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アルディナの魔力 〜封じられし真実編〜  作者: Z.P.ILY
第一章 紅月の封印

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第20話:見えない敵(前編)

《38,000PV 突破!!》

おかげさまで38,000PVを突破しました。

たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。

まだまだ冒険は続きます。引き続き皆様に楽しんでいただけるように、毎日少しずつ、サクッとアップしていきます。

よろしくお願いいたします!


**********


●主人公:アーヤ・アーデン

 彼女はアルディナ王国の王都アルディナで、神殿の職務にあたる神官。以前は巫女だったが、その力を見込まれ神職試験を経て神官となった。

 夫と子供二人を家族とし、仕事と家庭を両立するキャリアウーマン。清楚で真面目だが、心に秘めた好奇心と、誰にも言えない夢がある33歳である。

 太陽の神子として覚醒し、世界を作り変えるために、神が作り出した六魔王を導く宿命を持つ。


●ミラ・フィローネ

 アーヤが目をかけている後輩巫女。快活で素直な性格であり、神殿内の人間関係にも明るい。アーヤを姉のように慕う。巫女としての霊的な力や知識は持っているが、まだ未熟で成長過程。ショートの鮮やか赤い髪がカワイイ22歳。

 風の一族との関係がありそう。


●グレイ・リヴァント

 神殿騎士団の副長を務める高身長のイケメン38歳。

 筋肉質で短く整えられた黒髪は、鋭い青い目の視線を際立たせる。

 戦闘では冷静沈着で真面目な性格からは想像できない強さと熱さを発揮する。神殿では最も頼れる存在。

 アルディナの伝説の剣士の末裔。


●エリス

 王都の西に位置する街マクホカタの山の麓リアケーアにすむネコの獣族。白毛に赤茶の耳、しっぽの先も赤茶色。

 明るい性格でいつもおちゃらけているが、特別な獣族にのみ与えられる能力〈未来視〉を持つ。青氷色の左目と金色の右目、能力の違うオッドアイが獣族の未来を見る。時の魔王アッシャガの力を得て、時の継承者となった。好物はフィッシュバーガー。


●イアン・セリウス

学術都市ガネリーホに籍を置く、年齢不詳の研究者。

薄紫の長髪と灰色の瞳を持ち、常に静かな観察者として振る舞う。古代魔導理論や魔力の構造に精通し、その知識は一部の学者の間で知られているが、彼自身の過去や真の目的はほとんど語られない。物語の要所で現れ、核心を突く言葉を残す謎多き存在。見かけによらず熱い気持ちを持つ。


 「どうだ、何か感じるか?」


 「ずっと感じてるニャ。でも何がどこにいるのかわからない……」


 エリスは、辺りを見回しながら応えた。


 甲板に飛び出してきた四人は、少し距離をとって身構えている。

 

 「ミラ、なるべく私たちの後ろにいて」


 「アーヤ様……」


 蒸気船は淡い陽光を浴びながら、その巨体を力強く動かす。


 空には薄く白い雲が広がり、ひんやりとした風が肌をかすめる。   

 

 だが、その美しい光景とは裏腹に、四人の胸には重苦しい気配が漂っていた。


 ——ザワリ。


 空気の一部が歪むような、耳の奥をくすぐるようなざらつきが、四人の感覚をじわじわと侵していく。


 「くる!」


 グレイはいち早く何かを感じている。


 エリスの青い左目が、鋭く微かな揺らぎを捉えようと、じっと空間を見つめている。


 「みんな、注意しろ。何かが近づいているぞ!」


 そのとき、船の左側に大きな水柱が立ったが、その先には何も見えない。


 (ビュン!!)


 一瞬何かが回転しながら風を裂くような音がグレイの左耳のすぐ後ろをかすめた。


 「くっ……!」


 グレイが咄嗟に剣を抜き、構えを取ろうとしたが、すでに左肩の服が裂け、血が飛び散る。


 「副長っ!」


 アーヤは布袋を抱き締め、必死に防御の姿勢をとりながら叫んだ。


 「大丈夫、かすり傷だ。くそっ、どこにいやがる!」


 「ミラ、下がって!」


 グレイとアーヤは、お互いの位置を確認しながら、次の攻撃に備えた。


 「姿が見えない……どうすればいい?」


 エリスは考えた。


 アーヤは防御の呪文を唱える。


 「アキラレヨ、聖なる光よ!我を護る盾となれ!」


 アーヤが天に向かって両手を広げると、ピンク色の光が半ドーム型になって広がる。自分と荷物、ミラを守るため結界を展開した。


 「白毛!索敵はどうなってる!」


 「なんにも見えないんだ!」


 エリスの左目がわずかに反応した。


 「グレイ!くるぞ!」


 そのとき突然、船体の甲板を鋭い衝撃が襲い、木板が軋む音が響く。


 「うあぁぁぁぁぁーーーー!」


 エリスは傾いた甲板をゴロゴロと転がって、その先にある船室の入り口に激突した。


 「うっ、痛ってーーー!」


 後ろアタマを強く打ったエリスは、ダメージを気にしながらも、よろよろと立ち上がる。

 

