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王太子の愛妾枠で結婚したのに、気がついたら私しか妃がいない!  作者: チョコころね


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21.推し測る


 王太子の私室に、マルグリッドは先に入り、夫を待っていた。

 待つほどなく現れたレアンドルは、自然にマルグリッドの手を取り、一緒にソファに座った。


「どうでした、王弟殿下は?」


 マルグリッドの気遣う声に、レアンドルはクッションに背を預け、苦笑を浮かべた。


「うーん、そんなに悪い相手じゃないようだよ」


 おやっと、マルグリッドは思う。

 今のところこの国で、ザミアの王弟の噂は最悪だ。

 だが、マルグリッドはレアンドルの目を信じている。


「そうなの…なら、色々な事情がおありなのでしょうね」


 ただの『女好き』の強引な男なら、迷惑だが、それだけである。

 だがそれが演出されたものであり、本人もそれを良しとしているのなら、当然裏がある。


「だろうねぇ…あの国の成り立ちでいけば、何の問題があってもおかしくないんだが」


 マルグリッドも、彼の国をおさらいするように口を開いた。


「前の王様が亡くなったのは、7年前でしたか?」

「そのくらいだね。確か50前だったから早いと言えば早い。ただザミアは早世する王が多いからね」

「戦ばっかり、だから?」

「それもあるけど、やっぱり頭に血が上りやすいんじゃないかな。あの国の王は」


 それは何となく分かる、とマルグリッド。


「そう言われれば、確かに話に聞く王弟殿下は、ザミアの王族という感じがしませんね」

「うん。物腰も柔らかで、威圧的なところがない」


 マルグリッドの脳裏に、ふと、根本的な疑問が出て来た。


「…何しにいらしたんでしょう、王弟殿は」


 今更な質問にレアンドルが顔を上げ「それは…」とつぶやいたが、何か違うことに気づく。


「…マルグリッド。君の方、姫と騎士の会見はどうだった?」

「クズ男の誘いを、姫がきっぱり断ってました!」


 少し誇らしげなマルグリッドに、レアンドルは苦笑する。


「クズか。ザミアの王弟殿下――ルカス殿は、彼の事を『騎士(モドキ)』と言ってたな」

「ぴったりですね! 今初めて、ルカス殿に好意を持ちました」


 レアンドルは、笑顔の下でイラっとした。

 こんなことでも、嫉妬心が湧く己に感心しながら、レアンドルが口を開いた。


「あぁ…で、そのルカス殿下が、姫をザミアにくれないかと…」


 王弟殿下の正式の妃にしたいらしい――と告げられ、マルグリッドは目を見開いた後、非難がましい目でレアンドルを見た。

 レアンドルは、落ち着いてという風に両手を胸の前で挙げた。


「ザミアに来ても、元騎士とは一切関わらせないと言っている」

「それは…でも」

「ちなみに、その騎士(かれ)はルカス殿が、責任をもって口を塞いでくれるそうだ」


 さらっと言われたけど、口を塞ぐ――の意味は、やはりアレよね…と、思わずマルグリッドは口を引き結んだ。

 

「ルカス殿も、彼の妄言には辟易したらしい…姫へは同情している」


 しばしの沈黙がその場に落ちて、やがてマルグリッドの暗い声が響く。


「…同情ということは、もしかして、全部知っているということ…?」

「…この国に入るまでのことは、ね」

「あのクズ騎士…」


 漏らしたであろう当事者を呪うように、マルグリッドは唇を噛んだ。


「それ以上は広がってない所を見ると、ルカス殿が薬でも盛ったのかもしれない」


 レアンドルが正確に言い当てる。

 マルグリッドにも色々思うトコロはあったが、他に広がってないことにはほっとした。


「それにしても、姫をザミアへっていうのはどういうこと?」

「持参金もそのままでいいし、隣国(アデニア)への対応も引き受けるそうだ」

「…それって、どうやって?」


 思わず訝し気な声が出た。

 持参金はともかく、エルベ(こちら)へ嫁いだ姫が、いつの間にかザミアの王弟の妃になっていたという状況に対応できる理由が、マルグリッドには思い浮かばない。


「さあねぇ、そこまでは明かしてもらえなかったよ」


 理由は思いつかないが、おそらく真面目な話なのだろう。

 マルグリッドは、ザミアの王弟について考える。


 ザミアの王弟が、アデニアの姫を娶る利点は確かにある。

 最大の物は、アデニアの王位継承権を得るということだろう。


 アデニアには姫の兄がおり、すでに王太子として王を助けている。

 だがその王太子に何かあり、子供が、強いて言えば男子が生まれていなければ、付け込む隙ができるだろう。


「コンスタンス姫のご兄弟は、王太子のお兄様だけでしたっけ?」

「いや、あまり公にしていないが、側妃との間に弟がいるはずだ」


 うーん、とマルグリッドは頭をひねる。


「あのですね…隣国の状況だと、姫の配偶者と、側妃の息子。どちらの立場が上でしょう?」


 多分、これは国によって変わるだろう。


「その辺りは、本当にその時による、としか言えないなぁ…」


 例えば平和な時なら、側妃であったとしても王の子が順当に選ばれるだろうし、戦時なら戦に有利な条件を持つ方が選ばれるだろう。


「現状でいえば、アデニアとウチは上手く行っていると思うし、アデニアとザミアも表面的には問題はない」


 マルグリッドは頷く。


「今、アデニアの王太子が倒れるとする。姫の配偶者が私なら、姫の弟が王太子になり、私には以降も協力してほしい、と念を押してくるだろう。だが姫の配偶者がザミアの王弟だとすれば、話は全く変わる」

「…王弟殿下が、王位継承権を主張すると?」

「王弟でなく、ザミアの王が、だろうけどね。ザミアが、アデニア併合を正当化できる機会を逃すはずがない」


 これは絶対だとレアンドルは言い、マルグリッドにも異論はなかった。

 戦わずに隣国を手に入れる絶好の機会――しかも、望むなら戦をしても構わないと、常に思っている国なので、本当に始末が悪い。


 もちろん、これらは、『王太子に何かがあった場合』の予想だが、下手にコンスタンス姫が王弟妃になったら、作為的にその状況を作り出されかねない。


「…どう考えても、隣国にとっては姫がウチにいた方がいいですよね」


 ため息交じりにマルグリッドがつぶやくと、レアンドルも重々しく頷いた。



…間が空いてしまい、申し訳ない(>_<) 体調崩したり、一度書いたもの消しちゃったりで、遠ざかってました。

…もうすぐ、終わりそうなんですが、まだ頭ぼーっとしてラストが見えない状態です。

…たまに様子見にいらしてくだされば幸いです<(__)>

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