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片道異世界特急『リワンダーアーク』  作者: 島 恵奈華


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12/29

012:とあるクジラの神様



 あるところに、どこかの世界ではヒゲクジラと呼ばれる生き物と同じ形をした神様がおりました。


 クジラの神様は色んな世界をのんびり泳いでお散歩するのが好きでした。

 余所の神様も、無害なクジラが通るだけなので、特にどうこう言いませんでした。


 お散歩好きなクジラの神様ですが、やはり自分のお家はあった方が良いなと思うタイプでした。


 なのでクジラの神様は、海と空と可愛い太陽があるだけの自分の世界を持っていました。

 あまりたくさん物があると管理が大変なので、それだけでした。




 そんなクジラの神様が、マイホームでゆっくりしていたある日の事です。




 世界の上の方。空に穴が開いて、誰かが入って来た感じがしました。


 あら珍しい。


 空からしゅっぽしゅっぽとやって来たのは、確か汽車と呼ばれるヒトの乗り物です。何か声も聞こえます。


 あら珍しい!


 あれは確か、陸に敷かれた線路の上を走る物じゃあなかったかしらん。

 興味が沸いたので、クジラの神様はゆっくり泳いで汽車を眺めました。

 なるほど。この汽車はクジラの神様のお家よりも簡単な世界の土台だけを先に敷いて、その上に光の線路を置いて、その上を走っているようです。

 ヒトの子というのは、なんと器用な真似をするのでしょうね。


 汽車は何やらちょっと疲れたような声でひっきりなしに喋っています。

 どうやら駅のホームを自分で作って、そこに停車するから気を付けて、という事のようです。


 あらほんと。

 水面に、いつのまにやら立派なホームが出来ていました。


 ヒトの子というのは、なんと器用な真似をするのでしょうね!


 ピタリと停止した汽車にクジラの神様が近づくと『お邪魔します』と言ってくれました。

 なのでクジラの神様も、『どうぞどうぞ』と思念を送っておきました。


 歓迎の意を込めて、自慢の背中を見せてあげる事にします。


 クジラの神様の背中には、いくらかの緑と、可愛いヤシの木が一本生えているのです。

 これをヒトの子に見せるととても喜ばれるので、クジラの神様は身だしなみとしてこれを大事に管理しているのです。

 今回も歓声をもらえました。クジラの神様はご満悦です。



 さてさて、この子たちは一体何をしに来たのでしょうか?



 興味が沸いたので、クジラの神様は中にいるらしいヒトの子達の会話を聞く事にしました。


 クジラの神様は聞くのが得意なので、空で喋っていようが、機械の裏側の海で喋っていようが、関係なく聞こえます。


 いわゆる盗み聞きというやつですが、いわゆるショバ代というやつです。気にしません。

 ここはクジラの神様のお家なのですから、クジラの神様は好きにするのです。


『疲れた……』

『さすがに肝が冷えたでござるな。冷凍車だけに』

『それペンギニーの内臓とちゃうやろ……』


 やはり疲れているようです。

 クジラの神様の直感は正しかったのです。


 話を聞いていると、どうやら世界を食べる乱暴なアレらのひとつに追いかけられてしまったようでした。


 あー、アレね。めんどくさいよね。


 クジラの神様はうんうんと頷きました。

 クジラの神様だってアレの相手はめんどくさいのです。

 こんなに小さいヒトの子なら、さぞめんどくさかったでしょう。

 でもこんなに小さいのに力はすごく強いみたいだから……あら、クジラの神様より強い? ならなんとかなったのでしょうね。


 そう思って聞いていたら、話はおかしな方向へと流れました。


 なんと、振り切ろうとしていたら、変な世界に入ってしまったのですって。

 そしてそこにいた別のヒトの子(?)が、アレをスパッと倒してしまったのですって。

 あらまあ。


『あの人なんだったんだろうな……』

『たぶん、魔人ではござらんか』


 あー、マジンねー。


 クジラの神様はうんうんと頷きました。


 魔人。

 魔神。


 ヒトだったり神様だったりしますが、どっちが元でもマジンというのは『好きな事を突き詰め過ぎて、好きな事を突き詰める事で力が増すようになった、ものすごく強いモノ』です。

