表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルディナの魔力  作者: Z.P.ILY
第一章 紅月の封印

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/106

第26話:曇天の誘い

 買い物を終えた四人は、それぞれの荷物を肩に掛け、賑やかな市場に別れを告げて、ゆっくりと歩き出した。


 「ちょっと買いすぎたかニャ」


 「でも、あれだけ見せられると手が出ちゃいますよ」


 「まだ先もあるしね。買えるとこで買っとかないと……」

 

 空は厚い鉛色の雲に覆われ、潮風が運ぶ塩の匂いとともに、遠くから雷鳴が時折響く。


 「……にぎやかな港だったな」


 グレイが声を潜めて言った。


 「もっとここにいたかったけど……仕方ないかな……」


 ミラは名残惜しそうに通りの屋台を振り返る。


 エリスは鋭い目で周囲を警戒しつつ、買った薬草をそっと鞄にしまった。


 「さあ、次の目的地へ。聖地に向かう道は長いし気を抜けない。またいつあのような襲撃に合うかわからないからな」


 「そうね、気をつけましょ。」


 グレイは市場でのひとときを、完全にかき消す勢いで、気合をいれた。


 アーヤは足元の石畳を見つめながら、胸の中のざわつきを抑えた。紅い月の男、リューネ、イアン、それぞれの言葉がまだ耳に残っている。


 (みんな……運命……って……)


 そして港で見かけたフードの人物。

 

 「あのフードの人……気になるわ」  


 アーヤは決意を固めるとともに、深まる謎を整理しつつ歩き続けた。


 「ここママベントには、やはり何か特別なものを感じるわ。私たちの知らない何か……ただの思い過ごしじゃない気がする」


 グレイは黙って頷き、少し離れた路地をちらりと見やった。


 「何かが動いているのは確かだ。だが、私たちの進む道はこれからだ。」


 四人は港の外れにある街道へと足を向ける。やがて古びた街の喧騒が遠ざかり、北から吹き付ける冷たい風が強まる。


 「雲行きが怪しくなってきたわね」


 「とりあえず宿につくまで持ってくれればいいが……」

 

 「急ぎましょ。次の宿までまだ少しあるわ」

 

 「さあ、行こう。まだ見ぬ未来へ」


 エリスが意気揚々と前を歩き出すと、ミラもその後ろを軽やかに追いかける。


 (待っててね……フィリア、ユリオ)


 道中、アーヤは家族のことを思い浮かべる。

 レオンに託してきた子供たち二人。

 遠く離れていても守りたい者たちの存在が、彼女に静かな力を与えていた。


 グレイは周囲の警戒を怠らず、意識は常に剣の柄に置き、アーヤの隣で静かに歩を進めた。


 蒸気船の煙と港の喧騒が遠ざかる中、彼らの旅は新たな一歩を刻み始めていた。


 その先に待つのは、過酷な試練と、希望の光が交錯する聖地。


 風が彼らの行く手を押しもどし、曇天の広がる方へと突き進んでいく。

「アルディナの魔力 第一章 紅月の封印」お読みいただきありがとうございます。

 今後の展開や、執筆における参考とさせていただきますので、是非、評価をお願いいたします。

 誤字や脱字がありましたら、遠慮なくフォームよりご報告ください。

 また、本作品へのご意見やご要望につきましては、メッセージ等で随時受け付けております。皆様からの忌憚のないご意見等をお待ちしております。

                   Z.P.ILY

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