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211便

月曜日 午前7時34分

モノレールは、定刻通り第3ターミナル駅に到着した。


ロンドン行き211便の搭乗時刻9時25分までは2時間弱ある。

美沙紀はロンドンに出張する際、毎回211便を利用する様にしていた。


2週間おきに東京とロンドンを行き来する美沙紀にとっては、規則的に動いた方がスケジュール設定も楽だった。


スーツケースを引きずりながら改札口を出ると、まずはエレベーターで2階に降り、レンタルWi-Fiのショップに向かう。ここで、予約しているポータブルWi-Fiをレンタルするのだ。


「予約している杉浦美沙紀です。」


美沙紀は、Apple Walletに登録した予約チケットを見せながら、受付に話しかけた。


「杉浦様、いつもありがとうございます。」


すっかり顔馴染みになった浅井美奈子というスタッフが、この日の朝も笑顔で迎えてくれた。


「イギリス 4G 無制限プランですね。お気をつけて行ってらっしゃいませ。」


ポケットWi-Fiを受け取ると、美沙紀は再び3階の出発フロアに上がった。


スーツケースを預け、出国審査を受けると、無事に出国エリアに移動した。


毎回同じではあるが、このペースだと、搭乗時間の1時間前には、後は搭乗するだけ、という状態になる。


美沙紀は110番ゲートに着くと、テイクアウトしたカフェラテを飲みながら、一休みする事にした。

これも、いつものルーチンだった。


時計の買い付けの為、月の半分をロンドンで過ごす様になって、2年目となる。

ロンドンタワーハムレッツに、高品質かつ希少な時計を扱う、卸業を兼ねたショップを見つけ、取引きする様になったからだった。


従来、米国をメインに買い付けを行なっていたが、最近は大半の時計をそのショップから入手していた。


今回も事前情報で、かなりの出物が期待出来そうだった。


しばらくして、211便の搭乗手続き開始のアナウンスが流れると、110番ゲートに行列が出来始めた。


すっかり慣れている筈だが、仕事とはいえフライト直前はいつもちょっとだけワクワク出来る。


美沙紀は黒いリュックを片肩に担ぐと、コーヒーが入っていた紙コップをゴミ箱に捨て、搭乗待ちをしている列に並んだ。


いつもと変わらない光景だった。

そう、いつもと変わらない。


美沙紀はいつしか、自分に言い聞かせる様にしながらゆっくりと深呼吸を繰り返していた。

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