 「大丈夫か!白毛!」


 グレイは息を整えながら、敵の正体を探ろうと目を凝らすが、空間は揺らぎ、掴みどころのない存在が彼らを翻弄していた。


 「またくるぞ!」


 グレイはわずかに血が滴る左肩を気にしながら叫んだ。


 船の右前方から水しぶきが舞い、得体の知れないものがさらに強襲してくる。


 「うっ!何かが……!」


 エリスは足元に違和感を感じた。そして右足のスネのあたりが切り裂けてることに気がついた。

 美しい白毛が赤く染まっていく。


 「いっ、痛っ!何だこれ!……こいつ!ヤバいニャ!」


 見えない敵はエリスを切りつけたあと、また海に潜っていった。


 「白毛、こっちにこれるか!このまんまじゃ埒が明かない。なんとか立て直すんだ。」


 「わかった!やってみるニャ!」

 

 エリスは物陰から物陰に素早く身を隠しながら、少しずつグレイに近づく。


 グレイも低い体勢を維持しながら、すり足でエリスのほうに寄っていく。


 エリスとグレイはお互いの身を庇い合うように、背中合わせに敵の攻撃に備える。


 「どうするニャ?」

 

 「俺に考えがある……お前、少し先が見えるんだろ?」


 「ぁ、あぁ。ほんの少しだけどな」


 見えない敵の攻撃をけん制しつつ、二人は続けた。


 「便利なやつだ。見えないものでもその力は使えるのか?」


 「さっきやってみたが、左目でなんとなくわかる」


 「場所さえわかれば、もしかしたら物理的な攻撃も通じるかもしれない」


 「わかった、俺が相手の場所を指示する。その先に剣をふるってみてくれ」


 「よし。わかった」


 エリスは素早い身のこなしで、ぴょんぴょんと飛び移りながら、甲板の上階へと移動した。そして、甲板全体が見渡せる場所に立ち、呼吸を整えてから左目に力を集中した。


 「こい!」


 視界の端で、空気がわずかに濃くなる。輪郭はあるようで、ない。


 「6時の方向!低い位置!」

 

 エリスが叫んだ瞬間、グレイの後ろに水柱が立った。


 その声に即座に反応するように、グレイが剣を振るうが、剣先は甲板の木を削っただけだった。


 「風下……そこか!」


 エリスは動物的な嗅覚もするどい。


 しかし、次の瞬間には甲板の反対側、風上から衝撃が襲う。


 「読まれたか……」

 

 敵が動きを変えたのだ。


 少しの間、静けさが訪れる。

 

 集中するあまり、波の音さえ遠くに感じる。


 「……来るぞ!」


 グレイの低い声がこだまする。


 (ドンッッ——!)


 船体がまた大きく傾き、木板が悲鳴を上げるように軋んだ。


 エリスの左目が熱を帯び敵の動きを察知する。


 「上だ!」


 光が屈折するような輪郭のない物体が、グレイに飛びかかったそのとき、グレイは大きく叫び、その剣をふるった。


 「おらぁぁぁぁぁーーーーー!」


 グレイは半分やけくそ気味で一撃を放ち、それが彼の頭上で何か硬いものをかすめた感触が走った——。


 「グァァッ!」


 「……あ、当たった!……」


 見えない物体はたまらず声をあげる。


 「やった!やったぞ!」


 エリスは驚いた顔で叫んだ。


 グレイの剣は、見えない敵のどこかをかすめ、確実にダメージを負わせた。


 次の瞬間、冷静さを失ったのか続けざまに、グレイの右側から微かな音を立てて襲いかかる。


 グレイは機を見極めた。


 「ハアァァァァァァァーーーーー!」


 グレイは静かに目をつぶって全身に力を込めると、銀色の闘気がグレイを覆った。


 「ここだーーーぁ!」


 (バシュッッ!)


 グレイは、鍛錬によって身につけた剣士としての勘と身のこなしによって、ギリギリを見極めて攻撃をかわし、振り返りざまに振り抜いた剣が確実に敵を捕らえた。


 「グァァァァァーー!」


 見えない敵は、たまらず叫ぶ。


 そして、その傷によって場所の特定が容易になっていた。


 グレイの剣が敵に深く切り込んだ瞬間、傷口から濃く鮮やかな赤い血がほとばしり、その血がまるで黒い霧のように甲板の上に広がり、空間を揺らがせる。


 血を帯びた輪郭のなかった敵は、姿が徐々に形を取り、朧げながらもはっきりと浮かび上がってきた。


 「ちょろちょろしやがって!位置がわかればこっちのものだ!」


 グレイはこれまでの鬱憤を晴らすかのように叫び、自信に満ち溢れていた。


 「イ……カ……?」

 

 ミラがその姿を見て呟いた。

 

 「この、化け物め!」

 

 風に混じって、船の機械音と波の音が響く。見えない敵は見える敵となって再び四人に襲いかかるのだった。

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                    Z.P.ILY

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