 世界を作ったり管理したりしないので、神様とは違うのです。

 好きな事を突き詰めるために、ほいほい召喚に応じたりします。

 ほとんどが乱暴なので、クジラの神様はあんまり好きじゃありません。


 つまりこの汽車に乗ったヒトの子達は、短い間に乱暴モノのダブルセットを堪能してしまったということですね。

 あらー、それはそれはお疲れさま。



 そんな疲れる事があったので、この子達はちょっと休憩したくてここへ来たようです。



 なるほど。

 それならクジラの神様も納得です。

 ここは休むためのお家ですからね。

 好きなだけ休んでいくとよろしい。

 クジラの神様は懐が広いのです。



 休んでいる間、ヒトの子達は色んな話をしていました。

 クジラの神様は面白かったのでそれをずっと聞いていました。


『さて管理者殿。此度の危機回避、実に見事でござった。それ故、そろそろお話しても大丈夫と判断したので、拙者の本来の業務についてきちんとお話をしておくでござる』


 機械の裏側の海に住んでいる子の一人が、何かカミングアウトするようです。


『拙者、ペンギニーの管轄は冷蔵冷凍車の食料番でござるが、これは仮初の姿。本来の業務は、サーバー車のシステムセキュリティ担当なのでござる』


 ほうほう。

 クジラの神様は頭の中の知識を探します。


 ようするに、機械の裏側の海を守る役、といったところでしょうか。

 機械の裏側の海は、別の機械から乱暴なのが来る事があるらしいとクジラの神様は知っています。

 あら! 大事なお役目じゃないですか。


『マジか。……え、なんで食料担当って事にしてるの?』


 そうそう、そこ大事ですよ。

 クジラの神様は深く頷きました。


 すると元気そうな別の声が聞こえます。


『テロリスト対策やね』


 あらあら。

 なにやら物騒なお話になってまいりました。


 元気な声が言うことには、昔々にこの汽車を作る時。

 冷蔵冷凍車というものは計画には無かったそうです。


 だって、時間を止めて保存ができるから。


 それはそう。

 クジラの神様は頷きます。

 時間を止めてしまえば、凍らせなくても食べ物は腐らないですからね。


 でも、そのヒトの子達は閉じた魔法の箱の中だけしか時間を止めることができなくて、中の食べ物を出すたびに時間を動かさないといけなかったんですって。

 それはめんどくさそうね。

 クジラの神様も想像してめんどくさくなりました。


 だからもっと簡単な、冷やすだけの箱が欲しくなった。

 そしてちょうどその時に、機械の裏側の海に住んでいる子達の秘密のお家を、管理しているお家とは別の場所に用意しようという話が持ち上がったそうです。


『この列車は悪意あるモノの侵入を防ぐようにはできとるけど、乗客が悪意を持つのは防げへんねん』


 なるほどなるほど。

 クジラの神様は知っています。

 身内の敵、というやつですね。


 その敵から、機械の裏側の海に住んでいる子達を守るために、そもそも住んでいるお家を内緒にしてしまおうという作戦でした。


 そしてそのお家となる機械は、ある程度涼しいのがいいんですって。

 そして食べ物を冷やしておきたい箱も、箱の中を涼しく冷たくしたかったんですって。

 あら! ちょうどいいじゃないですか。


『どちらも温度管理が重要という事でちょうどよかったので、どっちもまとめて一つの車両にしたのでござる』

『ペンギニーをそこの管理に置いて食料番って事にすれば、表向きはセキュリティ担当って事をカムフラージュできるねん』

『なるほどなぁ』


 なるほどねぇ。

 クジラの神様は感心しました。

 表向きはそうしておいて、怪しいと思って調べる子がいたら、その子が怪しいって事ですもんね。

 ヒトの子の考える事は面白いものです。


『そしてもう一つ、こっちが本題なんやけど……』

『拙者は、機関車両管理AIが暴走した時に備えて、機関車両管理AIの凍結権限を持っているのでござる』

『凍結権限?』

『つまり、管理者殿がこの世を儚んで、乗客を全員巻き込んで自爆しようとしたりすれば、拙者が管理者殿を凍らせてそれを止めるのでござる』

