。

 

 「太陽の怒りよ、我が胸に燃え盛れ!光の刃となりて、すべての闇を断ち切り、邪なるものをこの世から永遠に消し去れ!!」

  

 アーヤの呪文とともに現れた無数の光の矢が、カザズレイキの頭上から降り注ぐ。


 「ガッ、ガァァァァァァァーーーー!!!」


 アーヤの攻撃は瘴気の壁を打ち破り、赤い光の中心に矢の衝撃が直撃する。

 魔王カザズレイキは高く咆哮し、そのまま後ろに倒れ込んだ。


 カザズレイキの碧い目が赤に代わり、その光は消えかけている。


 「まだ……だ……まだ終わらせない……やっと……」


 カザズレイキは小さく呟く。


 グレイは最後の力を使い果たし、剣を地面に刺し倒れ込む寸前だが、戦闘態勢を崩さない。


 「気を……抜くな……」


 「グレイさん!」


 カイがグレイを支える。


 その時、力強くも温かい、どこか透明感のある優しい声がこだまする。


 (……太陽の神子……魔王を封印しなさい……)


 「ライラ……」


 アーヤがその声がライラのものだと気づくのに時間はかからなかった。


 「水晶は!?」

 

 「あ、あそこだ!」


 倒れ込んだ魔王のすぐ側に転がっている水晶をエリスが指差す。


 アーヤがその水晶を拾い上げると、その輝きに共鳴するかのように、リューネから授かったペンダントが強い光を放った。


 (アーヤ……あなたの役割でしょ……)

 

 「リューネ……」


 アーヤの心に太陽の神子としての宿命が渦巻く。

 ライラの想い、リューネの導き、そしてここまでいっしょに戦ってきた仲間たち。

 そのすべてがアーヤの中でひとつになる。


 「わたしが、守らなきゃ!」


 アーヤは、魔王との死闘で傷ついた仲間の顔を一人一人見る。

 そして、宿命に向き合う覚悟を決めた。


「アルディナの魔力 第一章 紅月の封印」お読みいただきありがとうございます。

 今後の展開や、執筆における参考とさせていただきますので、是非、評価をお願いいたします。

 誤字や脱字がありましたら、遠慮なくフォームよりご報告ください。

 また、本作品へのご意見やご要望につきましては、メッセージ等で随時受け付けております。皆様からの忌憚のないご意見等をお待ちしております。

                   Z.P.ILY

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