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6

 買い出しを終えた二人は、市場で偶然に出会ったゼアスと共に、宿へと戻る途中であった。


 ゼアスがグレイに、リチャードの子供の頃の事など、他愛もない話をしていると、突然リチャードが走りだした。


 グレイは、からかいすぎたと一瞬、反省したが、走り去るリチャードの顔は、焦りを交えた真剣な顔だった。


 それは不思議な光景だった。


 グレイから見たリチャードは、前を歩いていた女性を追いかけ、その女性に覆い被さる様な体勢で、飛び掛かったと思いきや、女性に手が届く寸前、麻痺の魔術に打たれたかの様に、棒立ちになった後、その場に崩れるように倒れた。


 女性は、そんなリチャードに、気づく事も無く、歩き去った。


 グレイとゼアスは、慌ててリチャードのもとに駆け寄った。


 リチャードは、気を失っていたが、外傷は無く、グレイが、魔力の残滓を探ったが、それも無かった。



「なんだ! 突然、走り始めて…ここまで変な奴じゃ無かったがなぁ…」



 道端に寝かせておくわけにもいかず、ボヤきながらもゼアスが担いで宿へと戻る事にした。





 漸く、宿に戻ると、ゼアスが言った。



「お嬢様、こいつどうします?こいつの部屋に放り込んでおきましょうか?」



 お嬢と呼ぶゼアスを、目で咎めながらグレイは応えた。



「私の部屋へ寝かせて。ほっとく訳にもいかないでしょう?」



「で、でも、」



「大丈夫よ。起きたら打ち合わせもしたいし、それこそ明日から暫く、野営で一緒だわ。同じでしょ?」



 ゼアスは、リチャードをベッドに寝かせると、夕食の準備の為に、グレイの部屋を渋々出て行った。



「さっきの女性、ポーラ叔母様に似てたけどまさかね。

 あっ!それよりギルドに行かなくてわ!!」



 グレイとリチャードは、明日からの遠征の際、街との連絡に困る可能性を考え、ギルドに人員を頼んでいたが、リチャードが、いつ回復するか、分からないので、ギルドにも相談が必要になったのだった。





「ダナンさんはいますか?」


 グレイが、ギルドの受付の女性に尋ねると、聞こえたのか、奥の扉が開き、細メガネのダナンが出てきた。



「グレイさんでしたね。こちらへどうぞ」



 ダナンに導かれ、奥の部屋へ入ったが、ダナンは扉を閉めなかった。



「気になりますか? 聴かれたくない話ならば、扉を閉めますし、結界の魔道具もありますが?」



「その必要は、ありませんわ。ただ、頼んでおいた人の手配が、必要では無くなるかもしれませんので…」



「何かありましたか?」



「それが、リチャードが倒れまして」



 そうグレイが、ダナンに話すと、



「リチャードがですか!」



 倒れたと聞いたダナンが、大声をあげながら、立ち上がった。


 あまりの剣幕に驚いたグレイだったが、続けて、宿の部屋で寝かせている事、心肺に異常が無い事、外傷の類も無いことなどを伝えた。


「失礼…」と座り直したダナンは、リチャードとの関係を話し始めた。


 リチャードを子供の頃から知っていることを。

 パーティーを、組んだことがある事を。

 そして何よりも、リチャードは、忘れている様だが、リチャードの父に、命を救われたことを。


 グレイは、ダナンの後悔を含んだ告白を、黙って聴いていた。


 ダナンは、気が済んだ様に息をつくと、こう言った。



「明日からの件、私が同行します。朝、宿に行きます。中止なら、それからギルドに出勤するだけなので、その方がいいでしょう」



「ありがとうございます。でもよろしいのでしょうか?」



 尋ねるグレイに、ダナンは、冒険者を雇うと中止の際、手続きが面倒になりますよ、などと嘯いて、同行を求めた。


 グレイ達には、渡りに舟の提案だったので、同行についての、いくつかの取り決めをして話しを終わらせて、グレイはギルドを出た。


 ギルドを出る際に、受付にいた女性に、手を合わせる様に何かを話すダナンを見て、扉を閉めなかった理由を察した。





 翌朝、リチャードは、気分良く目覚めた。


 なんだか昨日の記憶が、途中から曖昧だが、今日からの装備は揃っているし、気にするのをやめて食堂に下りた。



 そこには、リチャードを予期せぬ人物が待っていたいた…



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