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「えっ、えっ、あれ〜っ?!」




 僕の前を歩く、サラリーマン?風の男性が、振り向きながら、大袈裟な身振りとともに、声を発した。



 僕に掛けられた言葉かは分からなかったが、ふと目線をあげて驚いた。そこは、なにやら見たことのない景色?、空間?、状況?だったからだ。




 初めてきた街からの帰り道、効率よく駅を目指す為に、同じく駅を目指しそうな人として、スーツでビジネスバッグを持つ男性を選んで付いてきたが、僕はスマホを見ながら歩いていて、周りを気にしていなかった。


 前を行く、視界の隅に捉えていた男性も、今日発売の雑誌を見ながら歩いていたので、僕に気付いていなかったのだろう。




「いや〜、マイッタなぁ〜 なんで付いて来ちゃってるの? ん? 君のことだよ?聞いてる?」



 よくわからない状況に困惑している僕に、男性は怒るというよりは焦る感じで、話しかけてきた。





 僕、八田大介は、中学を、残すは卒業式だけのタイミングで、たった一人の家族である祖母を亡くした。


 生前、ほぼ没交渉となる親族のなかで唯一、祖母と薄い付き合いのある、祖母より年若の、従兄弟なる人物への手紙を(今時、手紙って!)預かっており、その人が後見人になるであろうと、中学にも伝え済みだった。


 なんでも、その従兄弟が事業で困った際、祖母が少なくない額を工面して乗り切らせ、後に大?成功したらしい。


 工面したお金を、倍付け近くで返してきた後も、頼んでもいないのに色々してきて、人付き合いの余り好きではない祖母は、偶にボヤいていた。


 なので金は、祖母が残すから必要ないし、後見人の名義くらいならば、二つ返事で了承するだろうとの事だった。


 ただ祖母曰く、早めに連絡をとると「疲れるぞ…」とのことなので、手紙を書いて残してくれたのだった。


 そして今日はというと、進学予定の高校の入学手続きの為に、後見人と連絡を取らねばならなくなったが、一人暮しを、後見人に反対されるのが目に見えていたので、快適な生活(ひとりぐらし)の確保を目指して、不動産まわりをした帰りだった。






「ねえ、ちょ、ちょっと聞いてる?」


 男性は、無視されたと思ったのか、若干の不機嫌さを含ませた声で聞いてきた。


「す、すみません僕ですよね? ビックリして聞いていませんでした…」


 先ほど顔をあげてから、周りの雰囲気はどんどん変化していた。顔をあげたばかりの時は、建物など風景は残りつつ、色彩のみがセピア色になる感じだったが、歪みながら段々TVの砂嵐の様に移り、闇からの夜明け(暗闇に、何処からか間接照明があたっている感じ)を思わせる空間になって落ち着いた。




『まぁ、パニックになられるよりいいか。 で?、なんで付いてきたの?』


「いえ、付いてきたというか、スマホ見てて…」


 駅までの案内が必要だったとは、なぜか恥ずかしくて言えなかった。


『嘘まじり悪意なし』 ボソッと聞こえた。


「え、なにか言いましたか?」


『いや、いい。それより君は状況が、ここが何処だかわかるか?』


「いえ、わかりません」


『だろうな。

 周りをみて察したと思うが、ここは君の住んでいた世界ではない』


「えっ?」


『うむ、ここは君たちの言葉を借りるならば、次元の間、神域、黄泉の世界などと呼ばれる場所だ』


「黄泉の世界? えっ? 僕は死んだんですか? なんで? なんで?」


『いや、黄泉の世界はちょっと違ったか、君は死んだ訳ではない…

 だが地球に生存しているというのとも違うがな…』


 顔に?を貼り付けた僕に、男性はゆっくりと説明を始めた。


 曰く、男性は僕らの住む世界とは違う世界(いわゆる異世界!)の管理人で、神との違いは、その世界の住人には認識されていない、という所らしい。

 自分の管理地より大分文明の進んでいる地球に、多方面にバレない様に週イチ程度、情報収集に来ていたとの事だ。


(週イチ程度? ってゆーか、その後ろ手に持ってるのって、あの少年誌ですよね…?)


『確かにワタシも、他のことに集中していて結界がなおざりだったのかもしれないが、今までこんなことは…

 ナニがこんなに君と同調したのか…』


(あ〜はい、僕の歩きスマホも、同じ少年誌です…)


 続く説明によると、この結界内に入ると、現世とのつながりが途切れてしまうらしい。


 とはいえ途切れるだけなので、普通は親子とか恋人とか、強い繋がりある存在を軸に、帰すことができるはずらしいが、さっきから何度、濃い縁者を探しても、何故かうまくいかないらしい。


(あ〜 なんとなく心当たりがあります。)


『すまない…ワタシにも帰せない理由が、わからないのだが…んっ? 心当たりがある?』


「えっ?言葉にしてませんが!顔に出ました?」


『あぁ、この空間は、音は響かないよ。さっきから君の意識へ直接、繋がらせてもらっている』


「し、失礼なこと考えてなかったですよね?」


『まぁ、多少あっても気にしないが… それより…』


「あ、はい」


 僕は、唯一の肉親の死と、日本の学校システム(こうこうにゅうがく)の状況、連絡をとる予定ではあったが、会ったこともない後見人予定の人の事を、説明した。


『その年齢で… だがそれは困ったな…

 ワタシも、初めてのことでどうするべきか…』


「戻れないとここで死ぬんですか?」


『ここで死んでも、地球の輪廻には戻らないと思うが、そもそもこの空間に、死という概念があるのかも解らないのだ』


「死ねないなら、この何も無い空間で不老不死っ?!」


『ワタシが、この空間を閉じて去れば、君という存在は消滅するのかもしれないが、それは余りにも…

 …もし君が許してくれるのならば、ワタシの管理地に招くことはできると思うが…』


「どんな世界ですか?!」


『さっきも言ったが、君の世界より文明は未発達だが、科学の進歩の代わりに、魔力がある世か』


「行きます!」


 食い気味に返事をした後、いくつかの条件を話し合った。


 結果、転生時に、今の記憶を持ったままにしてくれること。魔力は人族の最高レベルにしてくれること。更にはお詫びも含め、十六歳までは不死にするという事に決まった。



『では送るけど、新世界を楽しんで!』



「はい!」



 返事とともに僕は光に包まれた。




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