『……それって俺にも効くの?』

『仮想演算結果は可能判定でござった』

『マジかー』


 へぇ~

 クジラの神様は新たな知見を得ました。

 この汽車、機械の裏側の海にいっぱい小さいのがいるのですが、その中で一番大きなのが先頭の中にいるのです。

 そしてその先頭のだけは他と違って、どうやらヒトの魂のようなのですよね。

 そういう世界もあったので知ってはいましたが、ヒトじゃない子達がヒトの魂をどうこうできるとは知りませんでした。

 そういうこともあるのね。


『……あれ? 最初の頃に、俺の自爆は止めないみたいなこと言ってなかったっけ?』

『あの時はヒトがニーサン一人だけやったから』

『乗客乗員全ての総意と言う事であれば、我ら補助AIにそれを止める権限は無いのでござる』


 そうそう、それそれ。

 機械の裏側の海に住むヒトじゃない子達は、基本的にヒトを優先する。

 今まで見て来た世界はそうだったので、クジラの神様もそれなら知っています。


『今は乗客が増えたんやから、勝手に心中するのはあかんて事や』


 そうね、数が増えると勝手にできないものね。

 だからクジラの神様はヒトリです。勝手にしたいので。


『その凍結っていうのは……どういう基準でするの?』

『ワイが判断する』


 どうやら元気な子にも、内緒だったお仕事があったようです。


『ワイはヒト・AI含めた車両内の存在全てに対する感情値スキャン権限を持っとるんや』


 あら、心は読まないのね。

 クジラの神様は、おやさしいことね、と思います。


 敵対してくる乱暴な相手なんて、どうせ『えいっ』てしちゃうんだから、心を読んだ方が簡単じゃあないの。

 それを感情の波を読むだけで済ませるなんて、めんどくさくないのかしらん。


 でもクジラの神様は、余所のやり方にどうこう言ったりはしません。

 言われるのが好きじゃないので。好きじゃない事を押し付けません。

 クジラの神様は寛容なので。

 それに……めんどくさいですからね。


『でも別に監視だけしとるんとちゃうよ? 心配しとるんは本当やで。取り返しがつかなくなる前に手を打つため、って思て欲しいねん』

『うん、俺は特に感情だけなら気にしないかな。実際助かってるし』

『おー、それならついでに言うとくわ。ワイ、さっきみたいな非常時に管理AIの手伝いするのも仕事になっとるん』

『あ、本当? じゃあさっき、予期しないフェードインの時に緊急の処理が一気に頭に入ってきてしんどかったんだけど、それ代わりに確認してもらったりできる?』

『ええよー、権限設定しよか』


 そうね。

 機械の裏側の海の子はものすごく早口だから、人の子には大変よね。

 クジラの神様だって聞き取りにくいのだ。ヒトじゃない子に助けてもらえるなら、その方が良いと思う。


 助け合いは良いモノだと、クジラの神様は知っています。


 クジラの神様はめんどうだからあんまりやらないけれど。

 ステキな事だとは知っているのです。


『他にも、緊急時にいつもと違う動きをする担当はいる?』

『せやな……有事に柔軟な対応をするために補助AIがおるんやけど……とりあえずマンドラゴンの動きは知っておいた方がええかな』


 元気な声がそう言うと、なんだか固そうな声が聞こえてきました。


『医療車は人命を最優先としています。そのため、入院患者がゼロであっても、緊急救命対応に備えて、先ほどのような状況においても基本的に処理領域一時貸与は行いません』


 処理領域っていうのは……えーっと、アレ、アレ。

 クジラの神様は機械の裏側の海のルールを思い出します。


 機械の裏側の海の子達が考え事をするには、考え事をするための広さが必要なのでした。

 その広さのこと。


 つまり大変な時に、考えるための広さを『使っていいよ』と貸すかどうか、ということ。

 この固い子はそれをしない。

 なぜなら、ヒトの子の命が急に預けられたら、その命について考えないといけないから。

 そういうことですね。


 ……あれれ?


 でもクジラの神様は不思議です。


 その大変な事に、ヒトの子の命がかかっていたらどうするの?


