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出戻りダークエルフ


お昼休みを告げるチャイムが鳴る。

懐かしきウェストミンスターの鐘の音色だ。

先生方は足早に職員室へと戻っていき、生徒達は思い思いにお昼の準備を始める。

机を並べて弁当を開く者、購買部へパンを買いに行く者、その過ごし方は人それぞれ。

そんな同級生達を尻目に僕は一人トイレへと向かう。

目指すのは少々遠いが広々とした多目的トイレ。


別にお腹の具合が悪いわけでは無い、なんなら行かなくても一応問題は無い。

しかし人間、生きている以上は適度にリフレッシュが必要だとは思っているわけで。

まぁ、一言で言えば少々「窮屈」なのだ。


トイレに入ると鏡に僕の姿が映る。

お世辞というフィルターを使って漸く普通と言える顔。

高校生男子の平均より少し低いめの150㎝台の身長にポッチャリとした腹回り。

そんな慣れ親しんだ〝桜田 響〟という男子高校生の姿。


扉の鍵を閉めた僕は手早くベルトを緩めと上着のボタンを外す。

端から見れば変な性癖を拗らせてる様だが、それなりの値段のする制服を簡単に破くわけにもいかない。

最後に社会の窓を全開にして全ての準備が整った。


「…○△~×◎~解除」


唱えるのはこの地球上どの言語にも属さない言葉。

性癖に加えて厨二病とかなり痛い要素満載だが、言葉を連ねるにつれて僕の体は淡い光に包まれていき変化が始まった。


最初に骨格が変化していき身長が伸びる。

次いで胸と尻が膨れて腰が括れていき、各部位は引き締まりながらも柔らかな曲線美を形成。

同時進行で肌は褐色に変り、髪は腰まで伸びて黒から銀へと染まり、股間のマグナムが引っ込んでいく。

最後に耳が外側に伸び、たっぷり30秒掛けて全行程が完了した。


「ふぃ~。ああ……すっきりした」


色々と溜まった物を口から吐き出し鏡を見やる。

鏡に映り込むのは先程までの冴えない男子高校生では無く、街を歩けば誰もが振り返るような褐色肌の美女。

目測だが身長は優に180㎝以上と高身長に加え、メリハリの効いた見事なボディーライン。

服装は今は残念な事に部分部分がダボダボ・パツパツ・つんつるてんだが、それを差し引いてもお釣りが来る容姿だ。

しかし外側に突き出る長い耳が普通の人種と異なることを如実に示している。


その見た目は所謂物語の中に出てくる架空の存在〝ダークエルフ〟


コレが今の僕の本来の姿。

魔法(・・)で嘗ての姿に変身して家族を含めた皆を誤魔化しているのが今の現状。


「なんで…こうなっちゃたのかなぁ?」


既に何度となく呟いた台詞とため息を吐きながら簡単なストレッチを行う。

肩や首をグリグリ回したり、上体を反らしたりして硬くなった筋肉の凝りを解していく。

本来こんな場所でストレッチなんてする事じゃないが、簡単に他人には見せられないので贅沢は言えない。


下手にバラした結果、国や変な研究機関に知られたら厄介だ。

新種の生物として国内外問わず、そっち系専門の特殊部隊とかが来るだろう。

捕まったら十中八九モルモットコースの人生。人類の未来やお国の為とやらで犠牲になるほど僕はお人好しじゃない。

当然抵抗させて貰うが、逃げようが捕まろうが僕の居場所は無くなる。

そんな未来はまっぴらゴメンだ。


偶然とは言え物騒な異世界から帰って来れたのだから、これからは平穏無事に過ごしたいのだ。

とりあえずの目標は高校卒業、大学ないし就職しての気ままな一人暮らしかな。

ストレッチを終えた僕は男の姿に変身してトイレを後にする。


「さて、購買で飲み物でも買ってくるかな」


僕の出戻り生活は始まったばかりだ。

一話消そうとしたら全部消えたので再投稿します。

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