第12話:信じる心
「アーヤ……わたしの声、届いてる?」
ふわりと幽かな声が耳元で囁いた。
「リューネ?リューネなの?」
アーヤは何かに導かれるように囁き、銀のペンダントを強く握った。
「大丈夫……ミラは助かるわ……あなたの力で……」
声は透き通った水のようにクリアで、心の安らぎを誘うように柔らかく、そして、どこか揺るがない強さを秘めていた。
「そのペンダントはね、闇を封じる力が宿っているの。怖がらずに想いを伝えてみて……」
「リューネ!どうやって?」
「……力を信じて……自分の心をミラのために……」
アーヤの中で懐かしさと不思議な温もりが心を満たしていく。
まるで風のように囁いたリューネの声は、アーヤに勇気と力を与えた。
「わかった。やってみるわ。リューネ、私に力をちょうだい……」
アーヤは震える手でペンダントを天に向かって高く掲げ、心の中で強くミラのことを想った。
(ミラ、今助けるからね……)
手から溢れるように淡い光が勢いよく輝き、影をゆっくりと切り裂き始める。
影は低いうめき声をあげながら、波のように揺らめき必死に抵抗する。
《グァァァァァァ!……》
「副長!いまです!」
アーヤは直感的にグレイに向かって叫んだ。
「よしっ!わかった!」
その光の中でグレイの聖剣が空を切り、波打つ黒い影を、まるでイナズマのようなスピードで滅していく。
アーヤはグレイに言った
「リューネの声が聞こえる!……怖がらなくていいって……!」
震える手でペンダントを握り締めると、光はさらに強く輝きを増し、影を焼き尽くさんばかりに広がっていく。
グレイとアーヤの光が一つになり、ミラを覆っていた黒い影を強襲する。
《グァァァァ……グァァァァァァ!……》
「ミラを!助けて!」
アーヤは全身から力を振り絞るように、より強くペンダントを握りしめた。
《グァ……グァァァァァァ!……ゆめをォォォォォォ!……》
黒い影は、ミラの夢に執着するように叫びながら、不気味な地鳴りのような呻き声とともに黒い影は蒸発するように消滅した。
ーーー森は音を失うーーー
「ミラ!」
ミラの身体はまだ冷たく、ピクリともしない。
真っ白な顔に紫色の唇、冷たくなった身体は二人を絶望へと追い込む。
「遅かったのか……」
グレイが肩で息をしながら力なく呟く。
「ミラ!……しっかりして!」
アーヤが涙ながらに軽く揺すると、ミラはゆっくりと目を開き、かすかな生命の灯を灯した。
「ミラ……!」
アーヤの声が震え、深い静寂の中、アーヤはミラを抱き寄せ、息を整えた。
「しっかりして!もう大丈夫……大丈夫だよ!」
「しっかりしろ!」
グレイも静かに頷いて言った。
「よかった……ミラ……」
「すぐに手当をしよう……」
「何か温めるものを!」
「とりあえず、火を起こそう」
グレイは、周辺に落ちている木の枝を拾い始めた。
そして、作業をたんたんとこなしながら思った。
(……これは始まりに過ぎない……これから先は何が起こるのか…)
影との激突の中、アーヤの胸の内には確かな覚悟が芽生え始めていた。
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Z.P.ILY




