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受信
愛する人を失った悲しみ、彼を死に追いやった女への憎しみ、人を呪えるなんてくだらない噂話を真に受けて、元町までノコノコやってきた自分の間抜けさ。
いや、本当はそんなものが存在する筈がない事を分かっていて、あえてそれにすがるしかなかった悔しさと情けなさ。
あらゆる気持ちが交錯し、美沙紀はどうする事も出来ずに泣き続けた。
美沙紀が座っていたカウンターの上では、置き去りにされた携帯電話が寂しそうに主の帰りを待っていた。
カウンターの中にいたマスターは、美沙紀の荷物が誰かに持っていかれない様にそれとなく監視していたが、洗い物をしていた為、その携帯のブルブルと震えだした音にまでは気づかなかった。
携帯はわずか3コールでメールの到着を知らせてすぐに沈黙したが、サブディスプレイにはしばらくの間、メールアドレスが流れるように表示されていた。
n0601@keep.ne.jp
それは、これまで美沙紀の携帯に一度も送られてきた事のないものだった。