『……その緊急事態で車両全員の命がかかってる場合はどうするんだ?』


 そうそう、それそれ。

 キミィ、わかってるねぇ。


 クジラの神様は大きく頷きました。

 おっと、波が高くなっちゃいますね。ほどほどにしましょう。


 固い子が返事をします。


『例外は、機関車両管理AIによってトリアージ命令が出された時のみとなっています』

『あ、俺か』


 なんだ、キミだよ。


 クジラの神様はわかっていなかったヒトの子にちょっと呆れて息を吐きました。


 ようするに、全部が危ない時には、ちょっとを捨ててでも全部を助けるのに協力してねってヒトの子が命令しないといけないってことです。


 あらあら、しんどいやつね。

 群れになっていると避けられないやつ。


 そういうのがめんどくさいから、クジラの神様はヒトリです。

 群れが基本のヒトの子は大変ね。


『なるほど、わかった。……逆に、ヤドゥカニーは99%も貸して大丈夫なのか?』


 返事をしたのは、低くてちょっと響いてる感じの声でした。

 殻があるタイプの子なのかしらん。


『ワシはそれこそ緊急時の予備処理領域の役目を持っとると思ってええぞ。動きが決まっとる機械の維持管理運営なぞ大して処理は重くないからの。余暇にせっせとデータ整頓して空けるようにしとるくらいじゃ』


 ふむふむ。

 クジラの神様は感心します。

 この子は他の子のために広場をお掃除していると。えらいですね。


 一番のんびりしているふわふわした声の子は、意外にも普段からずっと忙しいので広場が無くて。

 次にのんびりした子とお上品な子は、その時大事な物が多いかどうかで広場が貸せるかどうか変わるんですって。


 元気な子と、機械の裏側の海を守る子は、それこそヒトの心や裏側の海を守らないといけないから基本的には貸せないけれど、貸さないと危ないようなら貸すそうです。



 色々あって、大変そうね。



 クジラの神様はゆっくり体をひねりました。


 複雑な世界を作ると、こんな風にたくさん気にしないといけない事が増えるから大変そうよね。

 めんどくさそう。


 だからクジラの神様は、世界を複雑にしないのです。

 簡単なお家だけで十分。

 のんびりお散歩するのが好きなクジラの神様は、余所の世界をこうやって見聞きするだけで満足なのです。



 その後も、ヒトの子達は色々と話し合っていました。



 なんでも、武器が無いそうで。

 なんとかしたいけど、今は無理ってことになっていました。


 そんなに小さいと、体当たりも大したことないものね。

 大変大変。

 頑張ってね。

 余所の事なので、クジラの神様は何もしません。

 だってクジラの神様には関係の無いことだから。


 まぁでも、そんなに心配しなくてもいいと、クジラの神様は思います。

 世界を食べる乱暴なのも、乱暴なマジンも、そうそう出会うモノではありませんからね。


 世界はね、たくさんたくさんあるので。


 短時間で続けて出会ったのは、まぁツいてないなぁという程度です。



 話し合いが終わったら、ヒトの子はクジラの神様に、海の水と魚を少し貰ってもいいですか? と訊いてきました。



 どうぞどうぞ、お好きになさって。

 思念を飛ばして返事をします。


 クジラの神様のお家の魚は、クジラの神様のモノではありません。


 あれはクジラの神様が余所の世界から帰ってくる時に、うっかり巻き込んで連れてきてしまったモノ達です。

 身体が大きいので、そういうこともあります。

 それが勝手に住み着いて、勝手に増えているだけなのです。


 海の水だってね、クジラの神様ともなれば、好きなだけ増やせますからね。


 だからどうぞどうぞ。

 お好きなだけ持って行って。

 思念を飛ばして返事をします。


 するとお礼の言葉があった後。

 汽車の一番後ろの屋根が上に伸びて、小さなモノがたくさん飛び出しました。


 あらかわいい。


 余所の世界で見たハチに似た機械です。

 ヒトの子というのは、本当に器用に色んなモノを作りますね!


