「ぬがっぁ〜こばぁ〜」ゴホゴホッ
俺は、浴室の鏡の前で、思わず叫び声をあげようとしたが、続き部屋のベッドで眠る美女を思い出して、咳き込むフリをして誤魔化した。
美女の起きる気配が無いのを確認して、もう一度、鏡を覗いた。
俺、八田大介は異世界転生者だ。これは間違いない。管理者と名のる、よくわからない存在と会話をしたのだから間違いない。
転生ときいてすぐに思いついたのは、若いママの授乳にドキドキとか、少年時に高熱をだして覚醒するパターンとか、色々な小説の事だ。
どちらにしても魔法のある世界らしいので、できれば赤子のうちから魔力の練り上げをして、能力底上げマストー!とかしようと思っていた。
ベットに眠る美女は、(といっても彼女は、ベットに寄せたイスに腰かけ、俺が寝ていた場所に、頭を横向きにのせていただけで…)多分、俺の介抱でもしてくれていたんだろう。
“ だろう ”というのも、管理者なるものとの会合以来、そこで眠る金髪横顔美女を含め、ここに至るまでの記憶が何もない。
多分、頭の痛みも、発熱の自覚もないが、何かの外的要因によるショックで気を失い、目覚めと共に、転生前を思い出すとかいうあれだろう。
そう、そんなパターンは想定してた…
だが何度、鏡を見ても、これは想定してなかった…
だって鏡の中の俺は…
あ、「俺」って一人称は、余りにの驚愕の上での事であり、普段は「僕」だったけど…
とにかく、鏡の中の俺は…
俺は…
「オッサンじゃねぇかぁ〜!!」