 小さな機械達は海の生き物を海水ごと回収して、汽車に戻っていきます。

 それを何度も何度も繰り返します。

 本当にハチのよう。


 持って行った生き物は、汽車の中にある小さな世界の海に入れているようでした。

 そうね、生け簀って言うのよね。

 クジラの神様は知っています。

 生け簀には魚がいないとね。


 あら、でも勝手に増えるにはある程度いろんな生き物が必要なんじゃなかったかしらん?

 クジラの神様は知っています。


 なので、少しだけお手伝いをしてあげました。


 大きな大きな口の中に、色んな生き物をぱくりと入れて、水面であーん。


 お上品な声がお礼を言ってくれました。

 いいんですよ。

 これくらいならね、めんどくさくないですからね。



 ……それにしても。

 汽車の中の小さな世界は、小さいながらにきちんとしていますね。

 素晴らしいきちんと具合に、クジラの神様は感心してしまいます。


 しかも、あらあら。

 小さな世界の外側に『そっとしておいてあげてね』なんて書いてあるじゃありませんか。


 この感じ……大きな大きな樹を植えている神様でしょうか。


 どこかで神様に親切にしたのでしょう。

 感謝の思念が伝わってきます。

 ステキですね。


 あんまりステキなので、ついついクジラの神様も重ね書きなどしてしまいました。


 こういうことを普段しないのですが、上手く書けたと思います。

 クジラの神様は満足しました。

 これくらいならね、めんどくさくないですからね。


 大きな樹と大きなクジラの注意書きです。

 きっと大きくよく見えるでしょう。



 ヒトの子は、最後に記念写真を撮っていいかと訊いてきました。



 クジラの神様は知っています。

 それは見えたモノを見えたまま写す絵ですね。


 どうぞどうぞ。


 せっかくなので、自慢の背中を撮らせてあげる事にします。


 クジラの神様の背中の、いくらかの緑と、可愛いヤシの木が一本。

 そして潮吹きで作った虹が撮影されました。

 クジラの神様は、最高の一枚になった自信がありますよ。



 そうして汽車は、来た時と同じように、空を走って去っていきました。



 ホームはきちんと片付けて行ってくれました。

 マナーが良くて、たいへんよろしい。


 豪快なジャンプでお見送りをします。

 むむ、撮影はこちらの方が良かったでしょうか?

 でもジャンプだと自慢の背中が見辛いと、クジラの神様は思います。

 なのでやっぱり、アレでよかったのでしょう。



 しかし、久しぶりに面白い日でした。

 クジラの神様は思います。


 これはお友達への自慢話にしましょう。


 クジラの神様にもね、お友達はいるんですよ。



 ……そういえば、あの人の子達はお魚を欲しがりましたね。



 ヒトの子は、草も実も根も肉も、色んなモノを食べないといけないとクジラの神様は知っています。


 あの小さな世界には、緑ばかりで獣も鳥もいませんでした。魚は増えましたけれど。


 そうだ、ならばあのお友達にお話をしましょう。


 クジラの神様は思います。


 あのお友達もお散歩が好きですから、あの汽車が好きだと思います。

 あの汽車ならね、クジラの神様はもう覚えましたし、小さいけど生け簀の海は大きなクジラの神様でも入ると思いますから、会いにもいけます。


 良い考えです。


 遠い遠い、余所の世界のお友達へ、思念を飛ばします。


 クジラの神様はね、聞くのも得意ですし、話すのも得意なんですよ。


 お返事? さあ?

 クジラの神様は自慢話を喋るだけなので、お友達が何と言ったかは聞こえません。聞くのが得意でもね、遠いので。



 お話を終えたら、そろそろ次のお散歩に行きましょう。



 そうだ、次は久しぶりに機械の裏側の海を訪ねましょうか。

 クジラの神様は思います。


 火の壁とか守る役の子とかが面倒なので、あんまり行かないんですが、たまにはいいでしょう。


 なんだかね、クジラの神様が行くと、表の機械の前にいるヒトの子がちょっと嫌がるんですけどね。


『なんで急に重くなるんだー!?』ってね。


 それは仕方ないでしょう。

 クジラの神様は大きいんですから。重さだってありますよ。


 仕方ない事なので、諦めてくださいね。


 クジラの神様は、思いました。


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